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サンオイルハプニング

「えっと……」


 今、俺の目の前にものすごい刺激の強い光景が広がっていた。ビーチマットの上に三人が水着の紐を外してうつ伏せになっている。


「どういう経緯でこうなったんだっけ?」

「何を言ってるんだい素人くん、ついさっきの事だよ」


 紫藤先輩がチラリとこちらを見てくる。


「まず真優くんが素人くんにサンオイル塗ってくださいってお願いしたじゃん」

「それはその、記憶ありますけど」

「その後、綾乃くんが便乗して『私も塗って欲しー!』って言ってきたじゃん」

「そ、そういえば」

「それでついでに私も塗ってもらおうかなって」

「おかしいおかしいおかしい! 何で俺なんだよ! こういうのは普通女子同士でやるもんでしょうよ!」


 俺の反論は間違っていない筈だ! 笠井一人ならともかくこんな場所で三人同時に? 付き合ってもいない男女がこんな事をするのは間違っている! 

 ていうか、言い出しっぺの笠井がさっきから頭から湯気出して全然こっち見ないんだけど! 無理してんじゃねえのか!


「そう言わないで冬士郎。これにはしっかりとした理由があるの」

「え?」

「サンオイルを適切に肌に染み込ませるためには強めの力が必要なの。女の子には出せない程のね。真優ちゃんもそれを考慮した上でお願いしたんだと思うわ」

「そ、そうなのか?」

「ええそうよ。私だって是非とも冬士郎にじっっっくりと触って欲しいとかそんなことを考えている訳ではないのよ」


 凛とした顔で綾乃がそう言ってくる。

 そういうことだったのか、合点がいったぜ! 綾乃が言うことなら間違いないな!


「よし、そういうことだったらやるぞ! ここまで準備させといて引けないしな」

「あ、素人くん。私からやってみたら? 練習台代わりにさ」

「練習台?」

「大事な後輩である二人にはしっかりと塗らせてあげたいからね。その前に私でコツを掴んでみたら?」

「わ、わかりました」


 オイルを手のひらに馴染ませてから、先輩の後ろに行く。


「そ、それじゃ失礼しますね」

「ゆっくり丁寧にね」


 そのまま背中に触れる。な、何だこれ? めっちゃスベスベしてる。野郎の肌とは大違いだ。


「手のひらから緊張がめっちゃ伝わってくるよ素人くん」

「そりゃそうでしょ! こんなこと初めてなんですから」

「興奮させちゃった?」

「してないですけど!?」


 とか言いながらも塗り終わった。ああ、なんかこう、変な体験……。


「どう? この調子であとの二人も出来そう?」

「な、何事も無ければ」

「まあ発情しないように頑張ってね」

「しないってば!」


 後ろに手を回し、水着の紐を結び直す先輩から目を逸らし、隣の綾乃の背中へと向かう。


「き、来た! 冬士郎、私はいつでも大丈夫よ」

「あ、ああ。任せろ」


 ちゃんとしろよ俺。これはあくまでもオイルを効率良くしっかりと塗り込むための行為! 慌てることなんかない!

 ……綾乃めっちゃ目キラキラさせてこっち見てくる。


「えっとな、綾乃? そんなにガン見されるとその、やりづらい」

「え、ま、まさか目隠しであんなことやこんなことを!?」

「あ、いやちょっと楽な姿勢でいてくれるだけでいいから」

「そ、そう。わかったわ」

 

 綾乃はそのまま正面へと顔を向ける。よし、これでやりやすくなるぞ。

 とりあえず、オイルを改めて馴染ませて背中にピトッと触れて


「ひゃうん!!」

「わああああっ!!??」


 触れた瞬間、綾乃が変な声を上げ、驚いて離れてしまった。ずっとマットに突っ伏していた笠井も流石に驚いた顔して綾乃を見つめている。


「おいおい素人くん何したの?」

「え、いや、ちょっと背中に触っただけで」

「ほんとに? 綾乃くん大丈夫?」

「は、はいぃ、だいじょーぶですぅ」


 何だか声が弱々しいな。それに体が痙攣しているような。


「ふう、大丈夫よ冬士郎。続きをお願い」

「お、おう」


 指先でなぞってちゃ駄目だ。しっかり手のひらで塗りたくらないと! 今度はしっかりと手のひらで触れて


「ひゃううううんん!!」

「わああああああ!!!」


 さっきよりもでかい声がビーチに響き渡った! おかしい! 何かがおかしい!

 どうすればいいんだ! こういう時どうすればいいんだ! 綾乃、肌関連で何か症状があるのか!? だったら大変だ!

 よし、涼太に確認だ!


「もしもし、涼太か!?」

「何」

「今ビーチで綾乃の背中にサンオイル塗ってんだけど」

「なんで?」

「肌に触れた瞬間、綾乃が変な声出して痙攣するんだよ! きっと何かしらの肌関連の症状だと思うんだけどお前何か知らない?」

「全身性感帯なんだろ」

「は? 何言ってんだお前。そんな奴いる訳ねえだろが万年発情期。お前のエロ本じゃねえんだから」

「めっちゃボロクソ言うな」

「絶対何かしらの肌トラブルだって」

「……さっさと塗りまくって楽にしてやれば? トシ兄に最後まで出来るか知らねえけど」

「え、あ、おい!」


 切られた。ろくな情報わからなかった。あの野郎馬鹿にしやがって。


「はあ、はあ……だ、大丈夫よ冬士郎。私、まだいけるわ」

「いや無理するなって。これじゃ周りの視線もあるし」

「お願い」


 息を荒らげながらも強い眼差しをこちらに向けてくる。これも効率良くオイルを塗りたいという意向の現れなんだろうな。


「お前の覚悟はわかった! いくぞ綾乃! 変な声出しても止めないからな!」

「ええ! 来て冬士郎ひゃわああああああんんんん!!!!」


✳✳✳


「ふう、終わった……」


 綾乃は何やら口からよだれを垂らしつつピクピクと痙攣している。本人の了承ありとはいえ大丈夫か?

 とにかく今はずっと待たせてしまっている笠井に塗ってあげないと。


「よし、笠井やるぞ!」「今の後でですか!?」

「心配すんなって! もうコツは掴んだし問題なくやれるぜ!」

「ちょ、ちょっと待って下さい! 心の準備が!」

「大丈夫だって遠慮すんな!」


 ん? スマホが鳴ってる。今度は涼太からかけてきたようだ。

 丁度いい。綾乃のオイルを無事に塗り終わったことについて報告だけでもしておこう。さっき馬鹿にされたしな。


「涼太! 綾乃の件は無事に片付いた! 今から笠井にもするからちょっと待ってろよ! 行くぜ笠井!」 

「え、あのちょっと待ってひゃああああああっっっ!!」


 そのまましっかりと塗り込んでいく。サンオイルを人に塗られるのって自分で塗るのとそんなに違うのか? えらい変な声出てるけどきっと紫藤先輩がおとなしめなだけでこれが普通なんだろうな。


「わーお……素人くんうまくなったねえ」

「先輩と綾乃で経験積みましたからね!」

「ひゃああああっ! 待ってくだひゃあああああっ!!」

「暴れるなって! あと少しで終わるから!」

「そ、そんなに無理矢理強めにしちゃダメでひゃああああっ!」


 やっていくうちに、笠井の背中にしっかりと塗り終える。やっぱりピクピクしてる。

 おっと、そういえば涼太からの電話を消していなかったな。今のを聞いてもらえれば俺がオイル塗り上手だって事を理解してくれたはずだぜ!


「どうだ涼太! 俺だってやればできるんだ!」

「お兄ちゃん一体何してんの?」

「は、春花! なんで!?」

「さっき涼太が電話で全身性感帯がどうとかって話してたからすぐにかけ直してみれば……なんかエロい事してんの?」

「してないしてない! 笠井にサンオイル頼まれたから塗ってただけで!」

「その割には無理矢理するのやめて! みたいな声聞こえたけど。ていうかオイル塗るだけでそんな声出ないから」

「せ、先輩……待ってって行ったのに激しすぎますよ……」

「お兄ちゃんギルティー!」

「いやあああああっ! 無視しないでえええっ!」












 



 冬士郎はそろそろ涼太と春花が常にセットになっているのを認識した方がいいと思います。

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