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プロローグ


「大丈夫か!」


 激しい爆音と爆風。

 舞い上がる土煙の中から、こちらへ向け投げられた青年の声。徐々に晴れていく視界の先に、その声の主が姿を見せる。

 直後、脳裏に駆け巡った幾多もの映像。

 胸の奥がじわじわと、熱を灯す。

 心臓が今までにない程、大きく脈打つ音を確かに感じた。


──あぁ、目の前にいるこの人は……


 この人を、私は──







「……ッ」

「目が覚めたか」


 額に手を当てながら体を起こす。ギギッ、木の軋む音が響いた。机に向かっていた白髪の老人が、そっと近づいてくる。

 指の隙間から、ちらりとあたりを見渡す。小さな質素な部屋に、いくらかの本や書類。そして少し薬品の匂い。


「診たとこ問題はねぇようだが、頭を打ってるからな、自分の名前はわかるか?」


 ドク、ドクと脈打つように痛む頭に、顔をしかめる。

 そうだ、確か……街で働いていて、その後、爆発に巻き込まれて……。


「……リタ」


 頭を抱えながら絞り出した声は、酷くかすれていた。

 さっきよりも、頭の痛みが増している。


「リタか。あの孤児院の子か?」

「……うん」


 違う。

 この痛みは、あの爆発の所為じゃない。


 今まで孤児として生きてきたリタの見た景色ではない、見たこともない光景が、さっきからずっと頭の中を交差している。


 これは……記憶。

“リタ”ではない、もう一人の“誰か”の記憶。


「……ディ……ハルト……ロバーツ……」


 リタは俯きながら、無意識に頭に浮かび上がった名前を零した。


 自分のものではない誰かの記憶。

 その映像の中に、確かにいた。

 あの時、あの爆風の中から俺を救ってくれた、あの男が。


「おお、彼の名前を知ってたのか。まだ小さいのに。こんな子供にまで名前が知られているのか」


 白髪の老人は、リタを見てぱっと明るい顔で笑った。


──知っている、なんてもんじゃない。


「ディハルト・ロバーツ、王国騎士団団長。彼の部隊が、孤児院爆破テロから君を救ってくれたんじゃ」




 ディハルト・ロバーツ




──彼は俺の……





 私の ≪ 最推し ≫ だ!




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\ 「転生したら推しにハニトラされてる!?」コミカライズ /
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