建前なんか使わない
涼太視点です。
「あー終わった終わった。マジあちー」
バスケ部の練習が終わって昼過ぎに帰ってきた。夏休みっつっても運動部はめちゃくちゃ練習日があるし、満足に休めたもんじゃない。帰宅部のトシ兄とかが羨ましく思える。
シャワーを浴びた後、適当な服に着替えて自室にいって寝ようかと部屋に行く。
「ん、おかえり涼太ー」
当たり前のようにベッドに寝転びながら俺の漫画を読んでいる春花がいた。
「俺がくそ暑い中で部活やってる間に人のベッドでくつろいで良いご身分だなおい」
「まあねー。宿題もさっさと終わらせたしのんびり出来るなー」
「暇なら俺の分もしといててくんね?」
「は? 絶対やだ。手伝うんならともかく」
「はー、宿題やんのだりぃ」
つーか、そもそもどこにやったっけ?
ふと勉強机に目をやる。そこには部屋中の至る所に隠していたエロ本が積み上げられていた。こいつ、またいらんことを。
「何してくれてんだ。また隠し直すのだりいじゃねえか」
「もう隠す意味ないって。綾姉ちゃんも千紗乃ママもとっくに知ってるし」
「エロ本は隠してこそなんぼだろうが。普通に置いとくってのは背徳感も感じられねえしエロへの冒涜だっての」
「何そのアホ丸出しのこだわり」
とりあえずエロ本は春花が出て行った後にもう一度隠すとするか。
「ていうかさ涼太。例によって巨乳ばっかじゃん。いい加減乳離れしたら?」
「人に言われてはいそうですねって嗜好変えられるわけねえだろ」
「将来巨乳の美人局にめちゃくちゃ引っかかりそうで心配」
「うるせえなAカップ」
「はあ~!? Aじゃないし! 最近Bいったし!」
「んなもんどっちでも同じだろうが!」
「同じじゃないし! しっかり成長してるもん!」
「つーかそもそも俺は寝てえんだよ! 俺用のスペース空けろ!」
「空けないもんねー! ふーんだ!」
膨れっ面のままベッドにしがみついている。意地でも寝かせる気はねえらしい。やってやろうじゃねえか! このままベッドをかけた大乱闘を繰り広げてやるぜ!
ピンポーン
「……涼太、誰か来たよ」
「母さんいねえし……姉ちゃんは?」
「綾姉ちゃん今バイト」
「しゃあねえな。出てくる」
さっさと寝てえけど仕方ねえ。あくびをしながら玄関のドアを開けて来客対応する。
「はいはい、どちら様」
「あ、りょーたくーん! 綾乃ちゃんいるー?」
まず目に入ってきたのはでっかいおっぱい。そのおっぱいに似合わない幼い顔つきを持つこの人は……
葉山おっぱいだ。なんでここに?
「姉ちゃん今バイトっすけど」
「うーん、そっかー。時間合わなかったなあ」
「なんか用すか?」
「えっとね、昨日まで田舎のおばあちゃん家に遊びにいってたんだよ。そこのお土産買ってきたから綾乃ちゃん達に渡そうと思って! すごいでしょ!」
無邪気などや顔で小綺麗な包みに覆われた箱を見せつけてくる。
「俺が姉ちゃんに渡しときますよ」
「ホント? ありがとーりょーたくん! はいどーぞ!」
葉山おっぱいからお土産を受け取る。中身はお菓子かなんかか?
それにしても、相変わらずでけえおっぱいだ。夏ということもあって薄着なせいでよりぱつんぱつんのぼいんぼいんに見える。
推定Fカップ・・・・・・いや、Gカップか? 高校生のおっぱいじゃねえだろ。犯罪級じゃねえか。けしからねえったらねえぜ!
……あり? 目の前が急に真っ暗になった。何かが俺の目を覆い隠している。
「もー! 見過ぎだってば!」
春花が後ろから耳打ちしてくる。こいつ、後ろから目隠ししやがって! さてはこいつ、さっきの事まだ根に持ってやがるな!
「あ、春花ちゃんもこっちにいたんだ! 元気ー?」
「こんにちわ葉山先輩。兄と綾姉ちゃんがお世話になってます」
「親かお前は」
「あ、そうだ! とーしろーくんと春花ちゃんの分もお土産買ってきたんだよ! 家に帰ったら二人で食べてね!」
「本当ですか? ありがとうございます! 兄と食べさせてもらいます!」
心底嬉しそうに春花がお土産を受け取る。
「春花ちゃんは偉いねー。私より年下なのに、しっかりしてるんだね!」
「いやいや、こいつなんてまだまだガキっすよ。色々」
「なんで涼太が謙遜してんの?」
まぶたを押さえている指の力が強くなってきた。いてて。
「春花よりも先輩の方が全然大人っぽいっすよ」
「え、そう見える? 見えちゃう?」
「やっぱ上級生はレベルが違うってのが見ただけで分かりますよ」
「えへへ、そっかなー?」
どこ見て言ってんだ、と言いたげに春花の指の力がさらに強くなる。いてえっての。
「分かったからいい加減離せって。何も見えねえよ」
「絶対やだ」
「さっき言った事は撤回するから。お前は立派なBカップだよ。だから離せ」
「別にそのこと気にして目塞いでるんじゃないし。とにかくやだ」
「二人ともそんなにじゃれ合うなんて本当に仲良いんだね! 私もそんな仲良い幼馴染が欲しかったなー」
「距離近い奴ってそんなにいいもんじゃないっすよ。勝手に人の部屋で寝てたり遠慮がないんすよ」
「涼太だってこの間私のベッドで寝てたじゃん! 寝相えぐいせいでシーツぐちゃぐちゃだったんだけど!」
「こーら。ケンカしちゃダメだって。 春花ちゃんも手を離してあげて」
葉山おっぱいになだめられて口喧嘩をやめる。手もどけられてばっちり見える。これで拝み放題だ。
「あら、誰かと思ったら奏美じゃない。どうしたの?」
姉ちゃんの声がする。バイトから帰ってきたみたいだ。いらんタイミングだな。
「あ! 綾乃ちゃんだー! さっきおばあちゃん家から帰ってきた所なのー! すっごく楽しかったんだよ!」
「そうなの? ほら、こっちで私にも話を聞かせてもらえるかしら?」
「うん!」
姉ちゃんが葉山おっぱいを連れて外へと向かっていった。
「ふー外はあちーな。さっさと戻ろうぜ」
そう促したが、春花は膨れっ面のままジト目でこっちを睨んでる。
「何だよ」
「涼太はさ、葉山先輩の事どう思ってんの?」
「どう思ってるって?」
「そのさ、恋愛対象かって話」
なんだこいつ。急に変な話振ってきたな。俺にとっての葉山おっぱいは……
そりゃ、もちろん。
「恋愛対象っつーかおっぱい対象だな」
「は? 何? おっぱい対象?」
「俺が好きなのは葉山おっぱいの巨乳なわけだろ。葉山おっぱい自体が好きなわけじゃないんだよ」
「うっわぁ」
「俺の関心は全部あの巨乳に向かってんだよ。それは恋愛感情じゃねえだろ?」
「もう少し建前とか言えないの?」
「何でお前相手にかったるい建前使わなきゃいけねえんだよ。他人じゃあるまいし」
「あーそう……それはそれとして滅茶苦茶キモいからね?」
ドン引きした顔で俺を見つめてくる。何か嫌な予感がする。
「ふう、奏美を見送ってきたわ。あれ、どうしたの春ちゃん」
「綾姉ちゃん聞いてよ 涼太が葉山先輩のことおっぱい対象とか言ってる」
「目に物を見せてあげるわ!」
「ぎゃあああああああああ!!」
いくら春花相手っつっても本音と建て前はしっかり使い分けるべきだと言うことを身にしみてわかった。
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