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久しぶりに出やがった!

 あの後、突然鼻血を吹き出した綾乃を無事に家に届けることが出来た。初夏とはいえ、気温は高いしな。その影響で体調不良を起こしてもおかしい事じゃない。


 翌日、綾乃の体調は良くなったようで、普通に学校には来た。

 学校に来ると言っても、昨日で期末テストが終わったので、終業式をぱぱっとやって帰るだけだが。


 はい、ぱぱっと終わった。校長の話を適当に聞き流し、教室に帰って帰り支度をして下駄箱へと向かっていく。明日からは夏休みだ。


 さあ、遊ぶぞ! 勉強から解放された今、俺を縛る奴は何もない!

 テスト勉強した分、遊びまくってやるぜ!


「待て久我! お前何帰ろうとしてんだ!」


 下駄箱付近に何かいた。デカブツが道を仁王立ちをして俺を待ち構えている。


「え、誰? 新キャラ?」

「とぼけるな! 新キャラじゃなくてご存知影山だ! 今日こそ拳と拳をぶつけ合ってどちらが上か決着をつけてもらうぜ!」

「嫌だっての。それとお前の事なんて誰も覚えてねえよ」


 そういえばいたなこんな奴。屋上で会ってからもちょいちょい絡まれたけど、全部ガン逃げしてきたんだよな。


「いい加減にしろよ影山。俺はもう喧嘩はやめたんだっての」

「うるせえ! 俺はお前と二人っきりで楽しみたいんだ! この熱い気持ちは押さえられねえ!」


 何か言い出したんだけどこいつ。なんか誤解されそうな…


「ちょっと静かにしろよ。周りに丸聞こえに」

「黙って俺の意志を受け取りやがれ! お前とやりあえると思うと血沸き肉踊るこの気持ち……! 受け止めろ!」


 言ってる事キモいんだけど。ん?女子の集団が俺らを見てひそひそ会話しているのが聞こえてきた。


「見て見てあの二人。こんな下駄箱で熱い友情を語り合ってるわ」

「何言ってるのよ。あれはもはや友情じゃないわ。愛よ愛!」

「キャー! まさかのラブ!? ダメよ! 不純異性交遊ならぬ不純同性交遊よ!」

「もっとも、私達は全然嫌いじゃないけど! キャー!」


 何か勘違いして盛り上がってらっしゃる。まずいぞ。このままこいつと話してるとあることないこと噂されてしまう。

 それが知り合いに知れ渡ってみろ。俺はそっち系の人間だと思われてしまう。その事についていじられて、新たな黒歴史の完成だ……まずい!


 持ち前の黒歴史センサーで危機を感じ取った俺は、くるっと後ろを向いて走り出した。


「逃がさねえぞ久我! 今日こそは二人っきりでバトルしようぜ!」

「キャー! 二人っきりでバトル!? きっとバトル(意味深)よ!」

「今日こそは俺がお前の上へと登り詰めてやるぜ!」

「お前の上へと!? ポジションの話!? 普段はあの逃げている方が上なのね! キャー!」


 あのハゲ、誤解される言い回しばっかしやがって! 変な噂流れたらマジでどう責任取らせてやろうか!

 いや、責任つってもソッチの意味の責任じゃなくて……ああ、もう! とにかく逃げろ逃げろ!


「おーい、こっちこっち!」

「おわっと!」


 突然、横から誰かに腕を引っ張られて、そのまま連れていかれる。

 俺が連れていかれたのは三年生の教室だ。既に皆帰ったのか、教室には俺達以外には誰もいない。

 

「畜生! あいつどこに行きやがった! 絶対に今日こそは逃がさねえ!」


 俺を見失ったようで、影山は走り去っていく。あばよ、達者で。


「はぁ……はぁ……ありがとうございます……紫藤先輩」

「いや、いいよいいよ。可愛い後輩の素人くんが困ってるからね。そんなことより素人くんは随分モテモテのようじゃないか」

「先輩も何か勘違いしてません?」

「まあ、私はそういうのを否定したりはしないし……まあ悪いことじゃないと思うよ不純同性交遊」

「違いますってば! あいつは俺が不良だった頃の知り合いで……そういう関係じゃないんですよ!」

「そりゃ、必死にごまかす気持ちも分かるけどさ。自分の気持ちに正直になった方がいいよ? 辛いだろう?」

「一ミリもつらくありませんけど!?」

「ははは、冗談冗談! やっぱり素人くんはいじりがいがある!」


 この人はもう……。完全に弄ばれてしまった。


「それにしたって疲れた……あの時あんな生活送ってなかったらこんなことには……」

「ふーん……ちょっと聞きたいんだけど、どうして素人くんは中学の時にグレちゃったんだい?」

「何すか急に! そんなもん言いたくないですよ!」

「ただでとは言わないさ。これをあげよう」


 そう言ってスカートのポケットから取り出したのは仮面をつけた男のデザインの缶バッジだった。


「そ、それは! デスサバイバル9に出てきた太郎の生き別れの父親であるパンいち仮面の限定缶バッジじゃないですか! どうしてそれを!」

「思いがけず二つ手に入ってね。素人くんにもあげようと思って取っておいたんだ。ほれほれ、欲しいだろ」

「超欲しいです! くださいください!」

「欲しいんだったらなんでグレちゃったか聞きたいなー」

「ぐっ……!」


 あの頃の出来事を先輩に言うのか……? そ、それは嫌だ! 百パーいじられる!

 しかし、目の前に突き付けられた超かっこいいパンいち仮面の缶バッジの誘惑には逆らえない……! 悔しい……でも超欲しい!


「わかり……ました! 話します……!」

「私から言っといて何だけど大丈夫? 口から血反吐吐いてるけど無理してないか?」

「話しますからちゃんと缶バッジくださいよ!」


 これもすべては缶バッジのため……今こそ話そう。おれが!グレたきっかけを!

・パン一仮面

 デスサバイバルシリーズの主人公である太郎の父親。その名の通り、顔を仮面で隠し、衣類はパンツ一丁という頭隠して体隠さずといった格好。

 主人公には正体を明かさずに日々暗躍している。警察関係者に知り合いが多くおり、牢屋越しに談笑することもよくあるようだ。

 

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