表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/44

44話 よっぱられいむ。

 大声で霊夢に呼ばれてしまった為、レミィとの話を中断させて霊夢の元へ向かったが、既に数本の瓶が空けられていた。


 まだそんなに時間は経っていないと思うが…どれだけのペースで飲んだと言うんだ…?



「幽香と言う嫁がいるのに何をチンたらしてんのよ!!」



「まだ嫁じゃないし…そういう事を大声で叫ぶの止めてもらえませんかねぇ。」



 そもそもこの場に幽香さんがいない。霊夢はどんな意図があってあんなことを叫んだのだろうか…?


 いや、気にするだけ無駄だ、特に意味などないはずだ。酔っ払った霊夢は記憶は無くさないがいつも冷静な枷は無くなるのだ。



「何よ、あんだけ好き好き言ってるクセに結婚する気ないの!?」



「ちょっ…ホント誰だよ霊夢にこんな飲ませた奴…!」



「する気ないの!?なんで私から目を逸らすのよ!」



 誰か知らないが、本当に反省して欲しい。最初の歓迎会と言い、酔っ払った霊夢の介抱は僕がしなきゃいけないんだから。


 今日は咲夜さんもいるし、あまりに大変だったら手伝ってもらおう…


 とにかく今は霊夢の相手を全力でしなければ…



「したいけどさぁ、いくら僕がしたいからって幽香さんがそうだとは限らんじゃん。」



「そんな事を聞きたいんじゃなくてぇ!するのかしないのかって聞いてんのよ!」



「するかしないかで言ったらすると思うよ。ずっと一緒にいたいって思ってるし、そうなったら自然とするでしょ。」



 その『いつかの日』が来るとして、それがどうやって来るかは分からない。


 何かイベントがあってプロポーズするのかもしれない。もしかしたら幽香さんから逆プロポーズされるかもしれない。


 何気ない瞬間に結婚しようって思うかもしれない。いつ来るか分からないその日を楽しみにはしている。



「そんな事を聞きたいんじゃなくてぇ!するのかしないのかって聞いてんのよ!」



 えぇ…何この子、話聞いてくれないんだけど。困る困る、こうやって酔っ払いは嫌がられるのか…



「だからすると思うって!したいと思ってるし、まだその日じゃないってだけ!」



「んじゃあその日っていつなのよ!」



 全く聞いてくれない。なんかもうこの場で幽香さんにプロポーズしなきゃいけないくらいの勢いなんだけど。



「分からんって!いいか霊夢、結婚ってのはね、この日までにしようって期限を決めてするモンじゃないの!お互いが心の底からしたいって思った時にするの!」



「んじゃ何!?幽香にも同じ事を聞きゃいいのね!?ゆうかぁあ!!幽透とけっ…ムグッ!」



 全てを言い切る前に霊夢の口を手で覆った。


 危ない危ない…!幽香さんはこの場には居ないが博麗神社にはいるし、幽香さん以外にも聞かれたら面倒だ。


 結婚したい気持ちはある。でもそれを周りにとやかく言われるのは勘弁だ。


 大体、今そんなことを幽香さんに聞かれたら出来るはずの結婚も出来なくなるかもしれないだろ!



「おぉぉぉおおぉおい!!!バカかお前はぁあぁあ!!」



「ムグムグムグッ!ゆぅかムグムグッ!」



 ヤバいヤバいヤバい…少しでも力を緩めたら全力で叫ばれそうだ…!


 何か無いのか!?このよっぱられいむを黙らせる方法は無いのか!?



「ちょいストップ霊夢!ほ、ほらお酒!まだ飲み足りないんだよ、もっと酔ったら僕もいっぱい話したくなっちゃうかも

よ!?」



「んんぅ…?何よ、まだ足りないっての!?」



「まだまだでしょうが。ほらグラス寄越して、注いであげるから。」



 無理矢理霊夢のグラスをぶんどって度数の高めのお酒を並々と注いで返す。アリシアが選んだお酒だ、美味いし強いぞ…!


 さぁ、飲め霊夢!飲んで黙るか潰れて黙るのか…どっちを選んでもいいぞ!


 万が一潰れないから共倒れだ…!こうなったら一緒に溺れようぜ霊夢…!



「ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…プハァッ!え、美味っ!めっちゃ美味いじゃないの!」



「お、美味しいよね!ほらほら、まだたくさんあるから飲も飲も!」



 間髪入れずにグラスをお酒で満たす。更に次は自分のグラスにも注ぐ。流石にひたすら飲ますのもつまらない。


 それにしてもまさか一気に飲み切るとはおもわなかった。既に随分飲んでるはずだし、少しはペースを考えてるのかと思ったら全く考えてないようだ。


 こうなったら後は勢いで押し切る。僕も一緒になってひたすら飲んで飲ますだけだ。



「ふぅん、いい度胸してるわね。私に飲み比べで勝てるとでも思ってんの…?」



 上手い具合に乗ってくれた。とりあえず大声で騒ぐのは止めてくれそうだ。


 後は僕がどれだけ耐えられるのか…



「僕の好きなお酒を独り占めされちゃ堪らないよ。霊夢が無駄に飲み切る前に僕も飲まなきゃね。」



「今日の主役だからって手加減はしないからね。それじゃ…乾杯。」



 今日だけで何度目か数えていないが、再度グラスを鳴らして一気に煽る。


 手加減なんてされては敵わない。こちとら飲み比べに負けてでもぶっ潰れて欲しいのだから。


 それにしても本当に美味いお酒だ。幻想郷のお酒は良いお酒ばかりだが、コレに関しては特にそう感じる。



「「プハァ…!」」



 僕と霊夢、ほぼ同じタイミングでグラスを空にする。そしてすぐさまお互いのグラスにお酒を注ぐ。


 注いだらそのままグラスを口に。まるで運動直後に水を飲むかの様な勢いで喉を鳴らす。


 水であってもこんなに勢い良く飲まないと思うが…



「フゥ…それにしても、こうして幽透とバカみたいにお酒を飲めるのも異変解決したからなのよね。」



「ん、そうだねぇ。」



 バカな自覚があるようで何よりだ。しかし、霊夢の言う通りでもある。異変解決してなかったら楽しく皆で笑ってはいられなかったと思う。


 レミィの方をチラリと見ると先程とは打って変わってフランと笑顔でワインを嗜んでいる。


 レミィはともかく、フランってお酒飲めるのか…まぁ永く生きてるし当たり前か。



「…改めてフラン、良かったわよね。宴会の前に紅魔館に行ったけど、狂気もすっかり無くなって、これからどんな過ごし方をするのか…フフッ私も楽しみだわ。」



「さっきレミィとその話してたよ。レミィ自身もどうしていいか分からないって楽しそうに言ってた。」



「あらそう。レミリアらしくないけど、普通の姉妹として過ごすなんて初めてだろうし、今まで向き合ってきた分楽しみが一気にやってきたって感じ?」



 酔っ払いにしては素敵なことを言うものだ。さっきまで結婚爆弾を投下しようとしていたとはと思えない。


 まぁ酔っ払っていることだし、これが霊夢の本音という事だろう。


 そもそも霊夢は酔っていようが素面だろうが本音しか言わないような気もするが。



「多分そんな感じだと思う。僕もまた紅魔館に顔出すつもりだし僕も僕で様子は見るようにするよ。」



「フランは大丈夫だと思うけど…狂気はメンタル的な所もあるだろうしもう少し経過を見たいわよね。」



 そ、そっちの意味で言った訳じゃないんだけど…流石は博麗の巫女…


 言われてみると確かにまだ安心し切ってはいけないのかもしれない。


 折角狂気を消し去った訳だし、やったらやりっ放しじゃなく経過観察も大事なんだろう。



「そ、そうだね。その辺も気をつけて様子を見るようにするよ。」



「…幽透は博麗の巫女じゃないし、そこまで気を遣う必要はないのよ?幽香とイチャイチャデートするついでに…くらいで全然助かるわ。」



「何さ霊夢。えらくシミっぽい事言うじゃん。酔いが覚めちゃったんじゃないの?」



 ちょっと茶化したように霊夢のグラスにお酒を注ぐ。酔っ払った事で少しセンチメンタルになってるのだろうか…



「ング…ング…はぁ…!別にそんなんじゃないけど…ちょっと悔しくてね。」



「悔しいって…別に僕の力だけで異変解決した訳じゃないよ?」



「まぁ…それも分かってるんだけどねぇ。私が博麗の巫女になりたての頃からフランの狂気って問題になってたの。それが幻想入りしたての幽透が解決しちゃうなんて…って感じで。」



 なるほど。霊夢は霊夢で色々考えていたようだ。僕はもうとにかく必死だったけど…


 それでも人里の人達の安全を最優先に行動しているあたり霊夢の優しさ言うか、プロとして行動している気がする。



「ハハハ…そういう意味では美味しい所を頂いちゃって申し訳ない…」



「幽透が謝ることじゃないわ。結果論だけど、幽透がフランの心を開いたからこその解決だと思ってるし、私じゃフランの狂気を抑えることは出来ても消し去る事は出来なかった気もするし。」



 本当にセンチメンタルになってるみたいだ。普段の霊夢なら『幽透に花を持たせてあげたのよ』くらい言ってもおかしくなさそうだが。


 まぁ出会ったばかりとは言え霊夢の性格はある程度理解してるつもりだし、霊夢の気持ちを汲むとしよう。



「いやいや、霊夢が人里に向かってくれたから僕達は紅魔館に行けたんだし、霊夢がいなきゃ結果的に無事だったとは言えなかったと思うけど。」



「…幽透にそんな気の遣われ方される方がショックだけど、終わった事を言ってても仕方ないか。」



 とんでもなく微妙な顔で言われた。僕が思ってる事をそのまま伝えてるだけだからそこまで気にされてもなぁ…霊夢のおかげでもあるんだし。



「そうだって、だからそこまで気にしないで。ほらほら、宴会はまだまだこれからでしょうが。飲むよ飲むよ!」



「そうね…そうよね!今日はフランの狂気が消え去ったお祝いだもの、私がこんなんじゃダメよね!」



 なんとか元気になってくれたようだ。グラスの残りのお酒を一気に飲み切る霊夢。


 お酒が足りるか不安になる飲みっぷりだ。



「そうだぞ霊夢!」



「私は忘れていないわ、幽透がいつ幽香と結婚するのか…それを聞くまでは潰れられないわ!」



「それは違うぞ霊夢…」



 こうして僕の初めての異変解決とフランを祝う宴会は最初から最後までドタバタで幕を閉じた。


 幻想郷を巻き込む大騒動となったが、最後はこうして皆でワイワイ盛り上がる事ができて本当に良かったと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ