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 そこは『翡翠の迷宮』という、王国北部に位置するダンジョンだ。

 その最下層である第十四階層……の一つまえの第十三階層。

 アッシュはそこにいるボスを倒した後に続く階段の道中で、謎の動きをしていた。


「ええっと、こっちに、こっち、ここでステップ……」


 右側の壁に触れたかと思えば、左側の壁に触れる。

 ジャンプして天井を殴れば、次に段差でステップを踏んで踊り出す。


 ダンジョンで精神を磨り減らして頭がおかしくなってしまった……わけではない。


 彼が全ての動作を終えると、ゴゴゴゴゴという低い音が地響きと共に鳴る。

 そして新たな、魔力で作られた透明な階段が生まれた。


 トントンッと軽快に階段を上っていけば、その先にあるのは――アッシュお目当ての巻物スクロールだった。


「これで四つ目の巻物……っと」


 アッシュはグッと留め金を外し、端を掴んでグイッと広げる。

 すると中身が見え、脳内にこの巻物に関する情報が流れ込んできた。


 最初は頭が割れるように痛かったが、流石に四回目にもなれば慣れてくる。

 『王家の墓』で『偽装』を手に入れた時と比べればかわいいもんだと、アッシュは新たに手に入れた力を確かめることにした。


 アッシュがサシサエ雲海をクリアしてから、更に二ヶ月ほどの月日が経っている。

 あの日以降、一度やってやり方を習得したアッシュは、積極的に巻物を手に入れるために行動を起こすことにした。


 この世界にはブライという、ひたすら巻物を手に入れて汎用スキルを覚えまくるキャラがいる。

 彼に取られてしまう前に、戦いに必要なものはある程度揃えておく必要がある。


 アッシュが急ぎ汎用スキルを手に入れた結果、今の彼が持つスキルは


『偽装』『与ダメージ比例MP回復』『身体強化』『知力強化』


 の四つとなった。

 『与ダメージ比例MP』回復は、そのままダメージを与えればその量に応じてMPを回復することができるスキルだ。

 なおこのスキルは魔法攻撃以外でもMP回復を可能とするため、これで既に終盤までの回復魔法をコンプリートしているアッシュは、自分の精神力が保つ限りはいくらでも戦い続けることができるようになった。


 そして『身体強化』と『知力強化』はそのまま、見えないパラメータである各種能力値に固定で数値を加算してくれるスキルである。

 『身体強化』を覚えたことで、アッシュの動きは見違えてよくなった。

 ナターシャにもすぐに指摘されるほどの変わり様だ。


 『知力強化』の恩恵は未だそこまで感じてはいないが、魔法の威力の底上げと思えば決して悪くはないだろう。


 現状のアッシュが使えるようになった魔法は、既に膨大な量に上っている。


 フレイムアローにファイアアローと似たような魔法も数が多いため、アッシュ自身ですらどれがどれなのかよくわからなくなりつつある。


 とりあえず経験値稼ぎに行ける場所には行っておこう、ついでに覚えられる魔法は覚えておこうと頑張った結果がこれである。


 最近ようやく気付いたのだが、どうやらアッシュはほぼ全属性の全魔法に適性を持つことがわかった。


 そしてアッシュのレベルアップに伴う各数値の上昇率はかなり高い。

 それを実感できるようになったのは、つい最近になってからのことだった。 


 というのもアッシュはレベルを46まで上げてようやく、師匠達と同程度の能力を手に入れて、ある程度戦えるようになってきたのである。


 シルキィと魔法の打ち合いがある程度できるようになったり、ナターシャ相手にある程度剣戟を行うことができるようになったり……ようやく師匠達の背中が見え始めたのだ。


 恐らくは彼女達も、ある程度レベルが上がりきってしまったということなのだろう。

 レベルアップが鈍化してしまえば、後は個々人の技量を磨くことが肝要になってくる。


 もっともアッシュは、そちらは未だ師匠達に遠く及ばない。


 なのでアッシュは、正攻法を止めた。

 まずは汎用スキルを獲得しまくって戦闘能力を底上げする。


 まずアッシュが追い越そうとしているのはシルキィだった。

 魔法は自分が生まれてからずっと親しんできた技術であり、剣と比べれば技量の差を他の領域で誤魔化せる部分も多いからだ。


 巻物を集めたら、『風精霊の導き』を持つシルキィの風魔法に対抗できるために新技の開発だ。

 いずれは彼女の風精霊召喚を上回る魔法を作ってみせるぞ、とアッシュのやる気は十分だった。


「さてと、それじゃあ五個目の巻物を手に入れにこのまま――」

「きゃあああああっっ!」


 悲鳴が聞こえてきたのは、上側の第十三階層の方からだった。

 どうやらボスに手こずった冒険者が悲鳴をあげているらしい。


 どうせ戻る時には、また相手をしなければならないのだ。

 それなら助けてあげるべきと思い、アッシュは下がってきた階段を、今度は上っていくのだった――。

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