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vsヴェッヒャー 10


「はあああああっっ!!」


 溢れる光の奔流が、ヴェッヒャーへと襲いかかる。

 『勇者の心得』第七のスキル、『最後の勇気』。

 彼が放てる最大最強の一撃は、ヴェッヒャーの肉体を焼き、その顔に焦りを浮かべさせた。

「ぐっ…うおおおおおおっっ!!」


 ヴェッヒャーは腕をクロスさせて、攻撃を耐えようとする。

 けれど光は止まるどころか進み続け、ヴェッヒャーの肉体が赤く爛れ始めた。

 そこにきて彼は防御を止めた。


 彼はそのまま左半身を犠牲にするような形で後ろに重心を移し……迫りきる攻撃を拳打で打開すべく、己の拳を突き出した。


「私は、まだ、こんなところでっ――!!」


 彼が最後まで言葉を言い切ることはできなかった。


 爆発とそれに伴う轟音が、研究室を震わせる。

 次いでやって来る衝撃波が、被検体の入っていたガラスの培養室の残骸を跡形もなく壊していき、魔物の死体を吹き飛ばしていく。


 地下室の研究室は、白の世界に染まる。

 『最後の勇気』による爆発が、ヴェッヒャーの肉体を包み込み――。










「はあっ、はあっ、はあっ……」


 全てを出し切ったライエンは、剣を杖のようにしてなんとか立っている状態だった。


 震える己の右手を見つめる。

 グーパーと握ろうとするが、できなかった。

 既に右手の感覚が失われているのだ。


 この感覚には覚えがある。


(――アッシュと戦った時と、同じか)


 未だこの身に過ぎた力である『勇者の心得』は、使いすぎればその副作用から肉体の方が先に限界を迎えてしまう。

 第一のスキルと第二のスキルを使いこなせるようになったものの、どうやらまだまだ道のりは長いらしい。


「けどなんとか、勝った、か……」


 目の前の、光景を見ながらそう呟くライエン。

 徐々に消えていく、砂埃。

 そこから現れた者に……ライエンは息を飲んだ。


「ぐ……」


 そこにいたのは、ヴェッヒャーだった。

 全身はボロボロで、焼け焦げて炭化している部分もあるが……間違いなく生きている。


「この……この私が、なぜこんなわけもわからぬガキに、ここまでいいようにやられなくてはいけない……」


 ずっずっと、足を引きずりながらも進んでくるヴェッヒャー。

 ライエンはその光景に、言葉を飲んだ。


 こちらをにらみつける眼光も、それだけ死に体になりながらもなおこちらに迫ってくる執念も。

 どちらも彼がこれまでの人生で、一度として見たことがないものだった。


 第四のスキル『不屈の勇気』により、既に傷は癒えている。

 けれどスキルの連続使用により苛まれた身体は、傷を癒やしただけでは機能しない。


 もうライエンは、己の身体をまともに動かすのが不可能な状態だった。

 後ろからはスゥの回復魔法が飛んできたが、それでもライエンの身体は満足に動かず……彼はとうとう体勢を崩し、仰向けに転がる。

 足を引きずったヴェッヒャーが、ライエンの下へとやって来る。


「私は魔王軍幹部――ヴェッヒャー! こんなところで止まるわけにはいかんなよだ」

「くっ……」

「まったく……手こずらせてくれたな。だがこいつの能力は以上だ……今芽を潰すことができた幸運を喜ぶべきか」

「ライエンッ!!」


 ヴェッヒャーが拳を振り上げ、トドメをさそうとする。

 そこにやってきたのは、後ろから援護に徹してきていたはずのイライザとスゥだ。

 イライザは水魔法で応戦しようとしたが、いかんせん全ての力が違いすぎる。


「――あっ、ぐはっ!?」


 彼女はワンツーの一発で沈み、吹っ飛ばされる。

 続いてスゥも、一撃で意識を刈りとられる。


「まったく……つまらん邪魔が入ったな」


 再び、ヴェッヒャーが拳を振り上げる。

 ライエンへと叩きつけるべく、ライエンにだけ意識が向いたその瞬間。


「これで……終わりだっ!」

「くっ……ふふふっ」

「何がおかしい?」


 突然笑い出したライエン。

 それを見て訝しむ様子のヴェッヒャーは、そのまま拳を振り下ろす。


「終わりなのは、君の方だ――いけ、アッシュ!」

「俺に命令――すんじゃねぇっ!」


 大気を震わせるほどの、魔力と魔力のぶつかり合い。

 ヴェッヒャーが一撃を放つタイミングに合わせ――仲間達が稼いでくれた時間を使い、アッシュは必殺の魔法を放った。


「食らいやがれ――三極覇王弾ッ!」

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