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異世界で神の化身は至極最高に楽しむ。  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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11/25

11 お礼。




 ドドドン。

 ドアを叩く音で目が覚める。ごしごしと目元を擦りながら、起き上がった。

 寝足りなさを覚えつつ、私はのっそりとベッドから降りて、よろけた足で叩き続けられるドアに向かう。


「うるさい。叩きすぎ。何」


 開けて短い言葉を放つ。

 そこに立っていたのは、外ハネしたブラウン色の髪と同じ色の鋭い目を持つ青年だった。


「イサーク」

「アイナ。忘れたのか、朝飯もごちそうすると言ったはず」


 少々怒りを込めた声で、イサークはじとりと見下ろしてくる。

 壁に凭れて、私は首を傾げた。


「ん? それは口止めのためでしょう? もう口止めの必要はなくなったんだから、ごちそうすることないんじゃ……」

「あ? 一度約束したものを取り消すなんて、男じゃねーよ。待ってやるから、早く着替えろ。昨日のドレスのまま寝てんじゃねーよ」

「イサークさんんんっ!!! 口の聞き方ぁ!!!」


 昨日のドレス。確かにそのまま寝てしまった私は昨日のドレスのままだ。

 なんか隣から盛大に大きな声が上がる。どうやら、そばでシンが立ち聞きしているみたいだ。


「シャワー浴びてもいい? 結構時間かかると思うけど」

「待ってやる、早くしろ」

「イサークさん!!!」


 朝からそんな大声を出すものじゃないよ。シン。

 思いつつも言わないでおく。だって、萎縮するだけだろうから。

 ドアを閉じた私は、すぐにドレスを脱ぎ捨てた。

 小さなシャワールームで、頭から足の先まで洗う。それから熱風を起こして、全身ドライヤーを浴びつつ、今日のドレスに着替えた。

 黒のロングスカートに横スリットが入っているシックな感じのドレス。

 髪を念入りに乾かしてから、三つ編みにした。

 夢の中でルヴィンスに花を差し込まれたことを思い出して、私はふっと笑みを溢す。

 ラベラの花畑。どこにあるんだろうか。


「お待たせ、イサーク」

「行くぞ。何が食いたい?」


 ミニレウを入れたマントを羽織ってドアを開けば、イサークは向かいの壁に凭れて待っていた。

 結構待たせてしまっただろうけれど、キレることなく歩みを始める。


「んー……パンケーキ食べたい」


 昨日はがっつりとチキングリルを食べたし、軽く甘いものがいい。

 一緒に食堂まで歩いていき、二人で丸テーブルにつく。


「……それで、お前、これからどこ行くんだ?」

「王都目指しながら寄った街を散策」

「そうか、王都か……」

「なんで?」


 注文したオレンジジュースを受け取り、一口飲む。


「……お前、冒険者に興味があるだろ。一緒にならないか?」

「冒険者に?」


 私は目を瞬かせた。


「でも、私この国の人間じゃないし」

「大丈夫だ。身元確認と言っても、出身の街の名前を申告するだけだ。この街と言えばいいじゃないか」

「そんなんでいいの!?」

「ああ。お前の魔力なら、余裕で受かるだろう」

「え。待って。戦闘能力を測るんだよね。魔力が多いだけで合格になるの?」


 聞きそびれていた戦闘能力の測り方。魔力が関係するのか。


「水晶玉に触れるだけで、鑑定されるんだよ。光石で明かりをつけたり消したりする要領で、魔力に触れればいい。魔力、戦闘能力、その他諸々がランク付けされて、最低限あれば合格だ」

「そんな簡単なの? え? じゃあなんで、イサークは種族を隠してたの?」

「オレの種族は、魔力を使うと変身する。試すか?」

「いやいいよ」


 オンオフの激しい種族だってことは、よくわかった。

 その戦闘能力を測る水晶玉に触れることが、イサークにとって難関だったわけだ。

 じゃあ種族名を申告する必要はない。

 ん? 種族名ってなんだ? 私の場合。


『それはもちろん、神だよ』

『化身だけど、その世界では神の域だから、神でいいのよ』


 神様夫婦は、そう言ってきた。

 種族、神。申告したら、絶対頭おかしい子って思われる。

 それはそれで面白そうだけど。


『じゃあ、私がその水晶玉とやらに触れたらどうなるんですかね? 何ランクになるのか』

『さぁ? 神は触れたことないから、推測出来ないなぁ』

『アイナ、触って確かめてきて!』

『わかりました、お母様、お父様』


 私が一つ頷くと、パンケーキが運ばれてきた。


「冒険者になるよ、イサーク」


 その答えを聞くなり、イサークは柔らかい笑みを溢す。

 さっそく、パンケーキにナイフを刺し込み、一口に切って食べる。

 ふわ。甘い。


「そうか……。なら、ここから北、真っ直ぐテイル川を進んだ先にある街に行こう。そこにギルド南支部がある」

「ん?」

「ギルドとは、冒険者の斡旋所みたいなところだ。冒険者の資格を与えるし、依頼の引き受け、換金も受け付けている」

「うん、それはなんとなくわかるけれど、ん?」

「今日出発するか? それとも明日にするか? 冒険者の資格なら、いつでもとれるぞ」

「んん???」


 私の疑問に答えることなく、話を進めようとするイサーク。


「なんで、私とイサーク達が一緒に行動するの?」

「……」


 同じくオレンジジュースを飲んだイサークは、動きを止めた。


「……神の化身を、これ以上一人にさせることが出来るか。護衛として、イサーク団はおともする」

「いや、護衛なんていらないから、全然平気だから」

「なんとか男爵に囚われたり、人身売買組織に狙われて攫われたのに、平気とはよく言えたもんだな!」


 ダンとコップをテーブルに叩き付けるように置いたイサーク。

 昨日のキレっぷりが出た。

 普通ならぐうの音も出ないところだろうけど。


「でも、イサーク達が来なくても、私人身売買組織を壊滅させてたわよ?」


 もぐもぐとパンケーキを食べつつ、私はそう返す。


「もしも何日も眠るような量の眠り粉を盛られていたら?」


 ギンッとイサークは凄む。


「……そうね、眠り粉には耐性でも作ろうと思う」


 神の化身とは言え、眠り粉には弱すぎる。


『眠りの魔法なら、なんとか跳ね除けることは出来るけど、まさか眠り粉が効果覿面だとは思わなかったなー』


 創造の神シヴァール様も、盲点。


「いいから、護衛をさせろ。だいたい少女の身体で旅なんて、危険すぎるんだよ」

「大丈夫だって、レウがついてるし」

「レウ?」


 昨日話したのに、忘れたらしい。

 マントからミニレウを取り出せば「ああ、そいつか」と納得をした。


「そいつがオレ達より、護衛に相応しいのか?」


 怪訝な目付きをしてくるイサーク。

 温厚なミニレウは気にすることなく、私が差し出したパンケーキにかじりつく。


「ええ。そうよ?」

「……」


 グルルとイサークが喉を鳴らす。


「もう!! はっきり言ってくださいよ! イサークさん!!」


 そこで声を上げたのは、シンだ。店にいたのか。

 というか、コル達もいた。聞いていたのか。


「アイナ様のおかげで仲間の親睦が深められたから、お礼にどこまでも護衛したいって!!!」

「シンてめぇぶっ飛ばされてぇのか!?」


 シンの暴露に、イサークが真っ赤になっている。

 イサークにぶっ飛ばされたら、軽く二階まで飛べるのだろうか。獣人族の怪力を見てみたい気もするが、シンはそこまでタフではないのでやめておこう。

 私のことを、様付けすることにしたのか。


「イサークの気持ちはわかった」

「!」


 私は、イサークの手を取り、ギュッと握った。

 ちょっと骨張っててゴツゴツした大きな手だ。


「気持ちだけ受け取っておく」


 ニコッと笑いかける。


「はっ?」

「朝食ごちそうさま。私達は、先に行くわね」


 私はイサークの手を放し、立ち上がった。


「お、おい!」


 金を置いて追いかけてくるイサークに捕まる前に、外に出る。

 外の道は、まだ人が少ない。多分市場の方に行っているのだろう。


「おい! 行き先は同じだろう!?」

「そうですよ! アイナ様! 一緒に行きましょう!?」

「まぁそうなんだけどさ、今日は飛びたい気分なのよねー」


 イサークとシン達に振り返って答える。

 その言葉の意味がわからないと、イサーク団は顔に出す。


「まっ、ついてこれるものならついてきてー」


 私はそうニヒルに笑って見せてから、ミニレウを飛ばせる。


「レウ!」


 ボンと白い煙を撒き散らして、元の大きさに変身した。

 純白のそのドラゴンを見たイサーク団の瞠目した顔は、至極愉快だ。

 そっと首元の長い毛を握った。そうすれば、レウは羽ばたいた。

 しがみ付けば、宙へ飛んだ。また感じたことのない浮遊感を味わう。

 哄笑を上げたいくらい愉快に気分。

 風の中を突き進む。レウって温厚なわりにスピード狂だと思う。まぁ、嫌いではないけれども。

 一時間弱の飛行で、街に到着した。

 街に近付く時は低飛行に切り替えてもらったので、目撃した人はいないだろう。

 空から見た印象としては、丸い街だった。しっかりした円。

 茶色からオレンジ色の屋根の建物が、ぎっしりとその円の中にある感じ。

 そして、多分私が今まで訪れた街の中で、一番大きい。


「レウ、喉乾いた? 飲み物買おうか」

「キュウ!」


 ミニサイズになってもらったレウが右腕を這って、マントの中に入る。

 水なら収納スペースにたんまりあるんだけれど、せっかくならジュースがいい。ミニレウもご所望のようだ。

 飛行のおかげで乱れた髪は一度ほどいて、ポニーテールにまとめた。

 ルンルンとした足取りで、アーチをくぐり街に足を踏み入れる。

 街の名前は、ルーシー。

 屋台か食堂はないかとキョロキョロしていれば、陽の当たらない裏路地に数人の若者がいた。それだけなら、視線を外していただろう。

 でも若者達は、どうやら少年の持ち物を奪ったようだ。

 少年が必死に取り返そうとその場で飛び跳ねるも、届かない。

 カツアゲかな。

 私はその路地へ足を運ばせた。


「返してください!」

「取り返してみろよ」


 近付いてみれば、大体二十歳前後の若者四人が取り囲んでいたのは、黒髪黒目の少年。小顔が手伝って、可愛い顔立ちの少年だ。

 私は少年が返してと言っている鞄を、自分の手に引き寄せた。

 念力のように魔法を使うことに慣れたな。簡単簡単。

 いきなり鞄か吹っ飛んだことにより、注目が私に集まる。


「おっ、な、なんだよ」

「おっ」

「おっ……」

「……」


 おっ?

 美少女の登場に明らか動揺する若者四人に、私はサービスで笑顔を見せる。


「オレらと遊びたいわけ? わかった。相手してやるからそれ返せよ」


 盛大に勘違いする若者が、手を差し出す。


「取り返してみなさいよ」


 私はそれだけを言う。

 黒髪の少年と大差変わらない身長の私から、奪い返すなんて造作もない。

 若者達は一頻り笑っては、少年の鞄を取ろうとした。

 でも私は人差し指を払って、若者達の足を後ろに上げて転ばせる。

 無様にコケたから、見下ろしてもう一度言ってやった。


「取り返してみなさいよ」


 何が起きたかわからない若者達は、転んだ痛みに悶えつつ、立ち上がる。


「返せって言ってんだろ!?」


 向かってきた若者をひらっと躱す。

 真っ直ぐ向かうだけだから、避けるのは容易い。

 次々に飛びかかってきたけど、それもひょいひょい躱した。

 私と少年の間に誰もいなくなったので、少年に鞄を返す。


「はい、これ君のでしょう?」

「えっ」

「違った?」

「いえ! ボクのです! ありがとうございます!」


 少年は受け取ると、ガバッと頭を勢いよく下げた。


「ちげーよ!! それはもうオレ達のもんだ!!」


 若者がキレて、拳を振り上げる。

 それは少年に向けられたけど、私は手首を掴むと捻り上げた。


「いてててっ!」

「いい加減にしないと、懲らしめるわよ? 痛いのはお好き?」


 にやり、神の化身らしかぬ笑みを浮かべて、捻り上げた若者を突き飛ばす。


「お、覚えてろよっ!!!」


 若者達はようやく危機感を覚えたらしく、捨て台詞を吐いて逃げ出した。

 言うんだ、捨て台詞。


『アイナは悪者に容赦ないんだね。そんな君が好きだよ』

『私も好きよ、アイナ』

『私も今の自分、好きです』


 胸を張っていられる。

 以前の私なら、見なかったふりをして通り過ぎたと思う。

 他人の問題に首を突っ込むような人間ではなかった。

 だから、こうして見ず知らずの他人を助けられるのは、誇りにさえ思える。お父様とお母様に、感謝だ。ありがとう。



 

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