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12話 自分、負けず嫌いなんで。

 幽香さんに圧倒的な差を見せつけられた後、どうもスッキリしない僕はこんなことを聞いてみた。



「幽香さん、魔力を使った遠距離攻撃って弾幕しかないんですか?」



 得意不得意があるって幽香さんも霊夢も言ってたし、もしかしたら肉弾戦より得意なものがあるかもしれない。


 それに、僕が何を出来るのか把握しておきたい。弾幕も撃てたし、他にもやれることはやりたい。



「弾幕なんてほんの一例に過ぎないわ。魔力を放出すればどんな攻撃も出来るもの。」



「それなら…ビームみたいな、レーザーみたいなのって出せるんですか?」



「出せるわよ。見せてあげましょうか?」



 ワックワクで頷く。そんなの出せるなんて男の夢だろう。見るだけじゃ足りない、僕も撃ちたい!



「フフッ、子供ね。行くわよ…!」



 幽香さんの手元が淡く光ってる…!?僕でも分かる、とんでもない魔力が一点に集中している。



「マスタースパーク!!」



 空にかざした手から極太のレーザーみたいなものが風を切る轟音と共に放たれる。


 ほんの数秒で消えたレーザーの跡にはまだ魔力が残ってるように光っている。稲光みたいでカッコイイ。



「…ま、マジかぁ…!!」



「これ、魔理沙に教えた技なのよ。だから幽透にも使えると思うわ。」



 ちょっと待て、魔理沙もこんなの撃てるのか!?というかそういう面でも師匠なんだな…



「だといいんですけどねぇ…イメージとしては魔力を真っ直ぐぶっぱなす感じでいいんですか?」



「えぇ。まぁやってみなさい。話はそこからよ。」



 真っ直ぐ、愚直、幻想郷に来てから好きになった言葉だ。向日葵のように生きるって決めた僕にピッタリじゃないか。



「よっしゃ、やってみますか!えぇと……」


 弾幕を放った時のイメージが一番近いか?持てる限りの魔力を全部手に集中…!


 まだ僅かに足や胸の辺りに魔力が残っている。落ち着け、焦ったら失敗するぞ…


 手に意識を向けながらも深呼吸して、鼓動を落ち着かせる。ゆっくり、巡る魔力を手に持っていくんだ。



「…いい感じだ。もう少し…!」



 少しだけだが手が光を帯びる。魔力が集まってきた証拠だ。


 これを更に圧縮させて、密度を上げる。そして再度深呼吸をして魔力を供給…



「嘘でしょ…!?まさかここまで…」



 数回繰り返すと幽香さんの時と同じくらいに強く光だした。これ以上強くしようとすると溜めた魔力が抜け出してしまいそうだ。


 そろそろいいだろう。後はこれを真っ直ぐ、どこまでも届くようにぶっぱなすだけだ!



「いっけぇぇえええ!」



 勢いよく放たれたレーザーは幽香さんのモノと遜色ない程大きく、一直線に空に消えていった。


 震える自分の手を見ると、先程のような稲光がバチバチと小さい音を立てて光っていた。



「ハ、ハハハ…!で、出来た…!ゆ、幽香さん…!」



「お、驚いたわ…まさか私のマスタースパークに引けを取らない魔砲なんて…」



 幽香さんの驚いた表情を見るに、想像以上のレーザー…魔砲を放てたようだ。


 まぁ同じくらい僕自身驚いているが。驚きと嬉しさの余り、ついつい大声になってしまう。



「幽香さん!み、見ててくれましたか!?ぼ、僕、撃てましたよ!」



「見てたわよ…ちゃんと。凄いわ幽透…正直見くびってた。」



「いや、僕も驚いてますよ…まさかイメージ通りにいくなんて…」



 魔力の最大値が少ないことを何とか出来ないかと思ってやってみたのだが、思った以上の結果だ。


 身体の魔力を手に集め、空になったところを回復、再び手に集め…を繰り返したら最大値を超える量の魔力をその瞬間だけ維持できた。



「威力の無い見た目だけの魔砲は出ると思ったけど、中々高威力な魔砲…しかもマスタースパークを一回見ただけで…」



「へへへ、なんか…やってやったぜ感凄いです。」



 まぁこんな『溜め』のいる技が実用的かと言われたら微妙かもしれないけど、自分のイメージ通りに魔力を操れた事実が大事だ。



「やっぱり…面白い子だわ。もしかしたら本当に霊華を越える才能があるのかもね…」



「大袈裟ですよ。才能なんて無くたって努力で何とかしてみせますって。」



 それに、現状魔砲が撃てただけだ。肉弾戦がメインと言われたのにそっちはまだまだだし、喜んでる暇は無い。


 さっきの結界を破れなかった事は正直ショックでもあった。ガラスのようだったし、ヒビくらいは入ると思ったから尚更だ。


 もしかしたら…今の魔砲ならいけたのか…?また試させてもらうとしよう。



「フフッ…才能なんて言葉で片付けるのは失礼だったかしら。頑張ってね、幽透。」



「天才型ってより、努力の天才でありたいですね…」



 天才…つまりセンスがあるに越したことはないが、そうだとしてもそれにおごることなく努力を続けなければ。


 そもそも自分の事を天才だと思って特訓する奴なんていないとは思うが。



「それはやる気次第ってところだけどね。私も付き合う訳だし、一人でがむしゃらにやるよりは効率よく鍛えられるはずよ。」



「助かりますよ、まだまだよろしくお願いしますね。」



「えぇ、こちらこそ。それじゃあお茶にしましょうか。今日は終わりよ。」



「えっ…?」



 あまりに唐突な終わりを告げられて少し驚いてしまう。


 もう終わり?と言うのが正直な感想だ。昨日だって弾幕一発撃っただけだし、魔砲に関してもまだまだしっくり来てない事もある。



「あの魔砲を撃っておいて魔力がまだ残っているのは賞賛するけど、全快じゃないでしょ?」



「確かにそうですけど…戦いの時に常に満タンって訳じゃないですよね?」



 むしろ消耗して、魔力が少ない時の立ち回りの方が重要になるんじゃないのか…?



「それは、しっかり特訓した後の話よ。今無理にやっても、魔力の少ない身体に慣れてしまう。それじゃあ最大値を増やすのに時間がかかるわ。」



 この消耗してる状態を維持しようとしてしまうのか…変なところで順応するのやめて欲しいなぁ…


 まぁ、そうは言っても強くなる弊害になり得るならやりたくはない。物足りなさはあるが、明日もある。ゆっくり、確実に力を付けていこう。



「…了解です。」



「そんな顔しないで?身体を追い込んだらしっかり休む。これも立派な特訓よ?」



「身体を追い込んだ自覚がないから困ってるんですけどね。」



「運動とは違って目に見える疲労ってのは分かりずらいかもしれない。けど、魔力は置き換えると生命力なの。それを好き勝手使うんだから充分追い込んでると言えるわ。」



 魔力は生命力…か。だから鼓動に合わせて…とか言われたんだな。


 だったら尚更無理をする訳にはいかない。序盤で無理をしたら後々しなくてもいい苦労をすることになりそうだ。



「って事は…魔力を使う度に寿命を削ってるってことですか?」



「あぁ、幻想郷に寿命って概念は無いわ。人間は別だけど、魔力を自在に操れる私達は身体の成長を放棄する代わりに寿命も無いの。」



 マジかよ。いや、皆綺麗だし、霊華さんとか本当にお母さん?って言いたくなるほどだ。


 だから、もしかしたら…?と思ってはいたが、本当にその通りだと告げられると流石に驚く。



「え、そ、それって僕も例外じゃないんですかね?」



「えぇ。寿命があるとしたら昨日弾幕を撃った時に死んでるでしょうね。そもそも撃てないでしょうし。」



 危ねぇ…幽香さんを守るとか以前の問題で引っかかる可能性もあったのか…


 本当…我ながらどんな確率を乗り越えているのやら…



「そ、そうなんですね。よ、良かったです。幽香さん?もう休みませんか…?」



 寿命が無いにしても、死んでいたかも…と言う実感が湧くと多少なりとも怖い。MP的な扱いかと思ってきたが、そうでは無いようだし、乱用はしない方が良さそうだ。



「フフッ、そうしましょう。幽透、紅茶は好き?」



「あ、はい。好き…だと思います。」



「それは良かった。この前紫に貰ったお茶菓子があるのよ、一緒に食べましょ?」



「いいですねぇ!んじゃ僕がお茶淹れますよ。」



 こうして僕の初めての特訓は終わった。色々知る事も出来て、ある程度自分の力量も測れたし、今は充分だろう。


 とりあえず今の時点で幽香さんを驚かすだけの魔砲は撃てる訳だし、毎日しっかり特訓していけばコツも掴めると思う。


 後は幽香さんの結界を殴って破る力をどうやってコントロールするかだけど…これはじっくりと進めるしかなさそうだ。


 一気に魔力が増えるようなキッカケみたいなのがあればいいんだけど。

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