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ノームの洞穴


 戻ったアッシュを出迎えたのは、ジロリと男のことを睨んでいるミミと、彼女のことをバカにした様子の男冒険者だった。


 ミミはガルル……と唸っており、一触即発で今にも戦いが始まってしまいそうな勢いだった。


「おいおいどうしたんだよ、ミミ」

「こいつがミミのことをバカにしたにゃ!」


 ビシッと指さす先には、腕を組んでふんぞり返っている男冒険者の姿があった。

 体格はがっしりとしていて、いかにも荒事に向いていそうな雰囲気だ。

 どうやら彼はリンゴルというらしい。

 ギルドに女子供はいらねぇといういわゆるよくあるステレオタイプな冒険者らしかった。


「ガキはママのおっぱいでもしゃぶってな! ギャハハハッ!」

「むむ……戦えばミミの方が強いのに、こいつ偉そうに……」

「なんだと、やるってのか!?」


 ここで戦い出しそうな二人を見て、アッシュははぁとため息を吐く。

 そして――一瞬でリンゴルの背後に移動し、その腕を押さえつける。

 そして空いている手で首筋へ剣を突きつけた。


「な、速っ――!?」

「ギルド内での騒動は御法度だ。ミミの言動が気に障ったのなら謝るから、これ以上騒ぎを広げないでくれないか?」

「わ、わかった……」


 よし、とアッシュはすぐにリンゴルから離れ踵を返す。

 拘束から解放されたリンゴルが、腕をぷらぷらと揺らす。

 アッシュに握られた部分だけが、紅葉のように真っ赤に変色していた。


「なんだよ、あいつ……」

「Cランク冒険者のリンゴルをああもあっさりと……」


 気付けば周囲の視線がアッシュに向いていた。

 どうやらあのリンゴルは、このギルドの中ではそこそこ腕の立つ人間だったらしい。


(同じランクの冒険者とやり合うのは初めてだったが……まったく問題なさそうだな)


 アッシュは基本的に一人で依頼をこなすだけで、同業者の関わりらしい関わりはほとんどない。

 なので腕試しがてら軽く一当てしてみたのだが……どうやらCランク冒険者程度なら、今のアッシュでも軽くあしらえるようだ。

 今まではレベル上げに夢中になるばかりで、相手の魔物が冒険者ギルドでどのようなランク付けがされているかまでは考えていなかった。


 冷静に考えてみれば、アッシュはAランクの魔物も普通に倒している。

 ということは少なくとも今の自分は、Aランク相当の実力はあると考えて良さそうだ。


 既に色々とやらかし、もう取り返しがつかない今となっては、目立つことにさしたる抵抗もない。

 アッシュは皆から向けられる視線はさらりと受け流し、さっさと目的地へと向かうと気持ちを切り替えることにした。


「ミミ、行くぞ。依頼をもらってきた」

「行くにゃ!」

「一応水棲の魔物も出るところだぞ」

「お魚にゃーーーーーーっ!!!!!」


 元気よく飛び出していくミミと、苦笑しながら歩き出すアッシュ。

 その二人を見つめる冒険者達は、ぽかんと口を開けて呆けていたのだった――。



「ここが『ノームの洞穴』か……」


 『ノームの洞穴』は、洞穴型のダンジョンだ。

 といってもダンジョンという不思議空間の中で、進んで行くにつれ洞窟や洞穴的な構造だけではなく、草原エリアや火山エリアなども存在する。


 だがそれらのエリアは早々に抜けていき、アッシュ達は第七階層へと辿り着くことができた。


「魚にゃああああああああっっ!」


 ミミが狂喜乱舞しているその先に拡がっているのは、どこまで続いているのかわからないほどに広い湖だった。

 その水面を覗いてみれば、下には水棲の魔物達が回遊している。


『ノームの洞穴』の第七階層にある湖岸エリア。わざわざ経由せずとも先に進めるためにただの行き止まりでしかないのだが、魚が食べたい魚が食べたいと狂ったように連呼するミミに根負けし、アッシュが連れてきたのである。


(それに気ままなミミは、定期的に飴をやらないとレベル上げ自体やろうとしないだろう。とりあえず魚で釣ってレベル上げ、っていうのも悪くないだろう)


 そう言えば水棲の魔物と戦うのは初めてだな……と思いつつ、アッシュはとりあえず湖に魔法を打ち込んでみることにした。


「魔法の連弾、三十連」

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