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テスト中でも平常運転

綾乃視点です。

「それじゃ、テスト始め。ちゃんと出席番号と名前書けよー」


 チャイムが鳴ると同時に聞こえた先生の声に従い、出席番号と名前を書き終える。


 今受けている数学のテストで期末テストは終わり。これと、明日の終業式が終われば夏休みになる。


 テストの問題文を横目で見ながら、前の方にいる冬士郎の背中を見つめる。テストを受けている後ろ姿も超かっこいい! キュンキュンする!

 テスト前にも一度、奏美を加えた三人で勉強会をして、色々教えたけど、冬士郎は順調に頭に入れ、かなりの実力をつけていった。相変わらず、奏美に教えるのには苦労したけれど。

 

 春ちゃんと真優ちゃん、ついでに涼太は大丈夫かしら? あのかわいい二人は心配無用かな。二人とも成績優秀だし。

 涼太はたぶん大丈夫。テスト一週間前にも関わらず、音を消して隠れてゲームをやっていたから、私がテストまで毎日付きっきりで勉強を教えてあげたし。


 ほんの少し、スパルタにはなっちゃったかもしれない。睡眠時間を三時間にしたのは良くなかったかしら? ま、いっか!


 あら、そんなことを考えていたら、いつの間にかテストを解き終わってしまったわ。まだ十分程しか経っていないのに。

 こうなったら、余った時間を冬士郎の鑑賞タイムに使うしかないわね! 普段の授業中は授業内容に半分くらい意識を向ける必要があるけど、今のこの時間ならそんな事をする必要もなく、全神経を集中して冬士郎を見つめる事が出来る! わーい!


 心の中で歓喜の声を叫びながら、今もなお問題を解いている冬士郎の背中を穴が空くほど見つめる。

 ああ、答えが分からないのか、頭を抱えている。今すぐにでも教えてあげたい。

 つくづく、冬士郎の隣の席の奏美が羨ましく思う。私なら先生にバレないようにこっそり答案を見せつける事など容易い。ああ、私も春ちゃんと涼太みたいに言葉を交わさずともテレパシーみたいな会話が出来るようになりたいわ……。


 いいえ、ダメよ柊綾乃! いくら大・大・大好きな相手でも、甘やかすのは良くないわ! 

 愛しているからこそ、時には厳しく、時には優しくが大切なのよ! お母さんは甘やかしまくってお父さんを落としたらしいけど、それが必ずしも正しいとは限らないわ!


 で、でも、もし冬士郎が私にだけ甘えてきてくれたら?

 

『綾乃、今日は仕事で疲れた。存分に甘やかしてくれ』


 なんて言われたら?

 

「キャー! 何も言わずにじっっくりと甘やかしてあげたーい!」

「こらそこ、テスト中だぞ」

「はい、すみません」


 まったく私としたことが興奮してしまったわ。反省反省。


 さて、冬士郎の背中を見つめなきゃ。ん? 冬士郎のテストの答案用紙がさっきより右にずれている。

 どうしてかしら? 何か理由があるのかな? よく見ると、冬士郎が呆れたと言いたげな後頭部をしている。


 あ! 右隣の奏美が冬士郎の答案をチラ見した! か、カンニングよカンニング! いくらなんでもこれは……これは……!


 冬士郎ったら超優しい! 困っているクラスメイトに救いの手を差し伸べるだなんて聖母……いや、聖父の鑑だわ! キュンキュンする! 


 決めた! 将来、私が冬士郎を甘やかすんじゃなくて、私が冬士郎に甘えるの! これからの人生に希望が見えてきた! 超楽しみー!


***


「綾乃ちゃーん! 疲れたー! もうテストいやー!」

「お疲れ様奏美。テストはもう終わりよ。これで羽を伸ばせるわね」

「うん! テスト頑張った分夏休み遊びまくるんだー!」

「でもね、奏美。カンニングは程々にしないとダメよ? いつかバチが当たるわよ」

「み、見られてたんだ……そうだよね。これからはやめておくね」

「反省すればよろしい!」

 

 奏美の頭を撫でると幸せそうな顔をする。とても同い年とは思えないあどけなさね。


 冬士郎のテストはどうだったのかな? ちゃんと満足のいく結果を出せたといいけど。

 万が一、冬士郎が補修になったら、せっかくの夏休みが潰れてしまう! それだけは絶対にいやー!


「おーい綾乃ちゃーん? 綾乃ちゃんってば」

「はっ、どうしたの奏美? 聞けていなかったからもう一度言って」

「教室の外で誰か呼んでるよ」

「?」


 教室の外へ目を向ける。

 知らない男子が私に向けて手を振っていた。茶髪に染めたいかにもチャラそうな印象を与えられる。


「誰? あの人」

「知らないの綾乃ちゃん! A組の松本くんだよ。サッカー部のエースで次期キャプテンの!」


 うーん、知らないわ。そんな誰でも知っている芸能人でもあるまいし。


「とりあえず、行ってくるわ」


 席を立ち、松本くんという人の元へと歩いていく。


「私に何か用?」

「突然で悪いけど、校舎裏まで来てくんね? 大事な話がしたいんだ」

「ごめんなさい。この後用事が」

「すぐに終わる! だから一緒に行こうぜ? な?」


 ああ、このパターンか。面倒ね。

 とりあえず、校舎裏まで行って適当に断るしかないか。

 


テスト中でも綾乃さんは平常運転のようです。


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