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こっそり告白観察

引き続き春花視点です。

「なあ葉山、お前は綾乃が相手の告白をOKすると思うか?」


 四人で校舎裏へ向かう途中、お兄ちゃんが葉山先輩に訪ね出した。


「うーん、どうかなー? 綾乃ちゃんってば、ずっとそういうの断ってきたもんねー」

「何でなんだろうな? 男に興味ねえのか?」


 お兄ちゃん以外の男には興味ないと思うけど。


「わかったぞ葉山。きっと勉強に集中したいんだ。学年一位をキープするのは並大抵の意識じゃ無理だろうからな」

「えー、そうかなー?」

「さっきのテスト中の事覚えてねえのか? あいつ、急に独り言言い出したんだぞ? なんだっけ、甘やかしたーい、だっけ?」


 テスト中にどんな妄想してんの綾姉ちゃん。


「そういえば言ってたね。あれ何だったんだろ?」

「きっと勉強によるストレスとテストでの緊張でつい口走ったに違いない。あいつも苦労してるんだろ。やっぱすげえよ」


 お兄ちゃんは何もわかってない。綾姉ちゃんが勉強ごときでストレスを感じるわけないし、たかが期末テストごときで緊張なんてするわけもない。


「はっはー、マジボケ念仁。こりゃ、いつまで経っても姉ちゃんの気持ちには気付かねえな」


 涼太は呆れたといった口振りでそう言った。視線は斜め後ろからでもよく分かる葉山先輩の胸へと一直線だ。


「涼太、さっきから見すぎだって」

「別にいいだろ。バレなきゃいいんだよバレなきゃ」

「そういうの、女子は皆気付いてるんだよ? いつか通報されるからやめといた方がいいって」

「健全な男子高校生にアレを見るなって言う方が無理あるだろ。俺じゃなくてもガン見するっての。男は皆こういう生き物なんだよ。マジ眼福だぜ、ぐへへ……」

「笑い方キモい。綾姉ちゃんに言い付けるから」

「マジやめろ。いちごシュークリームおごるから」


 あ、ラッキー。思いがけない成果だ。


「つーか、姉ちゃんは姉ちゃんでどうしてトシ兄に告らねえんだよ。フラれると思ってんのかよ」

「……さあ?」

「いつまでこの状態を続けんだよ。何年経ってんだよ」


 涼太は昔から散々言ってきた愚痴をこぼす。


 たぶん、綾姉ちゃんが行動を起こせないのは私のせいだ。涼太にその時の記憶はないけど、私が涼太にフラれた事が原因。

 ずっと一緒にいた幼馴染に告白してフラれてしまうという事例をよりによって、とても身近な存在の私達でやってしまった。それが足枷になってしまって踏み出せないんだと思う。


「お、いたいた。綾乃だ」


 そんな事を考えているうちに、校舎裏へと辿り着いた。皆でこっそり顔を出して様子を伺ってみる。綾姉ちゃんとイケメンの人が向かい合っていた。


「お、今まさに告白しますって感じだな。どうなる?」

「どうなるかなどうなるかな?」


 上級生二人は興味津々だけど、私達二人は普通に興味ない。

 

 二人であっち向いてほいでもしてようかなと思ったけど、涼太はどうやら興味津々のようだ。葉山先輩のおっぱいに。


「こっち向いてほい!」

「いででで何しやがる! 今首ゴキッつったぞ!」

「だーかーらー見すぎだって! 涼太何のためにわざわざここ来たの?」

「葉山おっぱいの先輩を間近で見るために決まってんだろうが」

「何でそうハッキリと言うかな」

「そういうお前は何で来たんだよ。お前も姉ちゃんが告られるの見るの飽きたって言ってたじゃねえかよ」

「そ、そりゃ……だって……」


 自分の見ていない所で好きな人が巨乳に鼻伸ばしているのを考えるといてもたってもいられませんでした。嫉妬ですよーだ。悪いか。


「おい、お前ら。やたら長い前置きが終わってそろそろ告りそうだぞ。よく聞いといた方がいいぞ」

「やたら長い前置き? 何それ」

「イケメンの方が今まで自分の歩んできた人生を語っていたんだよ。これがマジで感動ものでさ」

「うっわ、興味ないんだけど」

「中学の時、サッカー部のマネージャー10人に同時に告られたらしくてな。誰と付き合うか自分では決められないから命懸けのバトルロイヤルで決めてくれって言ったらしいんだよ。マネージャー達があらゆる想いを交差させながら火花を散らしたらしくてさ……さぞかし見物だっただろうな」

「私も泣いちゃった……恋愛ってすごいんだね……グスッ」

「涙を拭くんだ葉山……ほら、そろそろ告るみたいだぜ?」


 何でこの二人今の話で泣いてんの? 泣く要素あった?


「というわけで……柊、俺と付き合ってください!」


 イケメンさんが綾姉ちゃんに頭を下げながらの告白。

 何がというわけなのかまったくわからないんだけど。

 それに対して、綾姉ちゃんも頭を下げた。


「ごめんなさい。気持ちは嬉しいけれど、私はあなたとは付き合えない」


 はい、解散。いつも通り。前に断った時と一言一句違わない返事じゃん。

 涼太を引きずって帰ろうかと思ったその時だった。


「何でだよ。俺の事が嫌いなのか?」

「決してそういう訳じゃないの。本当にごめんなさい」


 嫌いなんじゃなくて、一ミリも興味がないだけなんじゃないかな。


「まさか、他に好きな奴がいるんじゃ……」

「え!? いや、そんなことは……ん?」


 突然、綾姉ちゃんがこちらに振り向いた。そして、満面の笑みを浮かべる。慌てて皆で顔を隠したけど時既に遅し。


「冬士郎! 春ちゃん! そんな所にいたの!」

「げっ、バレた! 物音立てなかったのによく気付いたなあいつ!」


 綾姉ちゃんのお兄ちゃん感知センサー敏感すぎるよホント。

 イケメンさんの事などもう頭にないのか、一心不乱に走ってきた。


「もう! いたんなら言ってくれればいいのに! 冬士郎にこんなところ見られたくなかったのに……」

「覗くような真似してわりぃ。見世物みたいにされて不愉快だったよな」

「いいのいいのそんなこと! 謝らないで!」

「綾乃ちゃん、またきれいさっぱりに断ったねー! もしかして、本当に松本くんの言った通りに好きな人でもいるのー?」

「い、いるわけないじゃない奏美ったら! さ、用も済んだ事だし早く帰ろ! 春ちゃんも涼太も!」


 綾姉ちゃんはウキウキな様子でお兄ちゃんの背中を押して帰路に着く。

 私達もそれに続くように帰ろうとしたけど、涼太が松本と呼ばれたイケメンさんに声をかけられた。


「あのさ、柊の好きな奴って……あいつ?」

「あー、そっスね」


 あっけらかんと涼太は答え、さらに続ける。


「言っときますけど、姉ちゃんに振り向いて貰おうとか考えねえ方がいいっスよ。先輩の名前とか、明日には忘れてるし」

「……そうする」


 そりゃ、フラれた直後で別の男に向かってあんな180度違う対応してるの見たらそうなるって。

 あまりフラれた事を引き摺らずに早く立ち直ってほしいな。


 イケメンさんと別れ、綾姉ちゃん達の後を追う。もう二度と覗いたりなんかしないでおこっと。

メイン四人の搭載センサー一覧


・冬士郎 黒歴史センサー(基本ポンコツ。機能してもほとんど避けられない)

・綾乃 冬士郎センサー(超高性能。物陰に隠れていてもわかる)

・涼太 巨乳センサー(巨乳が来たらわかる。副作用として、おっぱいで頭がおっぱいおっぱいになる)

・春花 涼太のエロ本センサー(どこに隠していても秒で見つける)


面白いと思ったり、続きが気になる方はブクマや感想をいただけると嬉しいです。大きな励みになります。

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