vsシリウス 3
m9において、ボスキャラであるシリウス・ブラックウィングには、ドラクエにおけるデスピサ○のような形態変化は存在しない。
だがシリウスはある程度のダメージを与えられた段階から、行動ルーチンが変更されるようになる。
そのようなパターンの変化が起こったかを示すのは、激昂しつり上がった目。
そして怒りから片言になったシリウスの言葉である。
こうして怒って本気を出すようになったシリウスは、いったい今までと比べると何が変わるか。
その変化は大きく分けると二つ。
まず一つ目は、魔法の多重発動が可能になることで今まであった弱点が大きく減じられること。
そして二つ目は――。
「出でよっ、我が軍勢達!」
ゲートを使い空間を繋げることで可能となる荒技――異なる場所からのモンスターの召喚である。
魔物の知能は基本的にはそれほど高くはないが、自分達の上位者の言うことは聞くという生物的な特徴を持っている。
魔王を頂点としている魔物達は、魔王軍幹部であるシリウスの命令には従うのである。
シリウスの最大の攻撃手段は、この魔物達を用いた物量攻撃。
他の生息地帯から引っ張ってきた魔物達を大量に呼び寄せることによる物量作戦だ。
あまりにも単純で、それ故に突破が困難である。
シリウスが生み出したゲートの数は合わせて四つ。
彼はそのうちの一つをナターシャに、もう一つをアッシュに、そして最後の一つをシルキィの脇につけるような形で使う。
ちなみに最後の一つは、シリウス自身が相手の攻撃から身を守るためのゲートだ。
ゲートの中から、魔物達が飛び出してくる。
ここにきて、後方支援に徹していたアッシュとシルキィも、そう安穏とすることができなくなってくる。
「ちぃっ、魔法の連弾!」
アッシュに襲いかかるように、風属性を持つ魔物達がゲートから飛び出してくる。
恐らくはアリエラ山脈あたりと道を繋げているのだろう、その推奨レベルはメレメレ火山より少し高いくらいのため、今のアッシュにとってさほどの難敵ではない。
(これじゃあナターシャさんに回復を飛ばせないぞ!)
だが何より数が多い。
そしてゲートから飛び出してくる魔物達は常にアッシュを包囲するような形で展開し続けるため、とにかく視界が魔物で埋まってしまう。
もちろんナターシャの方にも魔物は向かっているため、中衛であるアッシュは二重の魔物の壁によって視界を塞がれてしまい、シリウスとナターシャを完全に見失ってしまっていた。
「火魔法の弾丸! 火魔法の弾丸! ――ええいっ、火魔法の連弾!」
魔法の弾丸では一撃で相手を沈められるほどの威力がない。
けれど火魔法の弾丸を打ち続けるだけだと、手数が足りない。
そのためアッシュは土壇場で、ぶっつけ本番で新たな魔法――火魔法の連弾を作ることに成功する。
一度に五発の火魔法の弾丸を撃てるようになることで、火力不足が大いに解消される。
そのためアッシュの周囲から、魔物の影が徐々に減り始める。
――だからこそアッシュは、寸前で気付くことができた。
「――っ!? ちいっ!」
アッシュが剣を振り上げると、そこにはシリウスの爪撃が。
視界がクリアになっていたおかげで、攻撃がやってくる直前ではあったが、しっかりとシリウスの姿を確認することができたため、ギリギリで迎撃が間に合った。
けれど鋼鉄の剣を咄嗟に上げただけでは、シリウスの攻撃の勢いを完全に殺すことはできない。
そしてシリウスは、回復魔法を使う隙を与えぬために連撃を開始する。
「このパーティーの要は回復役の貴様ヨ! まずはお前を潰してヤル!」
こうしてアッシュは、たった一人でシリウスと挑まなければならなくなってしまったのだった――。
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