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帝国


「なるほど、帝国の人間か……」


 アッシュが慣れない尋問に手を染めて根掘り葉掘り聞いてみた結果、相手は帝国の人間であることがわかった。


 帝国――ルバイト帝国とは、ユグド王国の隣にいる国である。

 元々は小国家の連合軍だったところを、ルバイト帝国初代皇帝がざざっと飲み込んでしまい、王国と国力を伍するだけの力を手に入れた新興の大国だ。


「m9だと帝国のユニットは、普通に友軍扱いだったんだけどな……」


 他国であるため、基本的にm9の主人公であるライエンが帝国へ入ることはない。

 物語の終盤である魔王城襲撃イベントの際に魔物を引き受けてもらったり、友軍ユニットとして何人かの強力な魔法使い達を派遣してもらえるくらいの知識しかない。


 魔物の被害から民を守るため、両国は手を取り合っているものだとばかり思っていたが……どうやら水面下では、お互い色々ときな臭い動きをしているようだった。


 アッシュが倒したあの暗殺者は、基本的には王国の優秀な人材の抹消、もしくは将来有望そうな人間の誘拐を命じられていたらしい。

 地上にも連絡員や彼の息の掛かった商人などがいるらしく、やっていた悪行は巧妙に隠蔽されていた。


 ミミのようなランダムで遭遇するキャラは、稀にどれだけ探しても出会えないという事案が発生することがあった。

 もしかするとそういったイレギュラーの原因は、襲撃者達のように帝国の息の掛かった者達の仕業だったのかもしれない。


「だがまあ、なんにせよこれでギルマスが探してた冒険者失踪の原因は掴んだ。こいつの話によれば誘拐された人間も何人かいたらしいし……今から急げば、まだ助けられるかもしれないぞ」

「にゃっ! ミミの『キャットファイト』が火を噴くにゃ!」

(……そう言えば俺の魔法の習熟に時間をかけすぎたせいで、ミミの育成を完全に忘れてた。とりあえず依頼を終わらせてから、レベリングを手伝うことにしよう……)


 自由気ままにダンジョン内をふらふらと移動するミミに、苦心しながらレベル上げをさせるのは、正直しんどい。

 けれどこうしてキャラ達の失踪の原因の一端を知ってしまった身としては、ミミをなんとしても育て上げなければならないだろう。

 アッシュは楽しそうに歩くミミの後ろ姿を見ながら、そんな風に思うのだった……。





 結果的に言えば、ミミの『キャットファイト』は火を噴いた。


 地上に上がってから行ったギルドマスターへの報告、そしてそこから騎士団と協力しながら行われることになった、大々的な帝国の息の掛かった者達の掃討作戦。

 結果として、まったく想定もしていなかったことに、アッシュの名が王国の武人達の密かに噂されるようになっていく。


 ただ未だシルキィとナターシャが魔王軍幹部、シリウス・ブラックウィングの共同討伐について口を噤んでいることで、未だアッシュの名は知る人ぞ知るマイナーなもののままで、なんとか収まるだった――。





 そして魔法の習熟に更に努めて新技を開発したり、ミミを育てたり、とうとう遠慮なく本気を出してくるようになってくるシルキィを相手に割と本気の模擬戦を繰り返したりしているうちに、ユークトヴァニア魔法学院での生活も一年に差し掛かろうとしていた。

 そして時は流れ、アッシュが何よりも待ち望んでおり、同時にひどく恐れてもいるあれがやってくる。


 校長の朝礼により、一つの情報が生徒達に伝えられた。


「ダンジョン探索を始める時がやってきました。生徒の皆さんは、将来のために今のうちから、魔物との戦いに備えますように」


 それは学院を挙げての、ダンジョン探索の許可。


 つまりアッシュが『始まりの洞窟』で己の死の運命と訣別するタイミングが、とうとうやって来たのである――。

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