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男の部屋の必需品

笠井さん視点です。

 涼太くんが参加してからてんやわんやあったけど、なんとかここまで勉強会を進められてよかった。

 それにしても春花ちゃん。涼太くんに対して容赦なさ過ぎだよ……踏んづける事は無いと思うんだけど……。


 そんなことを考えながら、春花ちゃんの部屋へと戻ろうとした時、隣の久我先輩の部屋が開いた。


「おう笠井。勉強は順調か?」

「せ、先輩!? お、おかげさまです! ただいま休憩中で……」

「涼太の奴が何か迷惑をかけたりしていないか? もし何か余計な事言われたりしたら言えよ?」

「だ、大丈夫でしゅ!」

「でしゅ?」

「大丈夫です! 決して援交してそうなんて言われてません!」

「そ、そうか……」


 言われちゃったけど。


「あいつに遠慮することないぞ。俺と涼太は本当の兄弟みたいなもんだからな」

「やっぱり、昔からの付き合いだとそうなんですね。じゃあ、その、柊先輩の事は?」

「綾乃か。あいつは……そうだな。頼りがいのある姉? いや、妹か? そこは深く考えたことないな」


 つ、つまり家族扱いしてはいるんだ! やった! 私にもチャンスはある!


「本当にありがとな。春花と仲良くしてくれて。あいつには中学の時に迷惑をかけてしまったからな」

「え、それってどういう?」

「俺がグレてる間、春花は周りから避けられていたらしいんだ。妹に負担かけて、本当に俺は馬鹿だった。だからその分、あいつには今を楽しく過ごして欲しいんだよ」

「そうだったんですか……わ、私は大丈夫です! 春花ちゃん、すごく優しくしてくれてるし、これからもずっっっと仲良くしていきたいです!」

「……そうか。そう言ってくれると助かる」

「それに、そんなに自分自身を攻めないでください。あの時の先輩は私の……憧れなんですから。あの時の先輩がいたからこそ、今の私がいるんですよ?」

「……笠井」


 久我先輩は微笑む。本当に嬉しそうだった。


「あ、そうだ。今、休憩中だろ? 春花が小さい頃のアルバム見るか? たしか、涼太も一緒に載ってるぜ」

「是非見たいです! 昔の二人とか興味あります!」

「よっしゃ、下から取ってくるから、俺の部屋で待ってろよ」

「はい!……え?」


 そのまま、久我先輩は階段を下っていく。

 ど、どうしよう。部屋で待っててって言われちゃった! ほ、本当に私なんかが入っちゃっていいのかな!?

 お、落ち着こう! とりあえず、入らなきゃ! 先輩命令だもんね!


 慌てながらも、恐る恐る、部屋への第一歩を踏み出す。

 こ、ここが久我先輩の部屋……よ、よくよく考えたら、男の人の部屋に入るのって初めてかもしれない。


 部屋に入ってから、急に緊張してきちゃった。男の人の部屋ってこんな雰囲気なんだ……。


 わ、私、何やってるんだろう。ここには春花ちゃんと一緒に勉強するために来たっていうのに、好きな人の部屋にお邪魔させてもらっちゃって……罰当たったりしないかな?


 それにしても、落ち着いた感じの部屋だなあ。勉強机の上も結構片付いているみたいだし……ん?

 机の隅に置かれている何かの本に目がいった。何だろうこれ?

 何気なく手に取ってしまう。


 表紙には、胸の大きな女性が谷間を強調させている写真が大きく載っていた! 服を見る限り、女子高生の様だけど……。

 こ、これはまさか、えっちな本!? 男の人の必需品だっていうのは聞いた事があったけど、実在するなんて!


 そして、一番目を惹かれたのはこの本のタイトルだった。


『巨乳後輩の誘惑~学校よりも先に童貞を卒業させられた件~』


 み、見てはいけない物を見てしまったのかもしれない! 慌ててえっちな本を机の上に戻す。

 こ、これは私にはまだ早い! 見なかったことにしよう!


 …………。


 久我先輩は年下の女の子が好みなのかな? 

 そ、それだったらやっぱり私にもチャンスがある! もっと先輩の好みを知りたい!

 そもそも、表紙だけで何もかも判断するのは間違っている! 中身を確認しなきゃ! もしかしたら、内容は普通かもしれないし!


 もう一度、本を手に取り、唾をゴクリと飲み込んでからページを捲っていった。


 …………。


 未知の情報が頭の中に吸収されていく。

 こ、こんな大きな胸であんなことやこんなことをするなんて! 恋人同士だとこれが当たり前なのかな!?


 そ、そういえば、春花ちゃんがこんなことを言ってたっけ。


「真優ちゃん気を付けてね。男子高校生は頭の八割がおっぱいに支配されている生き物だから。九割以上支配されている奴もいるけど」


 九割以上支配されている人はついさっき、初めて知ったけど。

 や、やっぱり、男の人はこの本の女の子みたいに胸の大きな人が好きなんだ! でも、私の胸はここまでは大きくはないし……。最近成長してはいるんだけどなあ。

 よ、弱気になるな笠井真優! せめて、こう、大きく見せる工夫は出来る筈!


 こう腕を寄せて、もっと上目遣いで、この本の後輩女子みたいに色っぽく、色っぽく……。

 あ、出来た! この状態を常に心掛けていけば……。


「待たせたな笠井! この幼稚園の頃の春花がホントに可愛らしくてああああああああああああ!! 何読んでんだ!」

「せ、先輩!?」


 胸の谷間を強調させていた私の前には開かれたえっちな本。

 ど、どうしよう! 言い訳のしようがない!


「こ、これはその、私、が、頑張りますから!」


 わ、私は何言ってるんだろう!?


「お、落ち着け笠井! お前は何か勘違いをしている! その本は俺のじゃなくて……」

「ごまかさなくても大丈夫です! 私は決して軽蔑なんてしません! このくらい、男の人なら当然の事ですよね!」

「だから違うっての! 俺の話を聞け!」


 どうしよう! さっきまで、未知の情報を頭に入れちゃっていたせいか、まともな対応が出来ない!


「とにかく! そのエロ本を俺に渡すんだ! こんなのちゃんと隠していなかった俺が悪かった! だから……」


 せ、先輩がこんな近くに! た、確かえっちな本の女の子はここで……!


「こんなことになるなら、こんなもん涼太から預かるんじゃなかった……」

「えいっ!」

「おわっ!?」


 両手を使って久我先輩の肩を押し、ベッドに押し倒す。

 本当に何やってんの私!

 ああ、頭の中があの本の事でいっぱいでいっぱいで……。


「か、笠井さん?」


 完全に虚を突かれた久我先輩が目の前に。は、離れなきゃ! 今ならまだ取り返しがつく!


「コラ涼太! よくも私をあの写真で足止めしてくれたわね! その上、春ちゃんにまた迷惑をかけて……」


 部屋の扉が勢いよく開かれ、柊先輩が入り込んできた!

 

「あれ? 私としたことが冬士郎の部屋に来ちゃった。我ながら恐ろしい本能だわ。あれ、笠井さん?」


 久我先輩を押し倒している私の事を目を丸くして見つめてくる。

 お、終わった……! ここまで来てしまったら、取り返しがつかない!


 明けましておめでとうございます。今年も応援していただけると嬉しい限りです。


 次回は修羅場やろなあ。


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― 新着の感想 ―
[一言] え?おっぱいいっぱい?(難聴)
[一言] 修羅場(コメディ?)か……
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