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14話 男の子なんだもん。

「あ、幽香さん、あの湖ですか?」



 幽香さんに恥ずかしい宣言をかまして暫く飛んでいたら太陽の光がキラキラと反射している綺麗な湖に着いた。


 もちろんお姫様抱っこは継続中だ。誰にも会わなくて良かったと思う。



「そうそう。その辺に降りちゃって。」



 幽香さんに極力振動が伝わらないように出来るだけゆっくり湖畔に着地する。


 近くで見るとまた広大だ。周りの木々の木漏れ日も相まって神秘的に見える。



「よっと…はい、ゆっくり降りてくださいね。」



 幽香さんの足を支えてる手をゆっくり下げ、足が地面に着いてから背中を支えながらしっかりと立たせる。


 それにしても本当に軽かった。いくら幽香さんが軽くても少しくらい疲れるかと思ったがそんなことは無く、むしろ心地よいくらいだった。



「フフッ、ありがと。大丈夫だった?」



「全然大丈夫ですよ。帰りもどうですか?」



「あら、いいの?それなら甘えようかしら。」



 合法的に至近距離で幽香さんの顔を見れるし、触っていいんだし、役得でしかない。


 むしろこちらからお願いしたいくらいだ。



「了解です。それにしても綺麗な湖ですね。」



「そうでしょ?フフッ…ちょっぴり眩しいわね。」



 湖の反射に照らされる幽香さんはやはり美しい。いつも輝いている笑顔が尚更綺麗に見える。



「ですねぇ。本当…キラキラしてますよ。」



「あ、幽透幽透!足だけ水に入れましょうよ。きっと冷たくて気持ちいいわよ。」



 そう言いつつ、幽香さんは既に靴下を脱いで素足になろうとしていた。


 ただ靴下を脱ぐだけなのにどうしてこうも目を奪われてしまうのだろう。


 答えは簡単だ。幽香さんがエロいのが悪い。なんなの?幽香さんってフェチ製造機なの?困るんだけど?



「あ、幽透…またスケベな目で見てたでしょ…?」



 バレてしまった。良くないとは思うけど見てしまうんだもの、仕方ないね。


 僕も僕で誤魔化すように見ればいいものを、食い入るように見てるし、バレて当然かもしれない。



「見てませんって…んで、冷たいですか?」



「誤魔化すの下手ねぇ。ん…んんっ…冷たっ…!」



 最早呆れられてる可能性がある。手を出すと宣言してしまったからなのか、僕も隠す気があんまりない。


 幽香さんを不快にさせない程度にしておかなければ。



「ハハハ…んじゃ僕も…」



 幽香さんの隣に腰掛け、足を湖にそっと入れる。


 確かに冷たい。日に照らされているからなのか、余計に冷たく感じる。



「はぁ…気持ちいいわね。」



「そうですね。来て良かったです。」



「ふぁ……こうやって、自然に囲まれて過ごす時間が凄い好きなのよ。」



 そう言って幽香さんはゴロンと寝転んでしまった。青空の下、冷たい湖に足を入れ、木漏れ日の差し込む場所で寝るのは気持ちいいに決まってる。


 僕も幽香さんの真似をして寝転がってみる。視界が木々と空のみになる。


 幻想郷の空は美しい。広大と言うか、紫さんが言っていたように全てを受け入れてくれると言うか…とにかく清々しい気持ちになれる。



「幽香さん、服汚れちゃいますよ?あぁ…でも、分かる気がする…そんな事気にならないくらい…気持ちいい。」



「結界貼ってるから汚れないけど。気持ちいいでしょ?」



 いつの間に結界を…僕に出来ない事をサラッとやってのけるところがまた素敵だ。


 可愛いし、守りたいって思うけど、実際のところはめっちゃ強くて、僕なんかまだ足元にも及ばないくらいなんだ。


 たまに、ごく稀にだけど、幽香さんが可愛すぎて忘れてしまう時がある。



「そういう事は先に言ってくださいよ。そう言えば、幽香さんはよくここに来るんですか?」



「そうね。気分を変えたい時とか、本を読む時とか…物思いにふける時とか。結構来るわ。」



 確かにそういった時にはピッタリの場所だろう。もう少し涼しくなったら僕も本を持ってここに来よう。



「いいですねぇ…僕も気に入ったし、また来ましょうよ。」



「まぁそうね。この近くには私も定期的に……って、丁度いいタイミングだこと。」



 そう言って寝転がりながら手を振る幽香さん。その手の先には銀髪のメイドさんがいた。


 いきなり知らない人がいたから僕はガバっと身を起こす。幽香さんは寝たままだけど、それが許される間柄なのだろうか。



「あら、幽香じゃない。ここ最近来ないと思ってたら…男なんてつくったの?」



「人聞き悪いわよ咲夜。この子は最近幻想入りした子でね、私と一緒に住んでるの。」



 このメイドさんは咲夜という名前らしい。それにしても、霊夢が巫女服で、咲夜さんがメイド服?和洋折衷とはこの事を指すのだろうか。



「あ、風見幽透です…二週間前から幽香さんの所でお世話になってて…えっと、よろしくお願いします…咲夜さん。」



「よろしくね幽透。私は十六夜咲夜、まぁ好きに呼んでくれればいいわ。」



 チラリと見えてしまったが、膝上…つまり太ももにナイフの様な物が。


 そうか、僕は勘違いをしていた。肉弾戦と言われて、徒手相手だと思い続けてきたけど、そりゃ武器を使う人だっているに決まってる。ルールなんてないんだから。



「それで咲夜はこんな所で何してるのかしら?館の仕事はいいの?」



「あぁ、そうそう。ウチの門番見なかった?人里にお使いに行ってもらったんだけど、中々帰ってこないのよ。」



 館、門番、メイド。確か…木々に隠れてあまり見えなかったが、大きな建物の屋根らしきものが見えた気がする。


 そこが館で、そこで働いてる人なのだろうか。それにしても門番さんが帰ってこないのは不安だろうな。



「僕らは飛んで来ましたけど誰ともすれ違いませんでしたよ。心配ですし、僕探すの手伝いましょうか?」



「「いや、別にいいわよ。」」



 二人同時に言われた。門番さんが今のやり取りを聞いたら悲しむと思うが…



「えっ!?な、なんで…?」



「どうせどっかでサボってるだけだもの。別に急なお使いでもないし、気にするだけ無駄よ。」



「そんな事言って、咲夜は心配だから探しに来たんじゃないの?素直になりなさいよ。」



 幽香さんにも探さなくていいって言われたんだけど…ま、まぁ二人がそう言うならいいか。


 門番さんはサボりの常習犯みたいだし、心配し過ぎなのかもしれない。



「あまりに遅ければ心配するけど、これくらいなら普通よ。」



「ふぅん、メイド長も大変ねぇ。」



「もう慣れたわ。あ、そうだ、幽香と幽透ってこの後暇だったりする?」



 デート中ではあるけど、予定と言う予定はない。せいぜい夕飯の買い出しをしないといけないくらいか。



「暇だけど…見ての通りデート中なのよ?その邪魔をするだけの用事?」



「ちゃっかりしてるわね。庭の植物が最近元気が無くて…また幽香に見てもらおうと思ってたのよ。」



 そう言えば定期的に来るって言ってたし、もしかしたら館にも顔を出していたのかもしれない。


 花を操るとは聞いたけど、花だけでなく植物だったら関係なく操れるのだろうか。



「なるほどね。植物にデートは関係ないし、行きましょうか。幽透は大丈夫?」



「大丈夫ですよ。思いがけない出会いがありそうですね。」



「幽香に見てもらってる間は私が館を案内するわ。個性的だけど悪い人はいないから安心して。」



 個性的…か。幻想郷に個性の無い人なんていないと思うけど、新たな出会いは素直に楽しみだ。



「是非よろしくお願いします。」



「じゃあ行きましょうか。幽透、持ってきてたタオル出して。」



 水面を揺らしながら抜かれる幽香さんの脚が水滴でキラキラ輝いている。


 白く透き通るような美しさを持つ脚をコロコロと滑るように水滴が垂れていく。



「はいはい、えっと…あった、どうぞ。」



「幽透って私の脚好きよねぇ。はい、幽透の脚も拭いてあげるから出して。行きに抱っこしてくれたお礼。」



 またバレてる。えぇ…そんなに見てた?一応バレないように意識してたのに…


 それに幽香さんが僕の脚を拭いてくれるって…天国だ。



「……見てません。」



「フフッ…随分と仲良しなのね。」



 咲夜さんの言葉にニヤケながら頷いた。初対面の人にもそう言われると本当に仲良しなんだと思える。


 今だって幽香さんに拭いてもらってるだけなのに色々な感情が湧き出てくる。役得に役得を重ねている気分だ。


 まぁ幽香さんが屈むように拭くし、ブラウスのボタンの上を外してるからチラッと見えるんだよね、何とは言わないけどさ。脚や瞳とかも見ちゃうのに胸なんて見ない訳ないんだよなぁ。



「…えっち。」



「見てませんってば!」



 気を付けないと変態の称号を与えられてしまいそうだ。

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