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2 取り巻きのいじめ?

 わたくし公爵令嬢アデラマリス・クレメラが、ケイティ・サブリンさまを暴漢に襲わせたという疑惑は、司会のグレイと生徒会長ナバルコさまによって、事実無根だと速やかに却下された。



「次は、取り巻きを使って危害を加えた件ですが。

 まず、クレメラさまの取り巻きとは、どなたのことでしょう」


 ナバルコさま、すばらしいアシストですわ。

 わたくしに取り巻きなどというものはおりません。あえていうなら、親しいお友達でしょうか。

 みなさま同学年の対等な方々ばかり。下級生はかわいい妹のように親しくしている方々。

 取り巻きなどと、おとしめないでいただきたいわ。



「そこにいるクレオレッタさんもそうよ。生徒会にお手伝いに行くたびに、なんだかんだって嫌味ばかり」

 サブリンさまはあろうことか、台上の生徒会副会長クレオレッタを指さした。そして

「あと、あの人と、あの人、それからあの人」

わたくしのお友達も。


 二年生のサブリンさまが同じ二年生のクレオレッタだけでなく三年生を指さすなどと、そんな失礼なことが通るような学園ではない。

 生徒たちがざわめいた。一年生のいる辺りから悲鳴が上がるのは、恐怖からだろうか。



「食堂でわたしが横を通ったら、足をひっかけて転ばして、わたしはランチをぶちまけたのよ。

 中庭にいたときは、ぶつかってきて、わたしは噴水に落ちたんだから。

 あと、階段から突き落とされたわ」


 生徒会長の隣で、副会長のクレオレッタが小さくため息をついたのが見えた。

 ほんと、ため息もでますわ。あまりにも自分中心で。




「まずはわたくしの嫌味の件ですが」

 クレオレッタは表情を引き締めた。


「生徒会の仲間と言っても、あなたは補佐。意見を聞かれるまでは運営に口を出さないように。

 男子も女子も、基本は家名にさまをつけて呼ぶように。

 べたべたと人の体に触らないように、特に男子に対して」


 ここで、生徒の方々が一斉にサブリンさまを見て、フェルミさまの腕にぶら下がっているのを確認したのは、当然のことですわね。


「言葉遣いは丁寧に。相手が敬語で接しているときは、こちらも敬語を使うべき。特に年上に対しては、砕けた言葉で対応されても許可が出るまでは敬語で接すべき。

 生徒会活動は公のもの。個人的な話題はほどほどに。あくまで公であることを忘れず礼節をもって。

 わたくしが特に何回も口にしたのは、このくらいでしょうか。


 同じ二年生ですが、わたくしは生徒会のメンバー、サブリンさまは補佐。わたくしが指導的立場であるのは、当然です。

 さて、これらが嫌味に当たるのかどうか、ここにいらっしゃる皆様に判断していただければよろしいかしら」


 クレオレッタは台の上から生徒たちを見回しました。


 かすかに微笑みを浮かべて、自分と同等の人たちの賛同を信じているようなその表情、すばらしいわ。

 そう、自分から信頼を示せば、もともと好意をいだいてくれている相手は信頼を返してくれますのよ。



「それでは、生徒会副会長クレオレッタ・バジオーラさまの意見をうかがって、一つでも嫌味だと思われた方は、挙手を願います」

 司会のグレイの声に、誰も手を挙げなかった。



 やはり、この学園に入学する方々は常識をわきまえてらっしゃいますわね。新入生の下位貴族や平民の方々も、この半年間でしっかりと学んでくださいました。

 非常識なのは、あの御三方くらい。


 生徒の皆さまの反応に、わたくしは分かっていたこととはいえ、頬が緩んだ。



「いないようですね。それでは、バジオーラさまの嫌味の件に関しては、却下します。


 ちなみに、万が一にも誤解をする方がいないように確認します。

 生徒会補佐は自薦で、それを生徒会が承認する形をとります。それまでの言動によほどの問題がなければ、否認はありません。

 これで間違いありませんね、生徒会長」


「ああ、間違いない。

 補足すれば、補佐は例年一年生から募る。この総会で次期生徒会が承認される時期に合わせて一回、新入生を迎えて落ち着いた頃に一回。結果として新年度には数ヶ月活動をした二年生と新しい一年生の補佐がいることになる。

 そこにいるサブリンさまは例外だったが、編入生ということで強い希望もあり、特例として一年生と一緒に補佐に入ることを認めた。


 一年生の諸君、君らが生徒会に直接関わる機会はこれが最後だ。

 生徒会メンバーに選ばれなかったものも参加しようと考えなかったものも、やる気があるのなら補佐として関わって欲しい」



 ナバルコさま、次期生徒会メンバーのために素晴らしい宣伝です。

 生徒会の仕事、とくに雑用は山ほどありますものね。補佐が多くいれば、それらを肩代わりしてもらって、本来力をいれるべき仕事に取り組むことができますわ。



 わたくしは、自分が生徒会副会長として働いていた一年前を、しみじみと思い出していました。

 そのときも、隣にはデュドリックがいましたね。


 わたくしは、ちらりとデュドリックを見上げました。その微かな気配に、デュドリックは視線を返すことで答えてくれました。




 正面の離れたところから、気分の悪い視線が突き刺さります。

 サブリンさまがこちら、いえわたくしを睨んでいます。


 そういえば、なぜサブリンさまは、わたくしに対してこのような悪意を向けるのでしょう。このような公の場を借りてまでわたくしをいじめの首謀者だと貶めるのには、どんな意味があるのでしょう。


お読みいただきありがとうございます。


さっそくのブックマーク登録、評価、小躍りしてよろこんでいます。

ありがとうございます。


取り巻き? の嫌味についても却下されました。

生徒会副会長クレオッタを、アデラマリスは妹のように可愛がっています。


ちなみに、地の文でアデラマリスが呼び捨てていたり愛称で呼んでいる人たちは、彼女にとって特に親しい人たちです。



明日も更新します。

読んでいただけると嬉しいです。


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