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成長


 この水鏡の塔の攻略難易度はかなり高い。

 現在Cランク冒険者として活動しているアッシュが苦労していることからも察せるように、冒険者ギルドで推奨されているランクはB以上だ。


 だがこれはアッシュにとってかなりの幸運だった。

 このm9の世界においては、パワーレベリングは二つの意味で効果を発揮する。


 まず一つ目は本来の意味の、レベルアップに伴う各種能力値の上昇。

 そして二つ目は――。






「ネビュラタイフーン!」



 魔物を討伐することによって手に入れることのできる、魔法の習得である。


 アッシュが手を向けて意識を集中させることで、風の上級魔法であるネビュラタイフーンが発動する。

 これは彼が今まで欲しくとも手に入れることのできなかった、上級魔法だった。


 自分のランクと距離の関係上行くことのできなかった、上級魔法を使う魔物の出没するエリア。

 そこへやって来ることができたことで、アッシュはとうとう初級・中級と極大魔法の間を埋めるための、上級魔法を習得することができるようになった。


 人には魔法の適性がある。


 大きく分ければ、火・土・水・風の四元素魔法のどれが得意で、どれが苦手か。

 そして更に細かく見ていけば、各属性の魔法の中でもどれが得意で、どれが苦手なのか。


 その一つの指標となるのが、魔物の討伐である。

 魔物を倒すことで、その魔物が使うことのできる魔法のうち、本人に強い素養のあるものを覚えることができる。


 アッシュには全属性魔法の才能がある。

 そして更に、彼はあらゆる属性のあらゆる魔法に対して適性を持っている。


 つまり、こういうわけだ……アッシュという存在は、強力な魔物達と戦えば戦うほど、強くなっていくのである――。



 上級魔法と一口に言っても、対個人用から全体攻撃までその幅は実に広い。


 ネビュラタイフーンは対複数の魔物へと使うための上級魔法である。

 確実にダメージを与えることができるのは、発動した場所の近辺にいる魔物のみで、多くても三匹が限度だった。


 アッシュが放ったネビュラタイフーンがギノリザードマン一匹に直撃し、その周囲にいた二匹のギノリザードマンにもダメージを与える。


 二匹のギノリザードマンのうちの一匹はアッシュの方へと駆けてくる。

 そしてもう一匹は、アッシュの相手を仲間がしているうちに、魔法を食らっている同胞に回復魔法をかけるつもりだった。


 その三匹で連携して戦ってくる様子を見ても、アッシュの顔色は変わらない。

 何故ならこれは既に何度も乗り越えてきた、見慣れた光景だったからだ。


 アッシュは後ろの方で腕を組みながら観戦している師匠二人に背を向けて駆ける。


 まず狙うのは、後ろで回復魔法を使おうとしている個体だ。


「魔法の連弾」


 アッシュが放った弾丸は、吸い込まれるようにギノリザードマンへと飛んでいく。

 レベルが上がり向上した知力は、最初の頃とは違いギノリザードマンの内側へ、しっかりと衝撃を残す。


 ギノリザードマンの精神集中が途切れ、回復魔法の発動が失敗に終わる。


 その様子を見届けた時、眼前には槍を構えるギノリザードマンの姿が見えている。


 アッシュは剣を構えながら、即座に魔法を発動させる。


業の炎(フレイム・カルマ)


 使うのは対単体ようの火属性中級魔法。

 戦いながら、周囲に注意を向けた状態での魔法行使。

 それができるようになるほど、今のアッシュには余裕が生まれているのだ。


 既に水鏡の塔での連戦のおかげで、アッシュのレベルは4ほど上がっている。

 そのレベル差が、これほどまでに優位に立てるようになった理由だった。


 ギノリザードマンは炎に構わず突進してくる。

 アッシュは炎がその顔に纏わり付き、視線が切れる瞬間を狙って斜め前へ進んだ。


 そのまま、交差しながら一閃。


 アッシュが駆けてから、先ほどまで彼がいたところへ、血が飛沫になって飛んでいく。


 回復魔法が使えず大きな怪我を負っているリザードマンの方を狙う。


「魔法の連弾」


 できた創傷を広げるように、患部に的確に魔法の弾丸を着弾させていく。


 呻き声を上げるギノリザードマンへ向かう。

 力任せにでたらめに振り回された槍など怖くはない。


 アッシュは冷静に懐に入り、剣でその喉元を突く。


 地面に倒れたギノリザードマンが視界の妨げにならぬよう、大きくバックステップで距離を取る。

 すると着地の無防備になるタイミングを狙い、最後の一匹が攻撃を仕掛けてきた。


 しかしアッシュからすればその攻撃も織り込み済みだ。

 ギノリザードマンならそのタイミングを狙ってくるだろうということはわかっていた。


 彼は剣の腹で槍の一撃を逸らし、肉薄する。

 剣の間合いとなれば、取り回しの悪い槍の向こうの方が分が悪くなる。


 最後の一匹が倒れるまでに、時間はかからなかった。


 ズズゥンと音を立てて倒れるギノリザードマンにトドメを刺してから、後ろを振り返る。


 ナターシャもシルキィも、満足そうな顔をして頷いていた。


 アッシュは久々に、自分が強くなっていく感覚を味わっていた。


 彼は貪欲に強さを求めながら、水鏡の塔の探索を進めていく――。


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