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異世界で神の化身は至極最高に楽しむ。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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13/25

13 金色階級。




 その後。警備隊が駆け付けて危うく私達は暴行で連行されかけたが、目撃者が違うと言ってくれた上に、アントンが説得してくれて、それは免れた。

 宿を探していると知ると、少女は「わたくし達が泊まっている宿はどうですか?」と言いながら案内を始めてくれたので、そこに決める。とりあえず三日分、二部屋を支払った。


「ほ、本当にいいの? アイナ。こんないい宿のお金……いつ返せるかわからないのに」

「いいよいいよ」


 返してもらう気さらさらないし。

 萎縮してしまうのも無理はない。宿というより、高級ホテルって感じなほど綺麗な宿だった。壁は白い塗装で、部屋も広いようだ。食堂はないけれど、宿としては最高級に違いない。


「冒険者になってから、気長に返してくれればいいよ」

「まぁ! お二人も、冒険者になるためにこの街に来たのですか?」


 両手を合わせて声を出す少女は、また目を爛々と輝かせた。


「うん、そうだよ。私はアイナ」

「あ、ボクはダレン。よろしく。つまり、君も?」

「はい! わたくしはアメー……アメーとお呼びください!」


 ハッとしたように声を上げる少女アメー。少し焦った様子。

 そこで隣のアントンが頭を下げる。


「アントンと申します。先程はアメー様を助けてくださり、ありがとうございました」

「様? アントンさんとアメーはどんな関係?」

「アントンは私の従者です」

「あ、やっぱり主従関係だったのね」


 納得したけれど、アメーの視線が泳いでいた。ちょっと気になる。

 ダレンを横目で見れば、別に主従関係に驚いていない様子。

 ありがちなのかな。主従関係。


「そ、その……アイナ様とダレン様の関係は!?」


 あ。なんだ。

 私とダレンの仲が気になって、挙動不審になっていただけか。

 可愛いな、もう。


「ついさっき会ったばっかりの友だちだよ」

「うん、アイナがさっきの人達から助けてくれたんだ。かっこ悪いけど、鞄を盗られそうになっていたところを助けに入ってくれて……。だから同じように絡まれていたアメーを見ていたら、居ても立っても居られなくなって助けようとしたんだけど、なんかやっぱりかっこ悪かったよね」


 きっぱりと友だちだということを教えると、ダレンは自分の頬を掻きながら俯いた。よく俯く子だ。


「いいえ! かっこ悪いだなんて! わたくしには、とてもかっこいい男の人に見えましたわ! 自信を持ってくださいませ!」


 アメーは、そう力を込めて励ました。

 サイドの髪は三つ編みにして、美しい水色に艶めく白銀の長い髪を下ろした美少女に見つめられ、しかもかっこいいと褒められてタジタジなダレン。

 ニヨニヨしてしまう。ウブ萌え。


「ありがとう、アメー」

「ど、どういたしまして……」


 二人して、頬を紅潮させて俯く。

 ウブ萌えっ!

 のほほんとしながら、私は水晶玉の件を思い出す。


「でも、水晶玉が壊れて、冒険者になれないんだよね?」

「あ、そうでしたわ。アントンに原因を調べてきてほしいと頼んだのですよ」

「アメー。同い年みたいだし、タメ口でいいよ?」

「……いえ、わたくしは」


 タメ口で話そうと持ちかけたけれど、アメーは視線を落としてしまう。


「もうすぐ十六歳になるのです……」


 なんだか十六歳になることが、嫌みたいな感じの表情。


「同い年じゃん」


 私と同い年ということにしておこう。


「ボクも、今年で十六歳だよ」


 ダレンも頷く。


「……昔からこの話し方なのです。それに、わたくしはアイナ様を尊敬していますの」

「ん? 私?」

「ここに精霊魔法を使える方がいらっしゃるなんて、見くびっておりました! ぜひ、アイナ様とお呼びさせてください!」

「あはは……そうしたいならいいけどさ。アントンと話す時はタメ口でしょう? そんな感じで私達と話そう。年相応にさ」


 年相応にすると私の場合、大人らしい口調をしなくちゃいけないけれど、外見に合わせておこう。

 水色の目を輝かせてるアメーに、私は様付けだけを許可した。


「年相応……。わかりましたわ。あっ……わかったわ」


 ちょっと慣れなそうに、ぎこちなく笑うアメーは大変可愛らしい。


「お腹空かない? 食べながら話そう」


 宿で立ち話もなんだし、私達は移動することにした。

 食堂を目指しながら、アントンから水晶玉が壊れた経緯を聞く。

 なんでも、とある冒険者志願の男性が、ありったけの魔力を込めて水晶玉に触れたそうだ。

 水晶玉には、魔力で触れるだけ。流し込むことは禁止。そうあらかじめ説明を受けるらしいが、男性は魔力を込めることで上のランクを得ることを目論んだ。

 しかし、結果は最下位ランク。ありったけ込めた魔力の扱い方が、マイナスになったそう。

 男性は怒りのあまり、水晶玉を床に叩き付けてしまった。

 それが壊れた経緯。


「水晶玉、弁償ですか?」

「いえ、その男には支払えないので、少しある財産だけを没収して牢獄行きになりました。そして、ギルド永久追放です」

「あららー」


 アントンから聞いて、私は一抹の不安を覚える。

 もしかして、私が触れて壊れるってことないよね?

 まぁ、光石をつける程度の魔力を流し込むだけだから、全力で注がない限り大丈夫か。


「アントンさんは? すでに冒険者なんですか?」

「はい、一応資格を持っています。アイナ様」

「なんで私に敬語と様付け?」

「主人が尊敬するお方ですので」


 毅然とした態度のアントン。そりゃそうか。

 私も大人として対応しておこう。


「ランクはなんですか?」

「……ゴールドランクです」

「ゴールドランク!? 父もそうでした!」


 ダレンが大いに食い付いた。

 ランクは大きく三つに分かれるらしい。

 ゴールド、シルバー、ブロンズ。


「ち、ちなみに、レベルはなんですか?」


 その中でまた三つのレベルに分かれるとか。


「……自分は、レベル1です」


 ゴールドランクのレベル1か。


「父と同じだ!」


 ダレンが親近感で、目を輝かせている。

 そんな視線を送るアントンは、腰に剣を携えていた。きっと剣士なのだろう。

 ちなみに、ダレンは腰にナイフを二つ携えている。若者達に向けなかったのは、やっぱり優しいからなのだろう。

 流れでダレンは冒険者だった父親の話をした。亡くなったことも。

 心配で一杯な眼差しを送るアメーに気付かず。


「ボクもゴールドランクになれるでしょうか!?」


 ダレンは鼻息荒くアントンに詰め寄る。


「……それは、手合わせしてみないとわかりません」

「では手合わせしてください!」

「……」


 頼まれてしまったアントンは、視線でアメーの指示を仰ぐ。

 アメーは不安げだ。アントンとダレンの実力差がわかるからだろうか。冒険者になる前に冒険者に負けて、心が折れることを考えているのだと思う。

 はたまた想い人を傷付けたくないからだろうか。


「お願いします!」


 頭まで下げるダレンを見て、アメーがコクリと許可を出す。

 アントンは、首を縦に振った。


「食事が済んだら、街の外でやりましょう」

「はい! ありがとうございます!」


 早速、食事を済ませようとして、気付く。そう言えば、ダレンはお金に余裕がなかったのだった。反対にアメーは余裕がありそう。あんな高級な宿を選ぶし、従者がついている。裕福な家に育ったに違いない。

 そしてアントンが案内しようとしているから、高級レストランに連れて行かれる気がしなくもない。

 ここは、私が気を遣うことにした。


「ねぇねぇ、私が作ったものでよければ、いかが?」


 そうにっこりと笑みで提案。

 キョトンとしたアメーとダレンは、顔を合わせると頷いた。

 テイル川の方の街外れに移動。

 もしものためにと、買って放っておいたテーブルを出した。どこって、もちろん収納魔法で作った異空間からだ。保存の魔法をかけていても、食べ物だからちゃんと消費しなくてはいけない。お肉を取り出した。


「レウ! 焼いてちょうだい」


 取り出した丸裸の鶏肉をミニレウに焼いてもらっている間に、ソースを作る。ソースの材料は、果物のギルポ。鶏肉には、甘すっぱいソースが合う。

 作ると言っても潰して煮込むだけ。

 丸焼けしてくれた鶏肉を引きちぎって、それをソースにドボン。

 出来れば、ソースで鶏肉を煮込みたいけれど、お腹を空かせているので時間をかけずに仕上げた。


「どうぞ!」

「ギルポで味付けなんて……珍しいね」

「わたくしも、初めてだわ」

「……」


 実は私も初めてなんだけれどね!

 躊躇する三人に代わって、私から味見をした。


「んー! 美味しいよ! ギルポの甘酸っぱさが合うよ?」

「そう? じゃあいただきます」

「いただきます」

「自分もいただきます」


 ダレンは豪快にかじりつき、アメーとアントンは一口かじる。


「本当に美味しい!」

「んぅ! よく合いますわ!」

「美味いです」

「お口に合ったようで、よかった」


 舌鼓をする三人。

 私もソースにまみれた鶏肉を口に運び、それからレウにも与えた。


「それで、その生き物は……もしや、アイナ様が創造なさった魔法生物なの?」

「うん。レウって言うの」

「まぁ! 魔法生物の創造は難しいのに! 一体どこで魔法を学んだの? アイナ様」


 またもや目を輝かせるアメーに、なんて答えよう。


「んーお父様から教えてもらったの」

「お父上はどんな方?」

「一言で表すと、神」


 私は嘘をついていない。にこにこ。

 ダレンの父親のこともあり、あまり踏み込んで訊いてはこなかった。


「収納魔法も、無言で開けている方なんて初めて目にしたわ!」


 しまった、うっかり。

 普通は、何か呪文がいるのか。そうだろうな。


「そういうアメーは、治癒魔法が得意だって自分で言ってたよね。誰に教わったの?」

「わたくしは家庭教師……」


 答えた直後、アメーは固まってしまう。


「家庭教師を雇えるくらいのお金持ちの娘なのに、冒険者になるの?」


 私の指摘に、ハッと口を押さえるアメー。

 もぐもぐ食べていたダレンも、手と口を止めた。


「わ……わたくしも、ならないといけないのです! ゴールドランクの冒険者に!!」


 決意は強いらしい。それを水色の瞳の中に見た。


「絶対にならないと……わたくしっ……!」


 何かただならぬ事情があると察知。

 しかし、情報が少なすぎて、想像も出来ない。

 ちらり、とアメーの視線がダレンに向けられた。するとポッと頬が赤く灯る。

 情報が少なすぎて、想像も出来ないけれど、なんか萌えた。


「二人とも強い思いで冒険者になりたいんだね。私はなんとなく旅のついでに、冒険者になっておこうと思っただけなんだよねー」

「それもまた冒険者になるきっかけでいいじゃないかな」

「いいと思うわ」


 怒られるんじゃないかと思ったけれど、二人はよしとしてくれる。

 この流れで、アントンの志望動機が気になった。


「アントンさんは」

「自分もことのついでに冒険者になり、いつの間にか昇格していただけです」

「昇格? 昇格制なの?」


 質問する前に答えてくれるアントン。


「何回でも水晶玉に触って、戦闘能力を測れるんだ。上がっていれば、昇格」

「あ、なるほどー」


 そうだよね。戦い慣れしたら、戦闘能力が上がっていくものだろうし、昇格もする。


「逆に降格もあったりするの?」

「何かのルール違反をしたり、犯罪を起こせば冒険者の称号は剥奪されます。降格は、老衰や致命的な怪我、例えば腕や足を失ったりすれば、ランクが下げられることがあります」


 アントンが答えてくれた。

 なるほどーと、納得して頷く。

 そうだ、水もあるから振舞っておこう。


「ところで、アメーの従者になったのはいつですか? どんな理由か、訊いてもいいですか? あと水、回し飲みでいい?」


 しかし、コップが一つしかない。こうして誰かと食べることを想定しておくべきだった。


「先にアメー様が飲まれるなら」


 アントンが言うように、主人であるアメーが先に飲むべきか。

 アメーに水の入れたコップを差し出す。

 すると一口飲んだアメーは、スッとダレンにコップを差し出した。

 間接キス狙いかな!?


『おおっと! アメティスからコップを受け取ったダレンが、頬を赤く染めた!? これは! 気付いたのか!? 気付いたのか!?』


 お父様がいきなり実況を始めた。

 ……アメティスって、アメーの本名かしら。


『そう! ダレンは気付いてしまった! このまま飲んだら、想い人と間接キスになることを!』


 お母様も乗った。

 暇なんだな、お二人とも。


『さぁ! ダレン! 飲みなさい! 美と愛の女神が祝福します!』


 間接キスだけで!?

 ゆっくりとダレンのコップが口に近付いた。

 きっとアメーも、ドキドキだろうなーっと目をやってみれば、真っ赤だ。わかりやすい! わかりやすぎて、可愛い!!

 すると、アメーの右隣にいたアントンが、手を伸ばしてコップを取り上げてしまった。そしてゴクゴク、と飲んだ。


『『『ああーっ!!』』』


 残念極まりない声を三人で出したが、ダレンとアメーの心の声もそうだろう。間接キスを阻止されて、ガクリと項垂れた。

 やがて、キッと涙目でアメーはアントンを睨む。アントンは気付かないふり。


「自分は五年前に怪我を負いました。それを必死に治してくれたのが、アメー様だった、それが理由です。それからおそばにいさせてほしいと頼み、今こうしておともしているわけです」

「……本当は一人で冒険者になろうと思ったの。でもアントンを振り払えなくて、仕方なく一緒に」


 五年前と言えば、十歳か。そんな子どもの頃から、アメーは魔法が使えた。それって実はすごいことなのでは。


『そうだね、他の子より才能はあるよ。アメティスは』

『知っている子みたいな言い方ですね』

『ある意味、知っているわ』

『ある意味?』


 私は首を傾げた。

 神様だからだろうか。



 

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