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4話 博麗の巫女。

 しばらくの間、幽香さんとの空の旅を楽しんだ後、大きな鳥居のある神社に着地した。


 鳥居だけじゃなくて神社が大きく、広い境内があっていかにも管理者って人がいそうな雰囲気のある神社だ。



「到着っと。幽透、大丈夫だった?」



「全然大丈夫です。それより、ヒョイとお姫様抱っこされた方が驚きです…」



「フフッ、やっぱり男としてはされたくない?」



 それをニコニコしながら聞いてくるあたり性格が悪いと言うか意地悪と言うか…


 嫌か嫌じゃないかで言ったらもちろん嫌じゃないけども。どうせなら幽香さんをお姫様抱っこしたいよね。



「そんなことないですし、幽香さんみたいな人にされること無い…と思うんで貴重な経験だと思っておきます。」



「あら、それは嬉しいわ。今度は私も幽透にしてもらおうかしら?」



「もし出来なかった時ショックなので筋トレしときます…」



「ちょっと、私はそんなに重くないわよ!」



「そんなつもりで言ったわけじゃないですって!」



 もちろん幽香さんが重くないのは分かってる。いや、実際は知らんけど…服の上からでも幽香さんのプロモーションの良さは伝わってくる程だ、重い訳がないだろう。


 それで持ち上げられなかったら自分にショックを受けそうだから筋トレをしとかないといけないんだ。



「…さっきから騒がしいわよ、幽香。あんたが男と一緒にいるなんて珍しいわね。」



 わちゃわちゃとしてる僕達の後ろから声をかけてきたのは赤と白を基調とした巫女服…の様な装いの少女だった。


 脇が開いてる巫女服や、頭のリボンも目立つが、とりあえず目に付くのはその可愛らしさだ。幽香さんにしかり、幻想郷には美人しかいないのか?



「久しぶり…って訳でもないわね。幽透、紹介するわ。この子は博麗の巫女、博麗霊夢。管理者って訳じゃないけど、幻想郷の守護者…みたいなモノね。」



 なるほど、つまり怒らせちゃいけない人だ。悪事を働く妖怪を退治したりするのが仕事って感じか?



「あら、外来人?わざわざ幽香が連れてくるなんて。」



「あ、初めまして…幽透って言います。よろしくお願いしますね、霊夢さん。」



「幽透ね。私の事は霊夢でいいし、敬語もいらないわ。」



「そう言ってくれるなら…よろしくね、霊夢。」



 サバサバした性格なのだろうか。それとも人に気を遣われるのが嫌いなのか…


 まぁわざわざ霊夢の意思に反して敬語を使う必要も無いだろうし、こちらもフランクに接させてもらおう。



「なんか変わった雰囲気の人間ね。それで?わざわざ私に会わせる為に連れて来たって訳?」



「まぁ間違いではないけど、幻想郷の管理者さんに会わせるつもりだったのよ。ここにいるかしら?」



「あぁ、今はいないわ。しばらくしたら来ると思うけど…幽香はお母さんにでも会っていけば?私は幽透と話してるから。」



 霊夢のお母さんは管理者じゃないらしい。霊夢が巫女として幻想郷を守って、お母さんが管理をしているのかと思ったけど。


 先代の博麗の巫女ということだろう。仲良く…というか、面識を持っておいて損はないはずだ。


 こちらとしても幻想郷での知り合いは多い方がいい。正直幽香さんや霊夢のような人と話せるだけで役得だし、仲良く出来るといいな。



「そう。それじゃ会ってくるわ。幽透、少しの間霊夢に幻想郷の事について聞いてみるといいんじゃない?」



「そうですね。霊夢、お願いするよ。」



「それじゃ縁側にでも行きましょうか。」



 幽香さんは神社の中に、僕と霊夢は境内からそのまま縁側に腰をかける。


 それにしても立派な神社だ。何代続く巫女さんなのか分からないけど、多大な信仰があるんだろう。



「それにしても…本当に珍しいわねぇ…幽香の友好度って今は低い訳じゃないけど、それでもあんなやり取りする外来人は見た事ないわ。」



 幽香さんも言ってた通り、僕ほど優しくされるのは珍しいらしい。霊夢と幽香さんは前からの知り合いっぽいし、僕の知らない幽香さんを知ってるんだろう。



「なんか気に入ってもらえたみたいなんだよね。記憶も無いし…とにかく必死ではあったけど。」



「記憶が無い?それじゃ過去のことも知らずにいきなり幻想郷に来たってこと?」



 霊夢の問い掛けに軽く頷く。来る前から記憶が無かったのか、来る時に無くしたのか…それは分からないけど、とにかく今の僕にとって必要なのは情報だ。



「困ったもんだよ。幽香さんに軽く聞いてみたら死ぬような危険もあるみたいだし、幻想郷について詳しく聞いておきたいかなって。」



「そうねぇ…確かに幽透にとって情報は必要だし…何から話そうかしら。まず、幻想郷には人間、妖怪、神様、その他色々な種族が住んでるのは聞いた?」



 幽香さんが妖怪だから妖怪の存在は信じるしかないんだけど、他にもいるのか…


 神様までいるとは…まるで何かの物語のようだ。実際会ってみたら信じるしかないんだろうなぁ。



「いや、幽香さんが妖怪だってのは聞いたけど神様までは聞いてなかったな……是非とも会いたいモンだね。まぁ種族に関しては置いといて、能力とか…身を守る為の術を教えて欲しいんだけど。」



「それも教えてあげるからもう少しだけこの世界の仕組みを聞いておきなさい。それも生きるために必要な情報よ。」



「…はい。お願い致します…」



 焦ってしまった…どんな情報でも必要だ。順番に教えてもらうとしよう。



「幻想郷ってね、結界によって隔離された世界なの。所謂現世で幻想になったモノ。つまり、忘れ去られたモノが幻想となってたどり着くのが幻想郷なの。」



「忘れ去られる…?」



「人によって定義が違うけどね。周囲に存在を忘れられたモノや生きる意味を忘れたモノだったり。自分を好いてくれる人どころか、嫌う人すらいなかったりよ。」



 なるほどね。どう転んでも良い意味は無いようだ。とりあえず僕は誰に思い出される事もないような存在だって事は理解した。


 記憶は無くて正解だったかもしれない。記憶があったとして、昔の知り合いや周りの人に忘れ去られたなんて思ったらそれこそ記憶ごと無くしたくなってしまいそうだから。



「それは…元の世界には戻れないってこと?」



「正確には戻る場所が無い…って感じね。まぁ幻想郷での生活も悪くないわよ。」



 元の世界にはあまり興味が無いし、幽香さんとの生活を捨てるなんてとんでもない。


 それにしても、戻る場所…か。幻想郷で生きていくとして、僕の場所が見つかるといいな…



「そこに関しても気にしてないよ。記憶が無きゃ帰る場所なんて知らないし。」



「別にいいじゃないの。帰る場所なんて生まれもってある訳でもないし、今から作っても遅くはないわよ。」



 今からでも遅くない…か。これから幻想郷で生きていけばいずれ…ってことかな。



「そんなもんかねぇ。幻想入り初日だし、よく分かんないってのが正直な気持ちだよ。」



「まぁのんびり日々を過ごしなさい。んで、ちょっと脱線したけど、隔離するための結界を貼ったのがあんたの言う管理者なの。」



 忘れ去られたなりの過ごし方ってのが見つかるかもしれないな。確かに生き急ぐことも無い、まったりと幻想郷を楽しませてもらうとしようか。


 隔離するための結界……うん、とりあえず今は深く考えても理解出来ないから、そういうモンだと思っておこう。



「本当に凄い人なんだね。でも貼りっぱなしって訳にもいかないんじゃ…?」



「そう、それを維持するのが私の仕事。結界以外にも、幻想郷に悪影響を与える奴をしょっぴくのも仕事なのよ。」



「悪影響…?幻想郷を自分の物にしようとするとか?」



 さっき空で見た幻想郷の景色は絶景だった。こんな美しい世界を支配したくなるのは分からないでもない。


 んで、そういう人がいるから霊夢のような、均衡を保つ立場が必要なんだろう。



「異変…と呼ぶわ。自分の能力を使って支配や、破壊をすることよ。」



「幻想郷を守るのがメインの仕事ってことか。ちなみに能力についても教えて欲しいんだけど…」



「その人がどんな能力を持っているかは分からないの。本人が自覚して、本人が名付けるようになってるわ。」



 なるほどねぇ。幽香さんの能力…『花を操る程度の能力』ってどうして『程度』って言ったのか疑問だったけど、本人が自覚してる範疇だから…それくらいは出来ますよって意味合いだったんだな。


 おそらく、幻想郷では皆が何々程度の能力って言うんだろう。人の力を正確に測る術は無いらしい。



「能力を使えるかは本人次第ってこと?」



「まぁそうなるわね。どれだけ努力しても持って無い人は永遠に発動出来ないし、ある日突然使えるようになっていたりするかもしれないし。」



「それものんびり…かぁ。」



 どうしようも無いっぽい。センスに身を任せるか、能力が無いと仮定してフィジカルを鍛えるか……身を守る為には後者を選んだ方が良さそうだ。



「幽香もいるし、そうそう安全よ。能力だけが全てじゃない。魔力も霊力もあるし、戦い方なんて人それぞれだしね。」



「あぁ、そうだった。その…魔力ってのもイマイチなんだよね。」



「私のは霊力だけど…まぁ似たような物だし、聞くより実際見た方が早いと思うわ。幽透、境内に行くわよ。お望みの身を守る方法ってのを教えてあげる。」



「え?あ、おわぁああ!!」



 霊夢に手を捕まれ再びフワッと飛び上がった。幽香さんだけじゃなく、霊夢も飛べるらしい。


 いきなり足が地を離れるのはまだ慣れない。おかげで変な声が出てしまった。


 これも能力や霊力…?って奴なんだろう。今の一瞬で既に疲れたが、霊夢に霊力を見せてもらう。


 信じ難いことが次々と現実に起きていくせいで段々と楽しむ余裕すら生まれてきた。今から見せられる事も意味分からなくなるだろうけど…それすら楽しもうじゃないか。

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