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 当たり前だが水の中にただ魔法の弾丸を撃ち込んだだけでは、水の抵抗に負けて大して進むことなく推進力を失ってしまう。


 けれどそれはあくまで普通ならという話。

 既にレベルも五十に近付き圧倒的な知力を持つに至ったアッシュの魔法の弾丸は、容易く水を切り裂き、勢いを衰えさせることなく進んでいく。


 水の中にいた魚型の魔物のリーガルフィッシュの肉体を貫通し、そのまま通り抜けていく。

 水中をのぞき見ているアッシュには、その様子がよく見えた。


「さ、魚がーーっ!!」


 魚が臓物を撒き散らしながら水の底に沈んでいくのを見たミミがあわあわしている。

 彼女の視線の先では、死んだ魚が別の魚達の餌になっている食物連鎖のリアルが展開されていた。

 取り乱しているミミを側で見ていたアッシュは、たしかにただ倒すだけだと魚は食べられないな、と冷静だった。


「火魔法の連弾、二連」


 とりあえず今度は、火魔法の連弾のうちの一発目を魔物に、そして二発目を魔物の下に放った。


 一発目の火魔法の弾丸が着弾し、爆発。

 それに誘爆される形で、二発目の魔法の弾丸も爆発する。


 このように少しだけ位置をずらして連続誘爆を狙うのも、アッシュが開発した技法の一つである。

 これであれば相手に着弾しないと起こらない火魔法の弾丸による爆発を、相手に当てずとも起こすことができるようになる。


 既に魔法の弾丸でも威力が過剰だったのだ。

 一発目の火魔法の弾丸は着弾し、リーガルフィッシュの身体を爆発させた。

 だが今回の狙いは二発目の火魔法の弾丸だ。

 身体全ては無理であっても、この爆発力を利用すればリーガルフィッシュを陸に打ち上げることができるのではないかと考えたのだ。


 だがやはりそんな簡単に上手くはいかなかった。

 二発目の火魔法の弾丸は既に爆発した肉体を、千々に弾き飛ばすだけだった。


 ぺたん……と悲しい音をさせながら打ち上げられたのは、わずかに肉のついている鱗一枚だけだった。


「……」

「……にゃああああああああっっ!」


 慟哭しながら涙を流すミミを見て落ち着きを取り戻しながら、アッシュは初めてする経験に少しだけ心躍っていた。


 強力な魔物と戦うことや巻物を集めることに時間を割いているせいで、実は今のアッシュに自由な時間はほとんどない。


 怠惰を装っていてもかなり忙しい彼は、こういった遊べる場では全力で遊ぼうと心に決めているのだ。


(倒すまでは良くても、引き上げるのは簡単じゃない……それならとりあえず、魔物を陸に運ぶことを意識すればいいか?)


 多分だが、水魔法を使って水流を操作して魚達を打ち上げれば、魚を獲ること自体はできるだろう。


 だがそれは最後の手段にしたかった。

 アッシュが求めているのは創意工夫により魚をゲットする釣り的な楽しさであって、根こそぎいただくトロール漁的な結果は最初から求めていないのだ。


「そうだな、折角なら……遅延ディレイの魔法を使ってみるか?」

「遅延……?」


 魔法の弾丸を使うのなら、遅延も使えるようになっておいた方がいい。

 以前幼少期にシルキィから受けたアドバイスを今になって思い出す。


 一応遅延自体は、巻物獲得のためにいくつかのダンジョンを潜っているうちに、使用可能になってはいるのだ。

 けれど今のアッシュは、この魔法を手に入れずに戦っていた期間が長いせいで、使わずともなんとかできるようになってしまっていた。


 遅延は簡単に言えば、魔法を発動させたあとに滞空させることができたり、速度を遅めたりすることができるようになる魔法である。


 ――アッシュは今のところ、この魔法をほとんど使っていない。

 魔法の弾丸に精通することで、こと魔法の弾丸に関しては既に遅延と似たようなことができるようになっているためだ。


 魔法の弾丸を曲射で発射することで弾着のタイミングを遅らせたり。

 発射時の軌道をズラすことで複数の弾丸を同時に着弾させることもできるようになっている。


 そもそも魔法を滞空させる意味もあまりなく、ぶっちゃけあんまり使い道がないなぁと思っていた。

 だがシルキィが言っていたことなのだから、遅延の魔法が自分に合っているのは間違いないのだろう。


 であれば今一度この魔法についてしっかりと理解し、使い道を考えた方がいいかもしれない。


「魔法の連弾、五連、遅延」


 アッシュが出した魔法の弾丸が、彼の頭上のあたりに出現する。

 いつもなら出現と同時に発射されるのだが、遅延をかけているために今回は滞空したままになっている。


 遅延できる時間は、使用するMPによって変動する。

 今回は五秒に設定したので、使用MPは1で済んだ。


「魔法の連弾、五連」


 更に魔法の連弾を発動させる。

 そして同時に放つ。


 合わせて十発の弾丸が飛んでいく。

 だが先ほど放ったものと比べるといささか精度に欠けており、半分の五発は見当違いの方向に進んでいた。


 今回は水面に並行するように打ったので、弾丸はかなり奥の方まで進んでから、ぽちゃりと地面に潜っていく。


「ううむ、やっぱりこれ、使い道がわからないぞ……」


 わざわざ遅延を使わずとも、魔法の連弾を十連で放てばいいだけのことだ。

 遅延を使う分、余計にMPを使っているようにしか思えない。


 そして遅延にはもう一つ欠点がある。

 ――遅延を発動させた段階で、魔法の描く軌道を決めておかなければいけないのだ。

 先ほど魔法の連弾の最初の五発と後ろの五発で向かう方向がズレたのはそのためである。


 やはり無駄な魔法な気しかしない。

 アッシュの頭では利用方法を思いつくのにも限度がある。

 というわけで同行者のミミにも話を聞いてみることにした。


「なぁミミ、この魔法ってどうやって使えば強く使えると思う?」

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