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13話 幽透、初めてのデート。

「幽透、今日は私とデートしましょ。」



 突然の事だった。僕が幻想郷に来てからもう二週間になるが、相変わらず幽香さんは思いがけない事を言ってくる。


 この前は僕がお風呂入ってる時に乱入しようとしてきたり、寝相が悪いフリして布団に潜り込んで来たり。


 今日のコレと言い、とにかく僕は弄ばれているようだ。そんな生活が随分と気に入ってる僕も僕だけど。



「え…っと…?でーと…って…あの?」



「他に何があるのよ。」



「ぼ、僕と…幽香さんが…?」



「他に誰がいるのよ。」



 どうやらマジっぽい。いつもは家の中だけだったから良かったけど、こんなの他の人に見られたら恥ずかしいじゃ済まないぞ…


 ただ出かけるだけなら気にならないが、幽香さんの事だ、僕をからかう為に色々な策を練っている事だろう。気を付けようもないが…用心しなければ。



「いませんね…分かりましたよ、それで何処に?」



「幻想郷には大きな湖があってね、幽透の飛行練習がてら、涼みにでも行こうかなって。」



 この二週間で僕は自由自在に飛べるようになった。スピードはそんなに出せないが、それでも歩くよりは断然速い。


 確かに暑いし、水辺のヒンヤリした空気を味わうのも乙なモノかもしれないな。


 それに、水面が反射する光に当てられた幽香さん、絶対に綺麗だし。



「いいですね。行きましょうよ。」



「決まりね。それじゃあ水着取ってくるから待ってて。」



「…み、水着?お、泳ぐんですか!?」



 そんなのとんでもない!水着だぞ!?これ以上僕に刺激を与えないでくれぇ!


 見たい気持ちも充分あるが、それ以上に理性がブレーキを掛けてくる。賢明な判断だと自分を褒めたい。



「冗談よ。霊夢や霊華も誘った時に泳ぐとするわ。」



 余計な心配が増えた…いや、霊夢や霊華さんのスタイルとか知らんよ?知らんけどさ、良いに決まってるじゃん。


 それを無意識に見せびらかすようにするんでしょ?無理無理、本当に理性がぶっ飛ぶって。



「それも冗談であって欲しいですねぇ。」



「フフッ、それじゃあ行きましょうか。」



 僕の懇願は綺麗に避けられ、幽香さんに手を取られるがまま縁側から飛び立った。



「相変わらず軽々と僕を持ち上げますね…」



「これくらい普通よ。幽透こそ、随分スムーズに飛べるようになったじゃないの。」



 血のにじむ…程の特訓はしてないが、少しずつ身体の自由が効くのを実感するのはいい気分だった。


 それに幽香さんが手取り足取り、懇切丁寧に教えてくれたおかげだろう。



「毎日付き合ってもらってるし…本当に幽香さんのおかげですよ。ありがとうございます。」



「センスがいいのよ。もう少し躓くと思ってたんだけど。」



「いやぁ…まだ分かんないですよ?」



 もしかしたらこっから全然上手くいかない時が来るかもしれないし、油断、ダメ絶対。



「その時はその時よ。躓かないといけない訳じゃないし、躓いたら伸び代だと思えばいいわ。」



 僕としても躓いた程度で諦める訳が無いし、心配だとも思ってはないが、自分の苦手は早めに発見しておきたいものだ。


 もちろん何にも躓くことなくスムーズに出来るようになるのならそれに越したことはないが。



「それもそうですね。その時はトコトン付き合ってくださいよ?」



「私としても幽透がどこまで強くなれるのか興味あるし、私も一度口にした事を翻すのは好きじゃないの。」



 魔理沙の言った通りだ。幽香さんも真っ直ぐとしていて、曲がったことは嫌いなよう。


 幽香さんは美しいから、真っ直ぐってより、凛としているって感じだが。



「頼もしい限りです。」



「その向上心はいいけど…幽透、今日はデートよ?強くなるだけじゃあ…モテやしないわね。」



 ジト目で言われてしまった。冗談なのかと思っていたが、幽香さんは本気だったらしい。


 そもそもデートなんてした事…無いだろうし、どうしたらいいか分からないけど…


 ここまで言われて何もしない…それが一番の悪手なのは分かってる。それなら何をするべきなのか…


 今の僕に出来ること、それは…



「それじゃあ…失礼しますよ…っと。」



「きゃっ…!フフッ、ね?重くないでしょ?」



 幽香さんをお姫様抱っこ。初めて博麗神社に行った時は僕が幽香さんにされたのだから驚いたものだ。


 いつか幽香さんしてやろうと密かに思っていたのだ。予想はしていたが、やはり軽いし、柔らかい。


 フワッとしてるのだ。人を抱っこした感想としてはおかしいかもしれないが、それ以外の表現が思い付かない。



「まぁ分かってはいましたよ。これからは僕なんかで良ければいつでもどうぞ。」



「まぁ…って随分と素っ気ないわね。何よ、私を抱っこしてても面白くないっての?」



「見た目に反してめっちゃ昂ってますよ。ほら…理性的な意味でこうしないとヤバいと言うか…」



 僕が変態なのが悪いかもしれないが、幽香さんもめっちゃ良い匂いするのだ。


 顔も近いし、ちょっと良くないですね。本当、色々と。


 幽香さんも幽香さんでめっちゃ見てくるし、少し目を合わせるだけでその瞳に吸い込まれそうなのだ。



「幽透って案外スケベよね。隠そうとしてるのか微妙なラインだし。」



「幽香さんは自分がどれだけ魅力的なのか自覚した方がいいと思うんです。」



 僕は変態でも構わない。ただ、僕を変態たらしめたのは一緒にいる幽香さんだと思うのだ。


 そもそも、この人を見て何も思うなと?それは無理だ、人間として、生物として常識を疑うぞ?



「まぁお互い子供じゃないものね。直接言わないと伝わらない訳でもないし。」



 そりゃそうなのかもしれないけど、それを直接言いたいのが男の面倒なところなんだよなぁ…


 何のために魔理沙や霊華さんに口止めしたのか分からなくなってしまった。



「…はぁ。結局本人に伝わる結果になるんだもんなぁ…いいですか幽香さん?」



「ん?何の事?」



 キョトンとした顔の幽香さんを見ながら少し息を整える。流石に少しだけ緊張する。まぁ当然か、僕は今から普通に恥ずかしい事を言うのだから。



「僕が幽香さんにカッコつけれるようになるまで待っててください。その時、僕は絶対に幽香さんに手を出します。」



 少し間を置いた後、幽香さんのキョトン顔がちょっぴり赤みを帯びる。意外と脈アリなのかもしれない。


 幽香さんはからかったつもりなのかもしれないが、僕としては幽香さんと近付くチャンスを逃すなんて、それこそ冗談ではない。


 ただでさえ初日から散々助けられて、抱き着いて涙まで流したのだ、かける恥はトコトンかけばいい。


 それにこの二週間、僕は幽香さんに惹かれっぱなしだった。期間じゃなくて時間だと霊夢に言われたが本当にその通りだと思う。



「へ、へぇ…で、出来るのかしら?」



「出来ますよ。と言うか、出来るまで絶対諦めません。」



 強くなるとか、魔力を上手く使うとかはセンスや才能と言った努力だけじゃどうにもならない事があるかもしれないが、こと恋愛に置いてはそんなことは無いだろう。


 そもそも初期の関係値が結構高め…だと思うし、幽香さんを手放すなんて絶対に無理。まだ僕のじゃないけど。



「そ、そう。ま、まぁ?私を自分のにしたかったら死ぬ気で頑張るのね!」



 僕の胸で顔を隠すようにそっぽ向いてしまった。幽香さんの吐息でじんわり暖かい。


 フフッ…いつものお返しだ。幽香さんも照れたりするんだな。本当にどこまでも可愛らしい人だよ。


 特訓も恋愛も、油断なんてしちゃいけないけど、少しだけ幽香さんとの心の距離が縮まった…そんな気がする。

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