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10話 白黒の魔法使い。

「ふぅ……あまりに怒涛の展開で疲れた…」



 霊華さんとご飯を作り、皆を起こしてワイワイ僕はイジられながらご飯を食べた。


 暫く食後の休憩をしていると霊夢が甘い物が食べたいと言うので霊華さんと幽香さんを連れて人里に行ってしまった。


 つまりは僕と魔理沙はお留守番という訳だ。洗い物を済ませ、僕らは縁側で休憩している。


 どうでもいいけど縁側ってどうしてこんなにも落ち着くんだろう…不思議だ。



「ハハハ…昨日が初日なんだもんな。でも絶対忘れられない日になったんじゃないか?」



 こういう事を言える辺り魔理沙も素敵だ。まぁ霊夢の友達だし、後ろ向きな性格では無いだろうけど。



「そうだね。おかげで楽しめたよ。」



「まぁ私はあんまり覚えてないんだけどな…」



 僕は霊夢とガブガブ飲んでいたら魔理沙と幽香さんがどんな話をしてどれくらい飲んでいたのか把握してないんだけど、とりあえず魔理沙以外の人の記憶はバッチリだった。


 つまり、霊夢も昨日の話はキチンと覚えてるみたいで、起きた時にコッソリと『昨日は楽しかったわね』なんて言っていた。


 昨日と同じように顔を近付けられたからついつい思い出してしまった。これが健全な男子の反応だ。僕は悪くない。


 後やっぱりいい匂いする。これも不思議だ。生きてく上で絶対解明できない謎と言っていい。



「忘れた方がいい事もあるよ、うん。」



「ん…?幽透は何か忘れたかったことあるのか?」



「忘れたかったと言うか…恥ずかしいから覚えて欲しくなかったって感じかな。」



「酒の場だもんなぁ。そういうことの一つや二つ、あるもんじゃないか?」



 意外と大人の対応なんだな。魔理沙が一番活発と言うか元気っ子と言うか…そんなイメージなのに。


 まぁ魔理沙の様な美少女からそんな言葉が出てくる事に対する違和感は半端じゃないが。



「僕は幻想郷でのお酒って初めてだから分かんないけどさ、いつもあんな感じなの?」



「いやぁ…そんなことないぜ?特に霊夢は周りの騒がしいヤツらを肴にして飲んでるイメージだしな。」



「あぁ、なんか昨日も言ってたねそれ。霊華さんも言ってたし。」



 多分幽香さんに聞いても似たような解答になるんだろう。それくらい昨日の霊夢が珍しかったって事だ。


 霊華さんが言ってたように、僕との出会いが嬉しくて…だったら僕もめっちゃ嬉しいけど。



「楽しかったんだと思う。あんまり幽透と話せなかったのは心残りだけどな。」



「別にこうして話してるんだし、飲み会なんてまだいくらでもあるんでしょ?」



 飲みたくなったら飲む!みたいなスタイルっぽいし。昨日の一回こっきりって訳じゃないだろう。



「そうなんだけどな。折角幽透の歓迎会だったのにあんまりもてなせなかったなって。」



 いい子だぁ…この子めっちゃいい子…!途中参加なのにそんなにも考えてくれてるなんて…


 もうそもそも僕の歓迎会なんて忘れてたくらいだし。多分霊夢と霊華さんは忘れてる。



「いやいや、それこそ気にしないでよ。その気持ちだけで充分嬉しいからさ。」



「また今度だ。そんな大した事は出来ないけど、何かしらもてなしてやるぜ。」



「…ありがとう。魔理沙は優しいねぇ。」



 霊夢は魔理沙のこう言うところに引っ張られてきたんだろうなぁ。


 でも、昨日幻想入りしたばかりの見知らぬ僕を歓迎してくれて、ここまで言ってくれるのは本当、ありがたい事だ。



「べ、別にそんな事ないぜ。折角出来た友達だし、仲良くしたい気持ちは当たり前だろ?」



「そうだね。皆のおかげで幻想郷でも友達たくさん出来そうな気がするよ。」



 友達たくさん作らないとって歳でもないだろうけど、やっぱり孤独は嫌だし、笑い合える人は多い方がいい。



「幻想郷でもって…幻想入りする前の記憶は無いんだろ?」



「まぁ、そこは気持ちの問題だよ。後ろ向きな気持ちが無くなったって意味。」



「なるほどな。師匠が気に入った理由が分かった気がするぜ。」



 え、何それ。僕も知りたいんだけど…なんなら僕が一番気になってることでもあるし…!


 どういう理由であれ、僕は幽香さんの優しさに甘えさせて貰うしかないんだけど、理由が分かればもっと自分を磨ける気もするし、とにかく知っておきたい。



「え、えっと…魔理沙さん…?良ければその理由ってやつを教えていただけないでしょうか…?」



「幽透ってさ、向日葵…好きか?」



「ひ、向日葵…?う、うん。好きだよ。」



 向日葵と僕、どう関係があるんだろうか…花を操る幽香さんだから、向日葵に僕を重ねたりしたのかな…?



「向日葵ってさ、太陽に向いて咲いて成長するだろ?んで、下を向く時って、種を残す時なんだよな。」



「そうだねぇ、秋頃になると下を向くからちょっと寂しくなったりするよね。」



 夏の間は元気いっぱいに咲いてるから尚更そう思ってしまうのかもしれないけど。どうもしょんぼりしているように見えてしまう。



「それは違うぜ幽透。太陽に向かって成長するのも、下を向いて種を残すのも、全部未来の為なんだ。」



「……なるほどね。」



 素敵な考え方だ。確かに悲しく見える時もあるかもしれないけど、それは未来を、前をちゃんと見据えてるからこそって事か。


 捉え方一つで随分と印象が変わるものだ。おかげで秋に見る向日葵も楽しく見られるかもしれない。



「傍から見たら記憶もない幽透だけど、幽透なりに前を向いて進もうとしてるだろ?師匠はそこを気に入ったんだと思うぜ。」



「つまり、幽香さんは僕を向日葵のように見ていた…と。」



「あくまで私の想像だけどな。でも、何事も前向きに捉える生き方、私は好きだぜ。」



 僕をそうやって生きたいものだ。それにしても、向日葵の生き方を人に重ねるとは…幽香さんらしい。



「幽香さんみたいな、太陽のような人がいてくれるからこそ出来る生き方だもんね。誰にでも出来ることじゃない。」



「あぁ、でも何を太陽と捉えるかは自由だろ?それこそ師匠を太陽としたらいい。一緒に過ごすんだしな。」



 折角幽香さんと一緒の時間が多くなるんだ。むしろそうしないと失礼かもしれない。


 幽香さんが僕を向日葵と重ねてくれたならそのように真っ直ぐ、堂々と生きてみようか。



「そうだね。僕が幻想入りした時、向日葵畑にいたのはそんな運命だったのかもしれない。愚直に前向きに…頑張ってみるよ。」



「まぁそうは言っても幽透の不安を全部分かってあげられる訳じゃないし、辛い時は素直に頼ってくれ。私で良ければ力になるぜ。」



「…ありがとう魔理沙。」



 本当…皆が皆優しくて困っちゃう。無理してでも頑張らないとって気持ちがドンドン解されて…甘えられる場所があるのって心地いいな。


 こんな美少女達に甘やかされていいものかどうかは置いておいて…



「へへっ、友達だからな。」



「失礼な話だけどさ、魔理沙ってもっと子供っぽいかと思ってたのに…ちゃんと大人の考えだよね……ちょっと泣きそうになったよ…」



「いやお前、本当に失礼だぜ!この野郎!」



 魔理沙は笑いながらパシパシと僕の肩を叩く。こういう所も、魔理沙の素敵なところだよなぁ。


 それこそ皆美しいけど、違った花のようで…個性もあって、見るものを魅了するかのような…そんなイメージを持ってしまう。



「アハハ、ごめんって!悪気はないよ!」



「全く、折角いい話してたのに台無しだぜ!」



「それに関しては本当に嬉しかった。ありがとう魔理沙、僕はいい友達を持ったよ。」



「ん〜?へへへ、そ、そうだろ!?」



 明らかに照れたように笑う魔理沙。霊夢とはまた違った、無邪気な笑顔だ。


 笑顔とか仕草とかは子供みたいな可愛らしさがあるんだけどなぁ……人は見た目じゃないってこった。


 なんて事を思いながら、デザートを買いに行った三人が帰ってくるまでの時間を魔理沙と過ごすのであった。

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