柊涼太は集中できない
なーにが“毎日家掃除してるー”だ。俺を無理矢理大掃除に参加させた恨みは忘れねえよ。
大体、家が向かいの幼馴染が来るくらいでそんなに必死こいて掃除なんかするか普通? まあおそらく私はしっかりしていいお嫁さんになりますよーアピールだろう。
そんな回りくどい事してアホのトシ兄が振り向いてくれると未だに思っている辺りやっぱりアホだ。
さて、そんな過ぎたことは置いといて。
姉ちゃんが滅茶苦茶巨乳の友達連れてきた! 頭撫でられたんだけど! 何あの人!
トシ兄あんな人と同じクラスで席隣なの!? 俺だったら絶対チラチラ見るし、とても授業に集中出来ねえんだけど!
どこぞの勉強が出来るまな板とはえらい違いだ。
ん? ラインに着信が来た。春花からだ。
『うるさい』
何あいつ、エスパー? 悪タイプにでもなって効果が無いようにしねえと。
それにしても、一つ上ってだけであんなに違うもんなんだなあ。あれが大人のボディーって奴か。ホントに隣の席のトシ兄が羨ましい。
おっとやべーやべー。巨乳の事で頭がおっぱいおっぱい……間違えた、いっぱいいっぱいになってしまった。俺もあんま余裕ねえんだし勉強しないと。
綺麗な状態の数学の教科書を取り出して眺め始める。どれどれ、円周の求め方は2かけるπかける半径か。
円の面積は半径の二乗かけるπか、成る程成る程。
一ミリも集中できてねえ。おっぱい二乗するって何? 確かにおっぱいは二つで一つだけど。意味が違うか。
よし、数学はこんなもんだろ。後は選択問題が多いことを祈るだけだ。あれ、数学って選択問題ある教科だっけ? まあ無いことはないだろ。多分。
結局、それから勉強したものの、何一つ頭に入ってこなかった。
同級生の女子とは違うたわわなお胸を至近距離で見てしまったのは失敗だった。よりによって巨乳好きな俺にはきつい。
ちょっとした息抜きにスマホをいじるか。お、好きなゲームのRTAの動画上がってるじゃん。見よ見よ。
そんなこんなで一時間経過。テスト前の学生がする行為じゃないとつくづく思うわ。なんでテスト前のサボりってこんなに続くんだろな。
「皆ーご飯よー」
母さんの間の延びた声が聞こえてくる。もう昼飯か。腹も減った事だし食うか。
***
食事中も俺の視線は目の前でうまそうに昼食を食べる葉山先輩のでけえおっぱいをガン見。だって気付きそうにねえし、巨乳フェチに堪えろと言われても無理だし。
「ごちそうさまでしたー! 美味しかったです!」
葉山先輩は満面の笑顔で手を合わせる。
「あらあら、お口に合って良かったわー。冬士郎君はどうかしらー?」
「久しぶりに食いましたけど、やっぱスゲー美味かったです」
「あらあら、相変わらずいい子ねー。綾乃ったらいい友達をもったみたいで嬉しいわー」
母さんが嬉しそうに頬に手を当てる。そのまま、食器をシンクに持っていって洗い出した。
「あ、手伝います!」
「あらあら、いいのよいいのよー。あなた達は昼からのお勉強頑張ってねー」
俺も含まれてんだろうがだりーな。おっぱいしか頭にねえもん。
「涼太ーお皿洗うの手伝ってー」
このあらあらババア、俺がギリギリにならないとまともに勉強しないことを見破ってやがるな。
めんどくせー食器洗いを済ませてさっさと部屋に帰る。
そして、RTAの動画を見終わってお勉強タイム、とはいかず、机の引き出しの奥に隠しているエロ本を取り出して読み始める事にした。前にはベッドの下に隠していたけど姉貴や春花に速攻で見つけられ、場所を変えていた。あいつらずかずか入ってくるし。
ベッドに寝転がってエロ本を読み始める。あーやっぱいい。スマホでエロサイト見るのとは訳が違う。紙だからこその素晴らしさってやっぱあるわ。
―――コンコン
ノックされた。時間は三時前。おそらくトシ兄だろう。
「んー」
エロ本から目を離さずに返事する。男であるトシ兄相手に今さら隠す必要なんてない。トシ兄も俺が巨乳好きだというのは知ってるし、なんならドスケベな猥談だってしたことがある。
「わーい! おっ邪魔っしまーす! 遊びに来たよー!」
葉山おっぱい……間違えた。葉山先輩が嬉しそうな顔をして部屋に入ってきた! 予想外の来客に慌てて、咄嗟にエロ本を枕の下に潜り込ませた。
「は、葉山先輩? 勉強はどうしたんスか?」
「三十分だけ休憩時間取ることにしたんだ! ちゃんとこの後勉強するからだいじょーぶ!」
「そ、そうスか……」
「コラコラ、りょーた君もベッドで寝ていないでちゃんと勉強した方がいいよ! 私みたいになっちゃうから!」
「は、はあ……」
寝てたんじゃなくてエロ本読んでましたなんてとても言えない。枕の下からはみ出たエロ本をしっかりと隠しながら返事する。
「あ! もしかして緊張してる? だいじょーぶ! 先輩だからってそんな気を使う必要なんてないよ!」
葉山おっぱい……じゃなくて葉山先輩がベッドの上に座り込んできた。距離感近いなこの人。
そのまま、俺の部屋のテレビ周辺の床に目線が向いていた。
「わーすごーい! 色んなゲームあるー!」
葉山おっぱいはテレビの前に乱雑に置かれているたくさんのゲーム機をじっくりと見始めた。俺の部屋に置かれているゲーム機はレトロな物から最新機種まで一通りは揃っている。何個かトシ兄含めた友達に貸し出しても全く支障がない程だ。
六年か七年前に発売された懐かしいゲームを見て葉山おっぱいは目を輝かせている。
「わーこのゲーム私も昔やったなー懐かしいなー」
「それの最新作、この間出ましたよ」
「ホントー! やっていいやっていい!?」
「いいッスけど……勉強は?」
「今は休憩中だしいいの! 三十分くらい息抜きしてもだいじょーぶだって!」
そうか、それなら。最新機種の勝手がわからない先輩の代わりに電源を付けて起動させる。
「すごーい! やっぱり面白いなー!」
さすが過去作をやっていただけあって、俺の教えなしにサクサクと進んでいく。
ちなみに俺の視線は葉山おっぱいの先輩に釘付けになっていた。でかいなあ。
そういえば、今葉山おっぱいがここにいるということは、姉ちゃんとトシ兄は二人きりか。幼馴染とはいえ、異性が部屋で二人きり。欲情されて襲われていなければいいけど、トシ兄が。
つーか、むしろ欲情してんのは俺の方だけど。楽しそうにゲームを進めていく葉山おっぱいを見ながらそんなことを考える。
いや、さすがに初対面の先輩相手に手を出すなんてことはしねえけど。そんなことしたら姉ちゃんや春花に殺されるだろうし。
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