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柊綾乃は超欲しい!

 幼馴染と別れ、家に着く。そのまま急いで二階の自室へ直行する。ベッドの上の抱き枕を強く抱き締めながら呟いた。


「私、冬士郎と一緒に帰っちゃった! これはもう恋人と言ってもいいんじゃない!?」


 言ってから気付いたけど、全然呟きになっていなかった!

 冬士郎、今日もかっこよかったなあ……中学、いや小学生の頃からかっこよかったけど高校になってからさらに磨きがかかっているもの!

 高校一年の間はクラスが違うせいで会う機会も少なくなっちゃったせいか、冬士郎は私と話す時は非常に素っ気なくなっちゃった。ていうか、顔すら満足に合わせてくれないし。

 私も私。高校になってから更に超かっこよくなった冬士郎と面と向かって話すのが恥ずかしくなって、とりとめのない会話しか出来ない。本当はもっと昔みたくお話ししたいのに! 


 それにしても、どうして冬士郎は顔を合わせてくれなくなったんだろう? もっとかっこいい顔を見ておきたいのにな。 

 もしかして、あの時の事を未だに気にしているのかな? 中学三年のあの時を。

 いや、そんな訳ないわね。私は全く気にしていないし、長い間引っ張り続けるような事でもないし。私の王子様に限ってそんなことはありえないわね。


 ま、まさか! 冬士郎も私に恋してる!? そのせいで恥ずかしくて目を逸らしている!? あの冬士郎が!? 中学の時にあれだけ懇親的に関わったのに私の想いに気付かなかった冬士郎よ!?

 も、もしそうならりょ、両思いって事になっちゃう! もしかしたら冬士郎も今頃ベッドの上で悶絶しているかもしれない!


「キャーーーー!! そんな冬士郎も可愛くて大好き!!」

「さっきからうるっせえな姉ちゃん!」


 扉を蹴り開けて一つ下の弟の涼太が入ってきた。レディの部屋にノックも無しに入ってくるだなんて相変わらず失礼な子ね。春ちゃんの部屋に行く時も毎回こんな感じなのかしら?

 すぐににやけていた顔を真顔に戻して対応する。家族相手でも私の想いは打ち明けていない。持ち前の演技力でどうにか隠してきたのよ。


「何よ涼太。嬉しかった時くらい叫ばせてよ」

「そんなにトシ兄と一緒に帰れたのが嬉しかったのかよ。ピュアか」

「どどどどうしてそこで冬士郎が出てくるの? 偶然帰り道が一緒だっただけよ。関係ない関係ない」

「言っとっけど何も隠せてねえからな? 小学生の頃から家族全員にバレてんのまだ気付いてねえの?」

 

 そう言いながら携帯をいじり始めた。


「じゃ、俺トシ兄と一緒に部屋でゲームやってるから邪魔すんなよ」

「え、何。そんな約束してたの? 冬士郎が柊家こっちに来るの?」

「ライン通話しながらやんの。トシ兄こっち来ねえから」


 携帯の画面をこちらに向けてくる。”久我冬士郎”。冬士郎の携帯の連絡先だ! 

 この愚弟が。私を差し置いて冬士郎のラインを持っているだなんて。私がスマホを買ってもらったのは中学を卒業してからだったから……その時辺りから今の妙な関係になっちゃって冬士郎のラインはまだ持っていないのよね。

 そんな今でも涼太とは普通に接しているみたい。いいなあ。


「何物欲しそうな顔で見つめてんの? そんなにトシ兄のライン欲しいのかよ? なんなら連絡先そっちに送るけど」

「何言ってるの? 別に今は冬士郎の連絡先を急いで欲しい訳じゃないもの。メリットが無いじゃないメリットが」


 超欲しい! 今すぐにでもライン送ってトークしたい! でも、私にはそんな度胸がない。今、この愚弟を利用して冬士郎の連絡先を手に入れるのは簡単だ。でも、当然向こうのラインの通知に私が冬士郎の友達になりましたって出ちゃう! そんなの恥ずかしい!


「ここでもらったらまるで私が冬士郎の事が大好きな恋する乙女みたいじゃない!!」

「姉ちゃんは乙女っつーか珍獣だよ」

「私は決してそんなこと思ってないわ! 馬鹿な勘違いしていないで部屋から出ていって!」

「あーうっぜえ。はいはいわーったよ、ラインの連絡先ひとつでグチグチ面倒くせえよ姉ちゃん」


 涼太は心底ウンザリそうな顔をして部屋から出ていった。よし、我ながらなんて演技力、今日も私の恋を悟られずに誤魔化す事に成功したわ!


 鈍感な涼太の事だから当分は大丈夫だろうけど、万が一にもバレる可能性はある。警戒をしておく必要があるわね。


 それにしても、未だに同じクラスになれたことを思うととても嬉しい。高校一年の時は疎遠になってたけど、その分挽回しなきゃ! 明日も後ろからこっそりつけて偶然を装って一緒に帰ろうかな。

 そ、それじゃまるでストーカーみたいじゃない! 今日はただ魔が刺しちゃっただけ! いい加減にしとかないとバレちゃうわ!

 大丈夫! まだ四月、二年生が始まったばかりよ! 今はとにかく、ずっと見れていなかった冬士郎を後ろの席から見続ける事に専念しなきゃ!




 

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