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こんな幼馴染だけど

 勉強会に涼太が参加することについて、真優ちゃんは嫌な顔ひとつせずに承諾してくれた。その後、涼太を含めた三人でいちごシュークリームを堪能する。

 うーん、あまーい味が口の中に広がっていく。実に幸せな一時だ。


「うん、美味しいよ春花ちゃん! 私もこれから買ってみようかな」


 真優ちゃんも美味しそうに食べてくれている。一緒に食べれて本当に良かった。

 

「あっま。俺、これ以上いらねえからやるわ」


 そう言いながら、食べかけを寄越してくる。この味の良さが分からないなんて信じられない。

 それはそれとして貰うけどね。


「は、春花ちゃん! それ、食べかけだよ!? いいの!?」

「何だよ笠井。俺の食いかけがきたねえって言いてえのかよ」

「そ、そうじゃなくて……その……か、かんせ……」

「え? 何? 小さくて聞こえねえ」

「か、間接キスになっちゃうよ!」


 真優ちゃんは言ってから、顔を真っ赤にする。


「真優ちゃん、別にこれくらいはいつもの事だよ」

「食べかけ食うぐらいで何赤くなってんだよ。高校生になってまでそんなの意識しねえわ」

「う、そ、それはそうかもしれないけど……」

「この年になってまでピュア過ぎるだろ」

「うう……」


 真優ちゃんは涼太に反論出来ずに赤い顔を教科書で隠し続けていた。


***


「はーノート写したら疲れた! 休憩するか休憩!」

「涼太、まだ三十分も経ってない。ていうか、ノート汚すぎ。ホントにこれで提出すんの? 評価下げられるよ?」

「大丈夫だっての。読めればいいんだろ?」

「こんな字解読出来る人なんて私ぐらいしかいないし。ほら見て真優ちゃん。読める?」

「ご、ごめん涼太君。全然読めない……」

「おいおい、笠井まで……」

「あっ、でも私は悪くないと思うよ! ほら、満州語みたいで……」

「真優ちゃん、フォローになってないよ」

「マンシューって何? どっかの国の名前?」


 うーん、やはりと言うべきか、勉強のペースが遅くなってしまっている。やはり、涼太を入れたのは失敗だったかな?

 私はともかく、真優ちゃんの成績に響くのはなんとしても避けないと。


「英語飽きた……笠井、他の科目教えてくれよ」

「ええ……じゃあ、数学やろうか?」

「よっしゃ! 数学なら自信あるぜ! 確か、円の所が範囲だったよな?」

「そうだよ。じゃあ問題出すね。円の面積の求め方は?」

「馬鹿にすんな! それぐらい分かる! 半径かける二乗かけるπおっぱいだろ?」

「お、おっぱい?」


 お願いだから、そんな知性の欠片のない計算式をドヤ顔で言わないで欲しい。


「つ、次! 円周の求め方は?」

「2かけるπおっぱいかける半径」

「一回おっぱ……胸の事から離れようよ!」

「無理だよ真優ちゃん。涼太の頭の九割はおっぱいの事で埋め尽くされてるもん」

「きゅ、九割?」

「女の子と話す時は顔よりまずおっぱいに視線行ってるし」

「何で知ってんだてめえ!」

「ひっ……!」


 すぐさま、真優ちゃんは胸を腕で覆い隠した。

 何だろう。涼太が来てからロクな会話がしていない気がする。


 何だかんだあってから、さらに三十分経過。

 範囲の確認を終えた涼太が仰向けになる。


「はぁ……お前ら、よくこんなバカみてえに広い範囲勉強しようと思うよな」

「バカは涼太じゃん。普段から寝ずに授業受けとけばここまで苦労しなくて済むし」

「うーん、それにしても、笠井がここまで勉強出来るのはつくづく意外だわ」

「え? そ、そうかな? そんなに意外?」

「だって俺、お前に対する第一印象、『援交してそう』だし」

「え、えん……!?」

「涼太ァ!!」


 今のは聞き捨てならない。友達の事を援交してそうなんて言われて黙っちゃいられない。

 すぐさま、寝転んでいた涼太の顔の側面を踏んづけ、その態勢のまま綾姉ちゃんに電話をかける。


「もしもし、綾姉ちゃん? こっちに涼太来てるから早く連れ戻して!」

「な、なんですって! その声色から察するに、良からぬ事をしでかしたに違いない! 待ってて、すぐ行く!」


 涼太は私に踏まれながらも、必死に受話器の向こう側にも聞こえるように大声で叫び出した。


「姉ちゃん! 姉ちゃんの靴の中にもトシ兄の写真入れといたからしっかり堪能しろよ!」

「ふ、ふざけないで! もうそんな手に引っ掛かる私じゃないわ! キャー冬士郎みーつけた!」


 あ、綾姉ちゃん……。

 とはいえ、さすがの綾姉ちゃんも耐性は付いてきている筈。一枚目ほど長い時間の足止めは出来ないだろう。

 

「あーもう! 足どけろ! 俺が悪かった! 悪かったから!」

「ホントに!? もうこれ以上、真優ちゃんに変な事言ったりしない?」

「言わねえ!」

「春花ちゃん! 私はいいから早く退けてあげて!」


 真優ちゃんが言うなら……。まあ、いずれにせよ、綾姉ちゃんがそのうちやってくる。いちごシュークリームの恩もあるにはあるし。


 そして、その後もしばらく勉強会は続く。ちょいちょい涼太がテストに関する愚痴を言うくらいだ。


 そして、頃合いもいいので、休憩を取ることにした。


「私、御手洗い借りるね」


 真優ちゃんはそう言いながら立ち上がる。そのまま、いってらっしゃい、と言って送り出した。


「マジ疲れる。何で勉強なんかしなきゃいけないんだよ。将来、何の役に立つんだよ」

「進学のためでしょ」

「俺達まだ一年じゃねえかよ。慌てて勉強するこたねえだろ」

「中一の時もそんなこと言ってて受験の時に苦労してたじゃん。懲りないよねホント」

「それはそれ、これはこれだ。ふわぁ~~」


 大きな欠伸をしながら涼太はぼやく。そんな涼太にひとつ、聞いておく。


「それはそうとさ、涼太。その、何か急に思い出した事とかない?」

「何が?」

「やっぱ何でもない」

「何だそりゃ」


 やっぱり、思い出せていないか。

 

「はあ……」


 大きなため息をつく。ついてから、涼太に聞かれてないかと思ったけど、寝ていた。休憩中だし、しばらくこのままでいっか。


 ふと、涼太の寝顔を覗き見る。物心ついた時から見慣れてきた顔。他の女子達がイケメンだと噂していた。私からすれば、あまりにも見慣れすぎて、よく分からない。


 それでもやっぱり、私はこの幼馴染が好きだ。友達としてじゃなくて、異性として。

 ところが、涼太は私の事を異性として認識していない。


 私はすぐにそれを察知し、意識させてやろうと思って、中学の卒業と共に()()に移った。

 それなのに、それなのに……!


「ホントに何で告白した時の事、忘れちゃうかな?」


 起きない涼太の顔を見つめながら小さく呟く。


 



 


 一体、春花と涼太が中学を卒業した後、何があったのか。

 続きが気になる方や面白いと思った方はブクマや感想をしていただけると嬉しいです。大きな励みになります。

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