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vsヴェッヒャー 1


 やってきたのは、研究室のような場所だった。

 地面には大量の資料が散乱しており、机の上には何に使うかもわからない怪しげな液体の入ったガラス瓶が大量に置かれている。


 そして極めつけに、部屋の左右にはずらっと大量のガラスの円柱が並んでいる。

 上部には電極のようなものが取り付けてあり、下部はしっかりとした基礎部分はで固定されていて、魔力によって発光していた。

 磨りガラスで中まで見ることはできないが、その中には明らかに魔物が入っている。

 そのサイズは小人サイズから巨人サイズまで様々。

 これがヴェッヒャーの武器になることを、アッシュは既に知っていた。


 『白衣の死神』ヴェッヒャーの見た目は、冴えない研究職の男のようだった。

 その顔は青白く、目が悪いのか四角く縁取られた眼鏡を装着しており、黒い下着の上に白衣を着ている。

 ねじくれた角は山羊のように突き出ていて、その瞳には狂気が宿っていた。


 ヴェッヒャーを見たアッシュ達即席パーティーの反応は、二つに分かれた。


「な、なんだ、あいつ……」

「も、ものすごい邪悪なオーラが……」


 イライザとスゥは、その圧倒的な気配に明らかにビビっていた。

 ある程度実力のある魔導師は、相手の魔導師の実力というやつを朧気ながらに察知することができる。

 けれど彼女達には……それができなかった。

 つまり目の前の魔物は、今の自分達では力量を把握することもできないほどに格上の相手ということだ。

 二人は無意識のうちに後ろに下がっていた。


「さっきの言葉、忘れたとは言わせないぞ……」

「アッシュ、君は一体、どこまで……?」


 ライエンはちらとアッシュを見て、そして目の前にいるヴェッヒャーを見つめる。

 だが今はそんな場合ではないと思ったのか、


「――ああ、翻意はしない。やってやるとも」


 二人は一歩前に出る。

 そしてそのまま――剣を抜き放ち、構えた。


「ほうほう、実力差に気付かず哀れに挑んでくるか。安心するといい。君達は僕のコレクションの餌にしてあげよう」


 それだけ言うとヴェッヒャーは、パチリと指を鳴らす。

 そしてそれが――戦闘開始の合図となった。



 バキバキバキッ!


 周囲に張り巡らされるように展開されたガラスのうちの一つが弾ける。


「さあ――手術オペを始めよう」


 ヴェッヒャーの素の能力は、さほど高くはない。

 彼は己や己の使役する魔物、更には相手に、手術と呼ばれる特殊な魔法を用いることを基本戦術としている。

 味方の支援から敵へのデバフ等も合わせ、総合力で戦うタイプの魔物だ。


「行けッ! 実験体112号!」


 ヴェッヒャーが出してきたのは、Cランク魔物のサイクロプスだった。

 その全長は優に人間二人分はあり、顔には大きな一つ目がついている。


 気が付けばヴェッヒャーの両手には、光のメスが握られている。

 彼はそれを――投擲。

 それはサイクロプスの両腕に刺さる。

 すると腕が、みるみるうちに膨れ上がっていく。


「さあ、まずは小手調べ。最初は強化を施されたサイクロプスだ」


 一つ目の巨人を見上げるアッシュ達の顔に、しかし不安の色はない。


「合わせろ、ライエン」

「――っ!? ようやく名前を、呼んでくれたねっ!」

「そんなこと言ってる場合じゃ――ないだろう、がっ!」


 アッシュは右から、ライエンは左から。

 サイクロプスは迫ってくる二人に対応。


 大きく下がってから、持っている棍棒を使って二人纏めて薙ぎ払おうと大振りの一撃を放つ。


 まずはアッシュが、次いでライエンが――サイクロプスの腕へ剣を振るった。

 アッシュの一撃は利き手である右腕を半ばから断ち切り。

 ライエンの一撃は左手に大きな裂傷を作る。


「――やるね」

「まだまだだろ」

「なっ!?」


 一瞬でサイクロプスを倒してみせた二人の手際に、ヴェッヒャーが明らかに狼狽する。

 アッシュはその隙を見逃さなかった。


「魔法の連弾、五十連」


 ドドドドドドドドドドッッ!!


 アッシュは左右に広がるガラスの円柱を片っ端から割っていく。

 中からは大量の魔物が溢れ出してくる。


 呆気にとられた様子のヴェッヒャーを見て、アッシュは笑う。

 そして隣にいるライエンへ視線を向け、


「俺が雑魚の相手をしておく。あいつは、お前がやれ」

「――わかった!」


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