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異世界で神の化身は至極最高に楽しむ。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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17/25

17 水晶玉。




 その夜。ルヴィンスに会えるように、と念じたけれども、彼の夢の中に入ることは出来なかった。

 まぁしょうがない。こういう日もあるだろう。

 私は大して気にしなかった。

 またアメーの部屋にお泊りさせてもらったから、朝起きたら一緒に支度をする。今日は、昨日買った前開きドレスを着た。


「あなたが、いてくれてよかったです」


 今日もパン屋さんで焼き立てを購入して、手頃なベンチを探して歩いていたら、そうアントンさんに声をかけられる。


「従者とは言え、年頃の女の子のドレスを着させられませんよね」

「それもですが」


 私が笑わせようとしたのだけれど、アントンさんは無表情のままアメーをしっかり見張っていた。アメーはダレンと話しつつ、パンにかじりついている。


「対等な関係でいてくれる友人は、初めてです。純粋に友だちでいてくれる人は」

「そうなんですか?」

()()()()()()()、素性を隠していることには気付いているでしょう。詮索せずにいてくださり、誠にありがとうございます」


 私と同じく、か。


「あなたが何者であれ、対等な友人のままでいてくださることを願っています」


 私は、微笑むだけにしておく。

 アメーは王都の貴族だってことを隠していると思う。

 アントンはただの旅人ではないと気付いているけれど、私が敵ではないってことも、理解してくれている。

 私の素性を知っても、対等のままでいてくれるだろうか。

 私が神の化身だと知っても。ダレンも、アメーも。そうだといいな。

 イサークは態度を変えなかったけれど、萎縮してしまうだろう。普通は。


「アメー様!」


 ふと、前方を見たアントンが、フードを被った。

 それから、アメーにもフードを被らせる。そして、道の隅に行く。

 私が前方を見れば、馬に乗った一行が来る。

 他の人々も、馬のために道を開けた。

 私とダレンは、身を潜めたアメー達の前に立って、馬の一行を見送る。

 一際美しい男性が、目に留まった。

 深い青い色の髪が、切り揃えてある男性は、装飾品が多いローブを身に纏っている。見た目からして、魔導師って感じだ。

 その中に、ルヴィンスがいないか。探してみた。

 でも白金髪と青い瞳の美男はいない。

 颯爽と馬の一行は、過ぎ去った。

 今の一行に知り合いでもいたのだろうか。

 王都から、追ってきたのかもしれない。

 俯いたアメーは、あまり顔色が良くなかった。フードを押さえている彼女を見て、私も深くフードを被ることにする。フードの下で目を合わせて、にっこりと笑った。


「……」


 ホッとしたように、アメーも笑みになる。

 大丈夫と込めて背中をさすってあげながら、歩みを続けた。


「どうやら水晶玉が届いたようですね」


 アントンさんが言った。

 もしかして、ついでに水晶玉を届けて、アメーの捜索をしているのだろうか。それにしては、街を走る速度が素早かった気がする。街をくまなく探すつもりはないのか。

 別の街を、目的地にしているようにも思えた。

 首を傾げていると、ダレンが「ギルドに行こう!」と急かす。

 そうだった。整理券をもらったのだから、並んでおこう。

 それにしても、ダレンは全然気付いていないようだ。追っ手に怯えているアメーに気付いてあげてほしいけれど、まだ明かせないようだから、しょうがないか。

 アメーと腕を組み、ギルド南支部に向かった。

 すでに行列が出来ている。私達のような若者が目立つ。それに冒険者らしき人達も並んでいた。どうやら、昇格目的の人達のようだ。そんな冒険者達は、若者達をニヤニヤしながら見ていた。


「若かりし頃を思い出すなぁ」


 そう漏らしている声を耳にする。

 誰もが経験した道だと、和気あいあいと話していた。

 逆に若者達は、緊張した顔付きをしている。

 私の前に整列しているダレンとアメーなんて、ガチガチに緊張していることが目に見えていた。少しして、行列が進んでいくと、水晶玉に触れた若者達が目の前を横切る。しょんぼりした肩。見たところ、失格だったようだ。

 腰には短剣があった。それなりに戦ってきたつもりだったのだろう。ちょっと汚れていた。でも、それでも冒険者に値しなかったようだ。水晶玉はそう答えを出した。


「次、頑張れよ!」

「めげんな!」


 声をかける冒険者達。

 依頼や換金の方の列に並んでいる冒険者達も、励ましの声をかけては、ゲラゲラと笑った。

 あれだな。高校受験とか受かった人達と、これから受ける人、落ちた人みたい。

 前に並ぶダレンとアメーは、少々青い顔をしていた。

 自分も失格になるのではないかと、不安になっているもよう。


「大丈夫。シャンとして」


 私はダレンとアメーの背中を、ドーンと叩いた。

 私に水晶玉の基準はわからないけれど、戦闘能力があることは私にもわかる。ゴールドランクにはなれないと思うけれど、合格して晴れて冒険者になれるはずだ。


「自信持って」


 笑みで元気付ければ、コクリと二人は頷いた。

 そう言う私だけ、落とされたりして。

 神の化身でも、冒険者として認められるだろうか。測定不能が出たら、お腹を抱えて笑う。

 ダレン達の前に並ぶ冒険者は、思っていた昇格にはなれず「ゴールドになれねーっ!」と嘆いた。

 ようやく、窓口のお姉さんが見える。アントンさん並みに無表情。黒髪でパッツンボブ。


「整理券を拝見します。はい。お名前と出身は?」

「ダレンです。出身はガーナ村です」

「では注意事項はお読みになりましたか?」

「はい」


 注意事項の立て札が、二つくらいあった。要は、水晶玉に必要以上の魔力を込めるなってこと。光石をつける要領で触れるだけ。

 あとはタグを渡されたら、それは肌身離さず持つことと書いてあった。難易度別に分かれている依頼を受けるためには、それを掲示しないといけないという。窓口でする説明を省くための立て札だ。


「水晶玉に触れてください」


 カウンターには水晶玉が置かれていた。

 占い師が使う道具として想像していたけれど、それよりちょっと大きめだ。抱えたら、重そう。

 ダレンが触れた。

 覗いてみると、銀色の輝き。そして1という数字が浮かんだ。


「シルバーランク、レベル1です」


 シルバーランクのレベル1か。

 幸先いいスタートなんじゃないかな。


「シルバータグを発行します。登録料金は金貨一枚です」

「はっ、はい!」


 発行されるタグと登録の料金が、かかるのか。

 無事にタグを受け取ったダレンは大事そうに持ちながらも、次に水晶玉に触れるアメーを見た。


「アメーです。出身は王都アークアテイルです」


 アメティスとは、名乗らないのか。フードも被ったまま。

 愛称でも、登録可能みたいだ。結構緩いと思った。

 ちょっと震えた手で、アメーは水晶玉に触れる。

 水晶玉に浮かんだのは、銀色の輝きと1という数字。


「シルバーランク、レベル1です」

「っ!」

「シルバータグを発行します」


 嬉しそうなアメーが、ダレンと私に目を向ける。今にも叫びたそうだ。人目がなければ、喜んで私達に抱き付いたのではないだろうか。

 思わずダレンに抱き付いてもいいんだよ?


「おい! 水晶玉が壊れてるんじゃないのか!?」

「いきなりシルバーランクなんておかしいじゃねーか!!」


 野次が飛ぶ。


「この水晶玉は、魔導師ラティス・リーリン様がお造りになられたものです。それを疑うのですか?」


 無表情のお姉さんが淡々と告げれば、野次は止んだ。そしてざわめいた。

 どうやら、有名な魔導師の名前のようだ。

「あの魔導師ラティスが直々に?」と口にする。


「次、整理券を」

「あ、はい」


 ついに私の番が来た。

 ギルド内は静まり返ってしまい、水晶玉の注目度が最高に達している。

 うわ。緊張してきた。どうしよう。測定不能とか、不合格とか、はたまた壊したりしたら。


「名前は、アイナ。出身はサファリ街です」

「注意事項は読みましたか?」

「はい」

「では触れてください」


 目の前にした水晶玉に、自分が映る。

 ルビーレッドの三つ編みを垂らした美少女。


 さぁ。水晶玉よ。神の化身をどう判定する!?


 右手を、水晶玉に触れた。光石に触れるように、魔力を纏わせた手で。

 すると、金色の輝きが放たれた。


「ご、ゴールド!?」


 そう声を上げたのは、無表情だったお姉さんだ。

 驚愕して、私と水晶玉を交互に見た。

 それから、ゴホンと咳払いをする。気を取り直したようで、改めて水晶玉を覗き込む。


「ゴールドランク、レベル1……です」


 ゴールドランクと出たかぁ~。

 ホッとしたと同時になんか残念感が拭えない。

 ゴールドランク、レベル3なら、納得出来た。

 神の化身だもの。

 でもやっぱり実戦経験がないからだろうか。その点を引かれて、ゴールドランク、レベル1という結果を出したのだろう。

 水晶玉、結構やりおる。


「……ゴールドタグを発行します」

「はい、お願いします」


 アイナと彫られたゴールドタグを差し出された。

 レベル1も、ちゃんと書いてある。

 これで私は冒険者だ。


「おかしいだろっ!!!」


 ポカンとしているダレンとアメーにピースを向けようと思っていたら、怒号が飛んできた。


「いきなりゴールドランク!? 壊れてるに決まってるだろ!! こちとら一年も経験積んでんのにシルバーのまま! 絶対にありえねぇよ!!」


 さっきゴールドになれないと嘆いていた冒険者だ。

 シルバーとゴールドの壁は高いもよう。


「先程も言いましたが、この水晶玉は」

「壊れてんだよ!!」


 有名な魔導師が創造したものと言おうとしたお姉さんの言葉を、冒険者は遮った。年季の入ったおじさん。アントンと同じくらいの歳だろうか。年齢もあって焦っているのだろう。でも、きっとシルバーランクがこの人の限界なのではないか。


 おじさんシラフ? シラフなら、もう冒険者やめた方がいいんじゃない? 自分の限界と相手の力量もわからないなら、やめた方が賢明だと思うよ。私と一戦交えて引導を渡してあげようか?


 なんて挑発の言葉を、なんとか飲み込んだ。

 別の立て札には、ギルド内の喧嘩は禁止と書いてあった。

 私から挑発して喧嘩に発展したら、せっかくもらったゴールドタグを没収されてしまうかもしれない。ここは無視だ。


「おい! もしかして、てめぇ魔力をありったけ注いだのか!? それでまぐれな判定が出たんだな!? そのタグを受け取るんじゃ……ぎゃあ!!」


 無視を決めていたけれど、おじさん冒険者はいちゃもんをつける。

 そんな中、悲鳴に変わった。

 振り返ってみれば、手を押さえておじさん冒険者は痛がっている。


「あ。すみません。私に危害を加えようとすれば防壁魔法が発動します」


 突き指でもしたのかな。最悪、折れたかも。

 私が悪びれずに原因を教えれば、周りがざわめいた。


「なんだって……? そんな防壁魔法なんてあるのか?」

「聞いたことないわ、そんな魔法」


 疑われている。

 これ、私が危害を加えたと思われちゃう?


「でも呪文を唱えたようには見えなかったぞ」

「ええ、確かに」


 あ。大丈夫そう。


「冒険者アイナさんは呪文を唱えていません」


 目の前にいた窓口の無表情お姉さんも、私が危害を加えていないと証言してくれた。

 冒険者アイナさんだって。冒険者だぁ。わーい。

 ゴールドランクは、ゴールドのタグ分の料金がかかるそうで、金貨二枚を要求された。全然へっちゃらなので、支払う。


「くそう! 表に出ろ!」


 痛がっているおじさん冒険者は、まだ懲りないらしい。

 しょうがない。表に出て引導を渡すか。

 なんて思っていたら、無表情お姉さんが驚いた顔をした。その視線は私達に向けられていない。


「いい加減にしないと、出禁だぞ。ゲイル」


 屈強な男の人が現れて、そう告げた。輪郭から顎にかけて髭があって、なんだか鬣みたい。ライオンって印象を抱いたけれど、獣人だったりしないかな。髪と髭はオレンジ色。

 一緒に来た連れの藍色の長い髪の女性が、治癒魔法をかけて指を治す。白を基調にしてオレンジ色のラインがあるローブを着ている辺り、魔法使い。白いローブだから、白魔法使いって感じ。


「ギルマス……! でもよ!」


 ギルマス。つまりはギルドマスター。

 このギルドで、一番えらい人だろう。


「お前が努力していることは知っている。だが、水晶玉の判定は間違っちゃいない。お前の実力はシルバーランクのレベル3なんだよ。認めることも、実力のうちだぞ」

「っ!」


 諭すように強く告げたギルマス。

 治癒が終わるなり、おじさん冒険者はギルドを飛び出していった。


「冒険者アイナ」

「はい」


 おじさん冒険者を見送ると、ギルマスは私と向き合う。

 濃いオレンジ色の瞳は、警戒心が滲んでいた。


「ちょっと話せないか? 応接室に来てくれ」

「はい、いいですよ」


 冒険者になって、早速ギルマスにお呼び出しをされてしまった私は、特段動揺することなく、ついていくことにする。

 ダレンとアメーを見れば、心配そうな眼差しを送ってきた。

 大丈夫、と込めて笑みを送り「待っててね」とだけ伝える。

 ギルマスと白魔法使いについていき、換金窓口の隣にある階段を上がった。



 

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