無温の時間
たまに、気温を感じない時間がある。
特に決まった温度はないんだけど、感じないということは寒かったり、暑かったりはしない。
だいたい13℃から23℃ぐらいといった印象。
もちろん、春と秋にはなりやすいが、意外なことに夏と冬にもそれは訪れる。
ようは、コンデション次第なので、季節はそんなに関係ない。
夏の23℃は快適だし、冬の13℃も快適だ。
また、直射日光に当たらないことは必須。
太陽は、どの季節でも熱を与えてくるからだ。
そして、風は気温の感じ方に拍車をかける。
冬に風が吹くと寒さが増し、夏に風が吹くと涼しくなる。本当に暑い時は暑さが増す。サウナを思い浮かべると分かりやすいだろう。
最近では一月も終盤だったころか。
確かその日は13℃以上はあって、曇りではなかったが、太陽も直接は現れていなかった。
ヒートテックの上にパーカーを着て自転車に乗った。
すると、何か違和感を感じ始めた。何かがおかしい、と。
そして自転車に乗ったまま、大きめの橋を渡るのだが、ここは風が強いことが多く、冬は特に寒い。
その日も風は吹いていた。そこで違和感の正体気づく。
あ、いま気温を感じてない。
柔らかい風が体を撫でているのだが、そこには風が吹いているという感触のみが存在し、心地よいとか、寒いといった感覚は一切ない。
しかも、その風の感覚も鈍く感じる。
そう。気温を感じてないということは、不快感が一切ないという点で快適なのだが、実際には快適という感覚すらも覚えない。
また太陽の暖かさも感じない。外は明るかったが、どこを見渡しても太陽の姿は無かった。
そういった日は、自我が薄い。
気温を一切感じないという考えにくいことを体験して新鮮味を感じている上に、感じないということから現実味が薄い。
とてもリアルな夢を見ているんじゃないかと思う。
自分が動いているんじゃなくて、景色の方が動いてるのではと思う。
薄い離人感が数分〜数十分続く。
天候以外に体を動かすことで体温が上がれば
その温度を感じることで違和感は消えるし、それ以外の要因でも、なにかしらの温度変化を感じれば、その状態は終わる。
人は基本的に、温度を感じている。
暑かったり寒かったりはもちろん、家で快適に過ごしていても、少し集中してみれば何かしらの温度を感じていることに気づく。
それが急に、まったく感じられなくなるんだから、違和感にまとわりつかれるような思い。
おそらく、肉体的疲労であったり、感情といった温度以外の要素がある場合は、気温を感じないということには至らない。
そして、たまになることでその感覚の新鮮味を損なうことなく、堪能できる。
この状態の時、あらゆる悩みや不安といった負の感情と、期待やワクワク感という正の感情も全く感じることがなく、心は無になっている。
そういった点では、いいリフレッシュになるだろう。
厳密には気温だけでなく温度を感じない時間なんだけど、例えばカイロを使ったり、スマホの熱を感じたり、濡れたりと即座に温度を感じうる要因があるので、一応気温を感じない時間という表現にした。