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5話 幻想郷での生き残り方。

「準備はいい?魔力、霊力の事、それらの使い方について見せてあげるから、よく見てて。」



 霊夢とは少し離れた所で頷く。今日何度目の驚きを与えてくれるのだろうか。



「まぁ…こんなもんでいっか。あらよっと。」



 霊夢が僕に向けて手をかざした瞬間だった。白く光る玉…?粒…?のような物が飛んで来て、目の前で弾けて消えていった。



「おわっ!!」



 驚きの余り尻もちをついてしまう。マジックなんかでは無い。熱を帯びた玉が勢いよく僕に向かって来たのだ。


 それに、僕の目の前には透明なガラスの様な壁があった。玉が弾かれたのはその壁にぶつかったからだ。



「今のが霊力を具現化した攻撃と防御。攻撃は弾幕、防御は結界ね。もちろん人よっては違う使い方もするけど。」



「ハ、ハハハ……マジかよ…!れ、霊夢、僕にも弾幕とか結界とか使えるのか…!?」



「それは幽透のセンスと努力次第ね…使い方のイメージは教えてあげられるけど。」



 少しでも使えるようになればなんとかなると思うんだけど、それまでが大変そうだ。


 イチを増やすことは出来てもゼロをイチにするのは相当難しいだろうから。


 でもなんだか吹っ切れた気分だ。霊夢の様子を見る限りあれくらいは出来て当然なんだろう。とにかくやってみるしかないって感じだ。



「…教えてくれ霊夢!出来るかどうか分かんないけど、とりあえずやってみたい!」



「フフ、やるしかないって顔…いいわね。いいわ、まずは魔力を使うところからね。幽透、胸に手を当てて。」



 霊夢に言われた通りに手を当てる。気分が高揚してるからなのか、少し鼓動が早い…気がする。



「自分の鼓動をしっかり感じて。その鼓動が身体を巡る魔力だと思い込むの。」



「これが…僕の魔力…?」



「その鼓動が身体に溶けて、一つになった感覚がする。そうなったら、魔力のタンクが満タンになった証拠よ。」



 鼓動に合わせて深く呼吸をすると段々鼓動が落ち着いてくる。魔力なのかは分からないけど、何かが満ちていくような気がする。


 気の所為なのかもしれないけど、今は思い込むしかない。



「ぶっちゃけ分かんない。分かんないけど、なんか……いけそうな気がする!」



「…気の所為じゃないわ。幽透、あなたの身体には確実に魔力が宿ってきてる。」



 ちょっとだけ鼓動を感じるけど、別に満タンにしないとダメな事もないだろうし……やってみるか。


 えぇと…巡る魔力を手に集中させて……なるほど、意識を向けると素直に集まってくれるな。ただ…集めた魔力を戻す事が出来なかった。すなわち…暴発である。



「霊夢!あ、ちょっ…ヤバい、止まんない!!」



 ごめん、と言う前には僕の手から弾幕が放たれていた。放った瞬間に感じていた魔力は無くなり、再び鼓動が早くなるのを感じだ。



「えっ!?ウソでしょ……よっと。」



 魔力をほとんど使った僕の決死の弾幕は霊夢の結界によって虚しく消えてしまった。


 だけど撃てた!結局よく分かってはないけど僕にも魔力を使えるって事が分かっただけで充分だ。



「ごめん霊夢!止まんなくて…大丈夫…?」



「私は大丈夫。だけど…凄いわよ幽透。いきなり弾幕を放てるなんて…驚いた。」



 霊夢は目を大きくしている。流石にいきなり出来る訳が無いと思われていたのだろうか。


 うん、僕自身そう思ってたのだから当然だろう。



「僕も驚いた。でも使えたよ霊夢!とりあえず最初のステップはクリアだよね!」



「…違うの。まずは空を飛ぶところから始めるつもりだったのだけど…いきなり魔力を集中させて、それを外に放てるとは思わなかったわ。」



「え?だって霊夢が弾幕とか結界とか見せてくれたし…」



「人によるって言ったでしょ。イメージしやすいかと思って見せただけなのに…いや、素直に凄いわ幽透。」



 い、いや、そんなに褒められるとニヤニヤしちゃうよ。


 幽香さんにも素直に受け取っておけって言われたから素直に喜ぶけども。



「そ、そう?へへへ…センスあるのかな…僕。」



「そうかもしれないわね。今の幽透なら簡単に飛べると思うわよ。ゆっくり深呼吸して、ある程度回復したら、羽が生えたようなイメージを持って、浮き上がるように魔力を込めてみて。」



 イメージの難易度高くなったな…浮き上がるように魔力を込めるって…フワッと浮くように…か。


 胸に手を当てて、深呼吸する。徐々に鼓動が落ち着いてきたら先程のように意識を身体全体に向け、軽く地面を蹴ってみる。



「飛べ…飛べ………おっ…?」



 浮いた…!飛んでいると言うか…浮いているだけだけど、今僕の足は地面に着いてない!


 つい歩くように足を進めてしまうけど、全く前には進まない。当たり前だよね。



「フフッ…足、バタバタさせるのなんか面白いわね。」



「違うよ!歩こうとしちゃうだけだって!どうすればこっから前に行けるの!?」



「進みたい方向に意識を向けたり、逆の方向に魔力を放出したり…まぁこれも様々ね。」



 前に前に……弾幕の時みたいに足の方に魔力を集中させて…外に放つ…


 徐々に徐々に前に進んだり、止まったり。まだ上手くコントロールは出来ないけど、浮いた状態を維持する事は出来そうだ。



「ほうほう…おっと……ハハハ、フラフラする。」



「幻想入りした初日でここまで出来れば充分過ぎるくらいよ。身体も精神も馴染めてないでしょうし、今日はこの辺にしておきなさい。」



 まぁ無理をしても仕方ないか。時間はたっぷりありそうだし、時々こうして練習するとしよう。



「了解。ありがとう霊夢、おかげで幻想郷に来た実感が湧いてきた。」



「私もいい暇つぶしになったし、気にしなくていいわ。それに、さっきのキラキラしたような幽透の笑顔、子供みたいで可愛らしかったし。」



 幻想郷で出会った二人の女性両方に可愛いって言われるのはご褒美なのか辱めなのか…


 意図していないタイミングで言われるとどうも恥ずかしさが勝ってしまう。幽香さんや霊夢の方が可愛いだろ、と。



「…それ、幽香さんにも言われた。そんな事ないと思うんだけど。」



「そう?やってやるって決意してる今みたいな感じの方が素敵よ。どうしよう…ってウジウジしてる奴はあんまり好きじゃないの。」



「それは分かるけど。あんな弾幕とか結界とか見せられて試さない奴はいないって。」



 こう、好奇心を揺さぶられると言うか、男心をくすぐってくると言うか。誰しも一度は夢見るだろう?手から何か放つとか空を飛ぶとか。


 それを目の前で見せられたんだ、やってみたくなって然るべきだと思う。



「フフッ…これからに期待しておくわ。」



「そうしておいて。んで、この魔力ってさ、最大値を増やせたりしないの?」



 たった一発の弾幕を撃っただけでスッカラカンになってしまうのは困る。


 最大値を増やすなり、使用する魔力を極端に減らすなど出来なければ使い物にならない。



「そうねぇ、ご飯をいっぱい食べて、よく睡眠をとって、程よく身体を動かし、ひたすら魔力を使うことね。」



「あのさ…やっぱり子供だと思ってない…?」



「そんな事ないわよ。魔力を増やすってことはそれだけ身体に掛かる負担も多くなる。子供が成長するのと一緒、身体に魔力が馴染んで、より多くの魔力を取り込む身体を作るのよ。」



 い、意外と原始的なんだな。結局は身体が資本って事か。その辺は親近感が湧く。



「建物を建てるには土台をしっかり作っておかないといけないって事か。」



 無理に魔力を増やそうとしても結局身体が追い付かなくて…最悪、自分の増やした魔力に破壊されたり…?


 おぉ、怖い怖い。僕からしたら魔力なんて未知の力だ、恐れるくらいで丁度いいだろう。



「そう言う事よ。だから今日はここまで。そろそろお母さんと幽香の話も終わるだろうし、幽透も挨拶くらいして行くといいわ。」



「そうだね。あ、あのさ霊夢。霊夢のお母さんって…どんな感じの人なの…?」



「別に怖い人じゃないわよ。里の皆が言うにはかなり似てるけど、そんな事ないし…まぁ幽香と仲良く出来るなら大丈夫よ。」



 そうは言われても…友達の親に会うのって必要以上に緊張したりするじゃん?それと似た感じが…



「別に怖がってる訳じゃ…」



「あ、丁度縁側に出てきたわよ。おーい!お母さーん!」



 そう言って霊夢が手を振った先には…



「え……れ、霊夢…!?」



 先程霊夢が言ったように、霊夢にそっくりな人が幽香さんの横で返すように手を振り返していた。

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