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8話 幻想の歓迎会。

「だぁかぁらぁ!そんな記憶無いって言ってんでしょ!」



「ちょ…れ、霊夢。飲み過ぎだって…!」



 あれから少しして、大量の食材とお酒を買って戻ってきた霊夢と霊華さん。


 開口一番『折角だから飲むわよ』。幸いにも料理は出来たので、霊夢と一緒にご飯を作り、飲み会が始まった。紫さんは残念ながら帰ってしまったけど。


 僕の歓迎会って名目らしいけど、多分霊華さんが飲みたいだけ…な気がする。


 それなのに今一番盛り上がっているのが霊夢。まぁ楽しいからいいけど。



「おいおい霊夢!随分都合のいい記憶してるじゃないか!私はしっかり覚えてるぜ、霊夢が幽香師匠の事を『お姉ちゃん』って呼んでた事をな!」



「魔理沙…あんたまでデマを流そうっての…?ちょっと幽透、ニヤニヤしてんじゃないわよ!」



 霊夢の友達、だぜ口調の霧雨魔理沙。よく神社に遊びに来ているらしく、今日もたまたま来たら飲み会が始まってたから飛び入り参加ってやつだ。


 ちなみに魔理沙もかなりの美少女。金髪で白のシャツに黒いスカート、魔女みたいな帽子を被って箒で飛ぶ。


 美少女魔女か。意味わからんジャンルだ。まぁ霊夢の友達なだけあって魔理沙も優しく、いい子だ。


 昔からの仲らしく、霊夢が小さかった頃、幽香さんのことをお姉ちゃんと呼んでいた事で盛り上がっている。



「別にいいじゃんか。昔の事でしょ?可愛らしくていいと思うけど…ね、幽香さん。」



「今だってお姉ちゃんって呼んでもいいのよ?あの頃の霊夢はすぐに抱っこをせびってきて本当に可愛かったわ…」



 小さい頃からさぞ可愛かっただろうし、そんな子からお姉ちゃんって呼ばれて抱っこなんて…捗りますな。



「うっさいわ!その昔の事が掘り起こされて今問題になってんでしょ!お母さんも何か言ってよ!」



「…大きく、立派に育ってくれて私は嬉しいわ。」



「違ぁぁああう!そうじゃないってばお母さん!」



 霊夢もだけど、霊華さんも相当酔っている。僕は料理を作ったりしてたからそんなに飲んでないけど、いつの間にか出来上がっていた。


 途中参加の魔理沙もそこまで飲んでいない。ほろ酔いってところだろう。


 ただ、問題は幽香さんだ。親子のやり取りを横目に幽香さんを見る…



「…ん?どうしたの幽透?」



 透き通るような白い肌が赤みを帯びている。幽香さんは酔ったのが顔に出るタイプらしい。


 色っぽいなんてレベルを遥かに超えて、もはや艷である。縁側に腰を掛け、夜風で髪が少しなびくその姿は言葉では言い表せない美しさだ。



「いや…なんでもないですよ。楽しいなぁ…って。」



「そんな事言って、実は私に見蕩れてたりして…?」



 見てたのバレてたか…?いや、そもそもこんなにも美しい幽香さんを見るなって方が無理難題だ。



「ハハハ…顔、赤くなってますよ。」



「おい幽透!師匠を口説くなんていい度胸してるな!」



 今度は魔理沙に肩をガッツリ組まれる。酔っていないと思っていたが、そうでもないかもしれない。


 どう見ても未成年の霊夢と魔理沙が日本酒を片手にワイワイしてるのは如何なモノかとおもうが…


 幻想郷にはそう言ったルールなんて無いのだろう。気にするだけ無駄だ。



「別に口説いて無いって。それよりさ、魔理沙って幽香さんに弟子入りしてるの?」



「ん?あぁ、私にとってはお母さんみたいなモンだからな、呼ぶのは恥ずかしいから師匠って呼んでるんだぜ!」



「生きる為の術や基礎的な魔法…まぁそう言うのを教えてる内に師匠って呼び始めたのよ。素直にお母さんでいいのに。」



「小さい頃は霊夢と一緒にお姉ちゃんって呼んでたからな、それをお母さんに変えるのはちょっと…」



 確かにそれは恥ずかしいかもしれない。ただ、魔理沙が幽香さんのことを母親のように慕っているのは間違いなさそうだ。



「ちょっと魔理沙!私は呼んでないって言ってんでしょ!コラァ幽透!ニヤニヤしてんじゃないわよ!こっち来なさい!」



「はぁ!?な、なんで僕だけ!?」



「ブフッ…!目ぇ付けられたな幽透…!あぁ、あんなに酔ってる霊夢久しぶりに見るぜ……私は師匠とお話してるからな!」



「フフッ、楽しい飲み会ね、幽透?」



 クソ…逃げられない…!楽しいのは楽しいけど、酔うとここまで人が変わるとは思ってなかったぞ…



「はいはい…来ましたよ霊夢。本当…飲み過ぎ…」



「そんな事無いわ!まだまだこんなモンじゃないんだからね!」



 何その意味わからんツンデレキャラ…


 お酒は飲んでも呑まれるなとはよく言ったモンだよ。



「魔理沙が言うには普段そんなに酔わないらしいじゃんか。なんで今日に限って?」



「そんなの楽しいからに決まってんでしょ。楽しさと比例してお酒も進むって事よ!」



「新しい友達が出来て嬉しいのよね霊夢……って、あぁ…気持ち悪…ゆ、幽透…私風に当たってくるわ…」



 全くもう…!霊夢は絡んでくるし、霊華さんは止めるどころかダウンしちゃうし…!


 いや頭フラッフラだけど霊華さん本当に大丈夫か…?



「そうよ!幽透の歓迎会なのにその本人が全然飲んでな……って幽透、聞いてるの!?」



「聞いてるって。それより霊華さん大丈夫なの?」



「あぁ、お母さんはそんなにお酒強くないのよ。水飲んで暫くしたら回復するわ。」



 なるほど、あれはいつもの事なのか。霊華さんお酒強そうなのに…意外だな。


 まぁ幽香さんや魔理沙も近くにいるし、大事になる事は無いと思う…いや、思いたい。



「それならいいんだけど。」



「そう言う幽透は全然飲んでないじゃないの。」



「霊夢のペースが早すぎるんだよ…僕だって結構飲んでるからね?」



 幻想郷のお酒が美味しいから進みが早いのは分かるけど、日本酒はグビグヒ飲むものではない。これに関しては現代であろうと幻想郷であろうと共通であって欲しい。



「まぁいいわ。それより……幽透、これから大丈夫なの?」



「大丈夫…って、何が?」



 僕の問い掛けにニヤッとした霊夢は顔を近付けて小声で僕に囁いた。


 フワッと霊夢の匂いがお酒と混じって香ってくる。どうして女の子っていい匂いするんだろう…



「幽香との生活……我慢できるの…?」



「なっ……!?」



 極力意識しないようにしてたのに…その一言で色々想像してしまうじゃないか…!


 我慢も何も、もちろん手を出すなんてことはしない。そんな事で幽香さんを裏切るような真似したくないから。


 ただ、僕も男だ。幽香さんの様な美人とひとつ屋根の下で過ごすなんて…どんな刺激が待ってるか分かったモンじゃない。



「幽透だって子供じゃないんだし、いくら力に差があると言っても…男を家に招く意味……分かるでしょ…?」



「れ、霊夢…!まだ幽香さんと会って間もないんだよ!?そんないきなりな事ある!?」



 なんなら今この状況だって健全とは言えないけどね!酔っ払った霊夢が目の前…いや、耳元で囁くように声を出してるんだぞ!?変な性癖に目覚めたらどうしてくれるんだ!?



「期間なんて何の宛にもならないわよ。これから毎日顔を合わせるんだから…結局は時間よ。」



「そ、そんな事言ったって僕はいきなり手を出すような事はしないって!」



「ふぅん…幽香は満更でも無さそうだけど…」



 ま、惑わされるな僕…!戦場は、焦った者から、死んでいく。落ち着くんだ…!



「そうだとしても…!ぼ、僕が幽香さんを守れるくらいにならないとカッコつかないでしょ…!」



「ふぅん…ま、守られてデレデレしてる幽香を見るのもまた一興…ね。楽しみにしてるわよ?」



「…どうせ二日酔いで忘れるクセに。」



 と言うか忘れていてくれないと困る…覚えていて困ることは言ってないけど、恥ずかしくはあるからね。



「あら、何か言ったかしら?」



「……別に。あぁもう、もっと酔っ払いたくなってきた。」



「お、いい事じゃないの。ほら、注いであげるわ。」



 空いたグラスにお酒が注がれる。八割くらい入ったところでグイッと流すようにお酒を煽る。



「っはぁ…!もう一杯ちょうだい霊夢…」



「いい飲みっぷりだけど…大丈夫?」



 そう言いつつもさっきと同じくらいの量を注がれる。本当に水のように飲めてしまうから明日が地獄だろう。


 どんな状況でも余裕を持って窘める大人になりたいものだ。多分無理だけど。



「うん、大丈夫…ありがとう。」



「まぁ…どうしても我慢出来なくなったら私が相手してあげるわね。幽透なら…まぁいいわ。」



「ブハッ…!」



 霊夢の思いがけない一言でつい吹き出してしまった。


 いやもう本当によろしくない。夢のような時間なのになんでこんなに焦ってんの僕…



「フフッ…なぁんてね。冗談よ。」



「霊夢……!」



「ごめんって。ほら、もう少し飲みましょ?二人して忘れるくらいに…ね。」



 僕らは更にペースを上げて飲み続けた。初日から随分距離を縮められたとは思うけど…お酒の場だし、内容も内容だし…


 幽香さんとの生活も楽しみで不安だけど、霊夢との時間も色々不安になってきた…初日でこれか、本当に退屈しなさそうだけど、僕の身がもつかどうか…

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