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柊綾乃は悩みを聞きたい

 はわわ……今日は何ていい日なの! 冬士郎にノートを貸してくれって頼まれたり、一緒に帰ってしっかりと私の顔を見てくれたしもう幸せ!


 それにしても、冬士郎は一体何に頭を悩ませているのかしら? 幼馴染の私にすら話せないなんてきっと重大な悩みに違いないわ! 一人で抱え込まずに私にも相談して欲しいな……悩みが解決して、そしてそのまま私達の仲が深まればゆくゆくは結婚……キャー!


「何クッション抱き締めながらニヤニヤ笑ってんだ気持ち悪ぃ」


 リビングのソファでそんな事を考えていたら愚弟りょうたから戯れ言が飛んでくる。危ない危ない、緩んでいた顔をしっかりと元に戻して返事した。


「何でもないわ。決して冬士郎にノートを見てもらった事が嬉しかったとかこっそり尾行して偶然を装って一緒に帰って楽しかったとかそんなこと一切考えてないわ」

「すげえ、今ので今日一日トシ兄関連で何があったかすぐに分かったわ」

「それはそうと、涼太は冬士郎から何か相談とかされてない? 悩みとか」

「いや、されてねえけど? トシ兄に悩みとかあんの? アホなのに」


 涼太はそのまま私の隣に座ってスマホをいじり出す。そのままラインを開いて流れるように冬士郎のトークを開いた。

 いいなあ……冬士郎の連絡先……。


「姉ちゃん、よだれきったねえよ、どんだけトシ兄のライン欲しいんだよ」

「べ、別に今すぐ欲しいわけじゃ……」


 すぐさま、涼太は冬士郎のラインのトークを見せつけてきた。トークの量がすさまじい! 結構日常的にトークしてる! あ、通話記録もある! 一緒にゲームしていた時の物かな?

 わ、私も冬士郎とトークしたい! もう形振り構っていられない!


「超欲しい! 私だって冬士郎とトークしたーい! むしろ結婚したーい!」


 本音をさらけ出してしまった。台所の方からお母さんが「あらあら、若いわねー」と言っているのが聞こえてきた。


「お、本音言いやがった。元々全然隠せて無かったけど。どうしよっかなー、やっぱやめようかなー」

「寄越しなさい! いや、ください! なんならお金に糸目は付けないわ!」

「じゃあ五万」

「ご、五万……!? わかった、何とか工面するわ。お母さん、小遣い前借り出来ない!?」

「いらんわボケ、幼馴染の連絡先に五万出す姉とか末代までの恥だわ」

「今すぐ末代にしてあげる!」

「ぐああああっ! やるから放してー!」


 程なくして、涼太から冬士郎の連絡先が送られてきた。

 ね、念願の冬士郎の連絡先だ! 速攻で友達追加。やっと手にいれた! やったやったやったー!


「年甲斐もなく嬉しそうだなおい」

「だって……だって……!」

「このままさっき言ってた悩みとか聞いてみたらいんじゃね」

「え? いきなりハードル高くない?」

「……じゃあまずは『ライン追加しましたよろしく』みたいなの送ればいいんじゃねえの?」

「十分高くない?」

「全然高くねえだろアホが、さっさと送れや」


 悩み云々はともかく、ラインを入手したのは素直に嬉しい! 涼太の言う通り、よろしくでも送っとこう。


***


 ひとしきり枕に顔をうずめた後、ポケットのスマホにラインの着信が入り、取り出して確認する。

 送り主は“柊綾乃”と書かれていた。そういえば、あいつのラインまだ持ってなかったな……恐らく涼太が教えたんだろうが……

 送られてきた本文は『今さらたけど、ライン追加し麻痺たよろひく』。追加し麻痺たって何? あいつライン使い慣れてねえ訳じゃねえだろうに。


 返事しない訳にもいかないので、フリック操作で返信をうち、送り付ける。『よろしく頼むわ』っと……。


 さて、明日は土曜日だ。学校も無いことだし、徹夜でゲームしようゲーム。ゲームを起動させようと電源ボタンに手を伸ばすとまたもラインの通知音が鳴ったから確認すると、


『最近、何に悩んでるの? 相談に乗るから教えて』


 と来た。

 お前の顔を見ると、中学の時に押し倒して(自主規制)だの(自主規制)だの言ったことを鮮明に思い出してもがき苦しむんです。助けてください。なんて言えるわけがない。

 これは俺の罪だ。人に、それも当事者である柊に相談して解決しようだなんておこがましいにも程がある。


『心配するな、お前には関係ない』

 

 これでいい。俺はずっとこの罪を背負っていかないと。全部俺が悪いんだから。

 

『嘘でしょ』


 すぐに返事が帰ってくる。さすが付き合いが長いだけあって鋭いな。


『何もねえよ』


 すぐに返事を返し、寝転がった。……ついぶっきらぼうな返事をしてしまった。あいつは心配してくれてるのに。


 ピンポーン


 インターホンが鳴り響いた。宅配便か何かだろうか?

 放っとけば、お袋が出てくれるだろう。お、案の定お袋が対応した。

 しばらくして、一階から声が聞こえてくる。


「冬士郎、春花! 今日、綾乃ちゃんがうちに泊まるって!」


 は? 何言ってるんだお袋。


「えーマジで!? そんなのすごい久しぶりじゃん!」


 春花が階段をドタドタと音を立てて降りていく。

 まずい、俺の聖域に……久我家に柊が踏み込んできた!


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