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ギルマス


「さて、それじゃあどこから行くかねぇ……」

「ミミもお供するにゃ!」


 次の日、とりあえずしばらくはついてくるつもりらしいミミと合流してから、冒険者ギルドへとやって来たアッシュ。

 二人は冒険者ギルドの依頼受け付けにある依頼を眺めていた。


「こ、ここなんかオススメにゃ!」

「うんうん、考えとくから」


 ミミはとりあえず海や湖の近くであったり、水棲モンスターが生息する地帯の魔物ばかりを見せてきた。

 多分だが、魚が食べたいのだろう。


 ミミの物欲しそうな顔は無視し、適当に受け流しながら、情報収集がてら依頼を見ていく。 本当なら依頼は完全に無視して巻物探しを進めてもいいのだがミミのレベルアップのことも考えておきたい。


 ついでに言うのなら、何かイレギュラーが起こった場合についても考える必要がある。

 ランダムイベントがいくつも起こるm9の世界では、些細な兆候であっても見逃すわけにはいかないからだ。


 目を皿のようにしてジイッと観察しながら、脳内の記憶と依頼を照合していくアッシュ。

 そんな彼に――突如として、殺気が飛んでくる。


「――誰だっ!?」


 叫びながら、思わず後ずさる。

 そして既に頭の上に魔法の弾丸を滞空させ、発射態勢にしながら防御姿勢を取る。


 そんなアッシュの後ろに立っていたのは――にこりともせずに無表情を貫く、一人の受付嬢だった。


「アッシュ様、ギルドマスターがあなたのことをお呼びです。話があるとのことですので、二階までお越し下さい」





 アッシュは言われるがまま、執務室へとやってきた。

 ちなみにミミは下に置いてきている。

 彼女は不服そうだったが、既に持っていた干し魚をあげたらすぐに機嫌が治った。


 単純だなぁと思いながら微笑ましい気持ちになって歩いていくと、辿り着いた先には一人の壮年の女性の姿があった。


「私はエレオノーラ、今はこのガースラーの街でギルドマスターをさせてもらっているわ」


 ガースラーの街は比較的王都に近く、馬車で一週間もすれば通える距離に存在している。 街としての重要度もそこそこ高く、規模も王国で見れば上から数えた方が速いほどには栄えた街だ。


「あなたがリンドバーグ閣下の秘蔵っ子ね」

「……秘蔵っ子?」


 どうやらアッシュは、気付けば完全にリンドバーグ辺境伯の手駒的な立ち位置にいる……ということらしい。


 たしかに特別な任務を言い渡されているわけでもないし、リンドバーグ辺境伯の名を利用して割と好きなように動いていたりもするのだが、それはそれ。

 自分が他人からどんな風に思われているのかを気にしなさすぎたかもしれない。


(なんだか外堀を埋められているようでちょっと怖くなってきたけど……今更学院外での活動を止めるわけにもいかないしな。ミミも拾っちまったことだし)


 ミミの戦力アップ、そして彼女を味方につけておくことは、今後のことを考えれば結構なプラスにはなるはず。

 となれば下手に否定をして、活動に支障が出てもよくないだろう。


「まあそれはいいです。で、自分がギルマスに呼ばれた理由を教えてほしいのですが?」

「実は一つ、受けてほしい依頼があるのよ」

「聞きましょう」


 ギルドマスター直々に頼まれる依頼となれば、無碍に断るわけにもいかない。

 彼女が口にしたのは、とある洞窟の調査依頼だった。


「ノームの洞穴で妙なことがあってね……調査隊として派遣した冒険者達がそのまま帰ってこないのよ。異変が起こっているのは間違いないけど、下手に冒険者を出して被害が大きくなるのも嫌だし……」


 気になったので詳しい話を聞いてみると、どうやら既にCランクの冒険者パーティーが二つほど消息を絶ってしまっているらしい。


 ダンジョンに異変が起きる理由はいくつかある。

 強力な魔物が突如として出現することもあるし、ダンジョンが造り替えられることで中にいる魔物達が強化されてしまうば場合もある。

 そして大穴で、内側に国を追われた強力な犯罪者が居着いているといった可能性も考えられる。


 ただなんにせよ、強力な敵との戦いになるのは間違いない。

 ちょうどミミのレベルアップを手伝うために、強い相手を求めていたところだ。


「いいですよ、その代わり報酬は弾んでくださいね」

「それは……お手柔らかに頼むわね」


 どうせなら立場を最大限利用してやろうと、リンドバーグ辺境伯の威光をちらつかせながら交渉をしたおかげで、望外にも思えるほどの報酬を約束してもらうことができた。


 ホクホク顔で階段を降り、戻っていくアッシュに、声が届く。


「何するにゃっ! ミミのことをバカにするのも、大概にしてほしいのにゃ!」

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