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31話 初めての異変。

「「コレは…!?」」



 ある日の朝、いつもなら陽が差し込み、気持ちよく起きれるのだが、今日は違った。


 曇っている様な暗さでは無く、太陽光がほとんど届いてないような暗さだった。そして夏なのにかなり涼しい。


 幽香さんを起こし、二人で外を見に行くと、いつもの幻想郷の空は無く、赤黒い霧の様な物が空を覆っていた。


 この霧が太陽光を遮り、明るさや熱が届いていないのだろう。



「ゆ、幽香さん…コレ…もしかして…」



「…えぇ、異変…ね。」



 とうとうこの日がきた。幻想郷に来て初めての異変…あの妖怪に次いで、二回目の実戦だ。



「よっしゃ、解決しに行こう。って言いたいけど、誰が起こしてる異変なのか調べないといけないね。」



 霊夢なら分かっているのだろうか。どちらにしても異変解決を生業としている霊夢と行動を一緒にするのは悪い選択肢では無いと思う。



「いえ、調べるまでもないわ。この霧の出処は紅魔館。以前も似たような事してたし、多分霊夢も紅魔館に向かってるはずよ。」



 紅魔館…か。まぁ言われてみれば霧の色的に紅魔館が当てはまる。


 それにしても一度起こした異変をどうしてまた…?昨日までの空を考えるとその異変は失敗してるはずだけど…


 考えていても始まらない。とりあえず僕も紅魔館に向かおう。



「じゃあ紅魔館に行こう。こんな事をするなんて何か訳があるはずだし、このまま放っておく訳にはいかないよ。」



「そうね。以前はレミリアが主犯だったけど、今回はどうか分からないし、アリシアが主犯だとすると面倒この上ないもの。」



 当主だから異変を起こすって訳でもなさそうだ。アリシアさんが私利私欲の為に幻想郷を危険に陥れたりはしないだろうし、よっぽど何かあったんだろう。



「とにかく行こう。道中で霊夢にも会えるかもしれないし。」



 僕らは一気に飛び上がり、紅魔館に向けて進む。


 もっとスピードを出したいところではあるけど、これからどんな展開になるか分からない。アリシアさんと戦うなんてことになるかもしれない。無駄な消費は避けないと。



「ねぇ、幽香さん。以前も似たような事って言ってたけど、レミィはなんで紅い霧を?」



「アリシアはともかく、レミリアは吸血鬼の弱点である日光の影響を受けるのよ。それを嫌ったから霧で遮ろうとしたの。」



 言われてみれば吸血鬼だった。と言う事は、銀の弾丸やニンニク、十字架とかも効くのだろうか?


 アリシアさんは効かないようだが…そっちの方がおかしいんだよな?生態の弱点って克服しようとして出来るものなのか…?



「それを霊夢に阻止された…と。」



「そう言うことよ。だからこそ、今回の霧はもっと大きい意味があるんだと思うのだけど…」



「って事は…今のレミィは吸血鬼として強くなってるってことだよね?」



「えぇ、そうよ。」



 そこに意味があるんじゃないか?ただ、強くなる為に霧を発生させたとなると…どんな理由であれ、穏やかには終われ無さそうだ。



「…気を引き締めていかないとね。」



 そんなことを話していると、僕らの行く手を横切るように黒い球体がフワフワと飛んできた。


 風船…にしては高度を保ってるし、妖怪や妖精って球体の場合もあるのだろうか…


 すると、一瞬にして黒い球体は消え、中から幼じ……レミィと同じ程の背丈をした少女が姿を現した。


 瞳は紅く、髪は金髪のボブ。白黒の洋服を身につけ、黒いロングスカートを着用している。


 左側頭部に紅いリボンをしているのが目につく。容姿も相まって可愛らしい印象だ。



「あれ、幽香じゃん。こんな所で何してんの?」



 どうやらこの子も幽香さんの知り合いらしい。永琳さんや紫さんのようなお姉さんからレミィやこの子のような少女まで…幅広い層の友達がいるようだ。


 ぶっちゃけ羨まゲフンゲフン。



「…この霧を晴らすために紅魔館に向かってるのよ。そう言うルーミアは相変わらずフワフワしてるだけ?」



「ふぅん…昔と一緒で、巫女みたいな事もすんだね。まぁ私もこの姿になってからはフワフワしてるだけ、生きる目的も無く生きるのって意外と楽しいよ。」



 今の口ぶりだと昔の幽香さんを知ってるみたいだ。もしかしたら霊華さんと異変解決していた時の事まで知ってるかもしれない。



「霊華より、今はこの子に夢中なのよ。好奇心旺盛だから、私が見ていないと…ね、幽透。」



「う、うん。あ、自己紹介がまだだったね。僕は風見幽透。幽香さんと一緒に生活してる外来人さ。」



「そーなのかー。」



 めっちゃ興味無さそうな返事をされた。多分だけど、この子もレミィと同じで、見た目と年齢が全く釣り合ってないタイプだと思う。


 それにしても両手をずっと左右に広げているけど、疲れないのだろうか。なんか…キョンシーみたいだ。



「…まぁ、元気そうで何よりよ。さぁ、私達はそろそろ行くわ。また神社に顔でも出しなさいよ。霊華も喜ぶわ。」



「気が向いたらねぇ。あ、そうだそうだ、幽透。もしも幽香を泣かせたりしたら…食べてもいい人類に認定しちゃうから、そこんとこよろしく。」



 とんでもなく恐ろしい釘を刺されたものだ。まぁ今更誰に言われたとしても泣かせたりなんかしない。


 いや、しないように僕が努力し続ける。



「言われなくても。幽香さんを泣かせる奴なんて僕がぶっ飛ばすよ。」



「へぇ、この子は大器晩成の花みたいだね。それじゃ、異変解決頑張ってねぇ。」



 ルーミアは再び黒い球体に包まれ、フワフワと飛んで行った。


 あの中だと前が見えないのか、時々木にぶつかったりしている。まるでピンボールのようだ。



「あれ…中のルーミアは大丈夫なのかな。」



「大丈夫じゃなかったらさっきみたいに姿を出して移動すると思うけど……さて、行くわよ。」



 不思議な球体を見送り、再び紅魔館へ向かう。


 紅魔館に近付くにつれ、頭上の霧が濃くなっている。紅魔館の付近は一筋の光も差さない程に暗いかもしれない。



「…暗くなってきたね。」



「レミリアの時はこんなに濃い霧じゃなかった気がするけど…」



 レミィの霧が強化されたのか、レミィより強いアリシアさんが発生させているのか…どちらかだとは思うけど…



「どっちでもいいんじゃない?濃くても薄くても止めてもらわないとこっちは困るんだし。」



「結果的にはそうなんだけど、この霧の妖気に当てられて妖怪が活発化する恐れもあるのよね。」



 なるほど。太陽光をシャットアウトする程の霧だ。ただの霧な訳が無かったか。


 そうなると人里の人達が心配だ。僕が絡まれたのも人里の近くだったし…



「それって大丈夫なの?先に人里の安全を確保しておいた方がいいんじゃ…」



「大丈夫よ。霊夢が向かってるはず。ここまで来ても紅魔館から霊夢の気配は感じない……となると違う場所、すなわち人里にいる可能性が高いわ。」



 ここまで来て…とは言うが、まだまだ距離はある。この遠距離でも誰がいるのか分かるものなのか…


 霊夢の霊力を察知しているんだろうが、実際にそれを行うとなると今の僕には不可能だ。人の魔力、霊力に気を回している余裕はまだ無い。



「そっか…それならいいけど。」



「安全を確保したら霊夢も紅魔館に来る。霊夢の負担を減らす為にも早いとこ向かうわよ。」



「…うん!」



 僕は僕に出来ることをするだけだ。初めての異変、紅魔館の人達を相手にしないといけないと思うと不安だが、まずは話を聞いてみないと何も分からない。


 今はただ、紅魔館の皆が何か悪い事に巻き込まれていないか、それを願うばかりだ。

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