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15話 紅い悪魔の住む館。

「…で、でっけぇ…!」



 先程の湖畔から数分歩いた所で僕の想像の何倍も大きい館が見えた。


 幻想郷にはこんなでかい建物もあるのか…改めて思うけど、なんでもありだよなぁ…


 こんなでかい門いらないだろ…何を入れる時を想定してるんだ…?そりゃ、そこにいる門番さんも大変だ……あれ、いる!?



「あ、咲夜さん!おかえりなさい。頼まれた物買ってきましたよ。」



「あなたねぇ、どこまで買い物に行ってたのよ。」



「アハハ…人里の子供達に捕まっちゃってですね…それより、幽香さんと、そちらの方は…?」



 門番さんと目が合う。紅いロングなストレートヘアーに、華人服とチャイナドレスを足した様な服、白い下穿き、何より目に付くのは、被ってる緑色の帽子に付いてる星を模した飾りだ。龍の字が書いてある。


 後、やっぱり美人。咲夜さんを見た時も思ったが、出会う人出会う人、とにかく美人。



「僕は幽香さんの所でお世話になってる外来人、風見幽透です。」



「あぁ、外来人の方でしたか。紅い悪魔の住む館、紅魔館へようこそおいでくださいました。私、紅魔館の門番を勤めさせて頂いております、紅美鈴と申します。」



 美鈴さんに釣られて深々と頭を下げる。丁寧な人だ、こんな人が仕事をサボるなんて考えにくいけど…



「あっ…それは丁寧にどうも…幻想入りしたばかりで分からないことだらけですけどよろしくお願いします。」



「挨拶は済んだわね。それじゃあ私は幽透を案内してくるから、寝てちゃダメよ?幽香、後は頼んだわね。」



「庭の植物達よね。分かったわ、幽透、また後でね。」



 ニコッと微笑んで手を小さく振ってから幽香さんは門を通り、館の横にある庭の方へ向かって行った。


 あぁ…可愛いなぁ幽香さん…僕も手を振っちゃお。



「…幽香さんと随分仲が良さそうですね。」



「やっぱりそう見えるわよね。子供に好かれるのは分かるんだけど…こう、男とイチャついてるイメージないわ。」



 イチャついてるなんてそんな……嬉しいんでもっと言ってもらってもいいですかね?


 というか、幽香さんが取っかえ引っ変えするような人じゃないのは分かってるし、そんなイメージは無くて大丈夫です。



「ですよね……あ、そうだ。咲夜さん、先程買ってきた物をお嬢様にお届けした時に、咲夜さんを呼ぶように言われてました。」



「えぇ?幽透の案内もあるけど、流石にお嬢様の呼び出しは無視出来ないし…」



 お嬢様…?この館の当主にあたる人なのだろうか。メイドや門番と言った雇われてる人よりは偉い人なんだろう。



「別に僕の事は気にせず、先にそちらに行ってくださいよ。僕は美鈴さんと話してますから。」



「本当…?ごめんなさ……いや、美鈴、あなたが幽透を案内してあげて。門番してても寝るでしょうし。」



「寝ませんって!まぁ私で良ければご案内しますよ。」



 門番って大変なんだろうなぁ。それを仕切るメイド長も。


 咲夜さんにしても美鈴さんにしても、案内をしてくれるのならありがたい。別に待ってても構わないのは本当だが。


 咲夜さんに招かれたとはいえ、急な話ではあったから申し訳なく思ってしまう。



「いや、別に大丈夫ですよ?美鈴さんの邪魔しちゃ悪いし、待ってますって。」



「そう言ってくれる人を、はいそうですかって待たせる訳にはいかないのよ。紅魔館のメイド長としてね。いいから美鈴、頼んだわ。」



 申し訳なさが倍増した。メイドとして完璧と言うか、瀟洒と言うか…


 伊達にこんな大きな館のメイド長を勤めてはいないということか。



「了解です。行ってらっしゃい咲夜さん。」



「それじゃあお言葉に甘えて…頑張ってくださいね。」



「本当ごめんね幽透。また後でゆっくりお茶でもしながらお話しましょう。それじゃ。」



 先程の幽香さんのように小さく手を振って、その場から消えた。比喩でもなんでもなく、消えたのだ。



「……………へ?」



 この前の幽香さんみたいに見えない速度で移動した訳でもない、後ろにもいない。


 完全に消えた…?本物の瞬間移動ってやつか…!?



「それじゃあ私達も行きましょうか……幽透さん?」



 美鈴さんは普通な反応だ。紅魔館では咲夜さんが消えるのが日常なのだろうか。



「…い、今、咲夜さん消えませんでした…?」



「あぁ、そっか、初見ですもんね。あれは咲夜さんの能力、『時間を操る程度の能力』によるものです。」



 これまたぶっ飛んだ能力が出てきたものだ。時間を止めて移動した後に動かしたから僕には消えたように見えたのか。


 というか、時間系の能力って結構ぶっ壊れ能力じゃないのか?何をしても止められてしまいそうだが…



「やっべぇ能力持ってるんですね…」



「えぇ。人の域を完全に逸脱した能力です。努力で身に付くものでも無いですし。さぁ、行きましょうか。」



 歩き出した美鈴さんの後に続く。門から館の玄関口まで結構な距離がある。


 それにしても、能力によって格差が結構あるような…幽香さんの能力は素敵だけど、時間と花とでは実用性も違うだろうし…


 有用な能力には相応のデメリットがあるのだろうか?その辺はまだ分からないが…



「さぁ、どうぞ。足元にお気を付けください。」



「うおぉ……広すぎる…!」



 これがエントランスの広さか…!?これだけでも神社と同じくらい広いかもしれない…


 よく見てみると背中から半透明の羽を生やした子供…のような子達がハタキを持って掃除をしていた。


 こんなに広いんだ、咲夜さんだけじゃとても追い付かないんだろう。



「ごめんなさい美鈴さん。案内されても絶対覚えられない…」



「ハハ、仕方ないですよ。また紅魔館にいらした時は幽透さんの行きたい所に随時案内しますから。」



 咲夜さんや美鈴さんはこんなに広い館の内部まで完璧に把握してるのだろうか…慣れって恐ろしい。


 今のところは歓迎されているようだし、またちょくちょく遊びに来させてもらおう。



「ありがとうございます…」



「折角の案内だし…ちょっとくらいサボってもバレないですよね。幽透さん、冷たいジュースでも飲みませんか?」



 いきなり来ましたサボり魔宣言。咲夜さんが言ってたことは本当なのかもしれない…


 ま、まぁ外は暑いし、熱中症にでもなったら大変だ。妖怪に熱中症って概念があるのかは謎だけど…


 いや、そもそも美鈴さんが妖怪だとは限らないし…もういいや、僕もジュース飲みたい。



「いいですねぇ。いい天気ですし、こういう日に飲む冷たいジュースは美味しいですよね。」



「お、分かってますね幽透さん。ちなみに咲夜さんには…」



「分かってますよ。僕は美鈴さんの仕事ぶりを監視してる訳じゃないし、人間、息抜きも必要です。」



 というか、こんな平和そうな幻想郷に門番って必要なのだろうか?


 紅魔館の住人として外部とのコミニュケーションをとるのが本当の役目だったり…?



「案内は真面目にやるんで、そこは心配しないでくださいね。門番なんて言ってもそもそも人なんて滅多に来ないし、誰かと話す時間が恋しくて…」



 違った、ただの寂しがり屋だった。一人でじっと構えてるのも疲れるだろうし、仕方ない気もするけど。



「あぁ…人里でサボってたのもそれが理由…」



「サボってませんって…じゃあ幽透さんは子供達の笑顔を無視して帰宅しろって言うんですか?」



「それは、まぁ…そんなこと言えませんけど…」



「でしょう?頼まれた物はしっかり買ってきたし、お使いそのものをサボってた訳じゃありませんから。」



 そう言われると別にサボりでもないような気がしてくる。合間合間の休憩…と言った感じだろうか。


 何にしても、仕事仕事ってガチガチに堅い人よりはこちらとしても接しやすいし、助かるけど。



「分かりましたよ、そういう事にしておきます。僕は美鈴さんみたいな人好きですし。」



「それは告白と捉えてよろしいのですか?」



 えぇ…そりゃ美鈴さんだって優しそうだし、美人だし、好きになる要素てんこ盛りだけども…僕には幽香さんがいる訳で…



「よくないです。人として好きという意味なんです。」



「フフッ…冗談ですよ。ささ、このキッチンの冷蔵庫に私の取っておきのジュースが…」



 幻想郷の女性は基本的に僕をからかってくる。そう心に刻み、来たる次の攻撃に備えるのであった。

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