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三回連続


 落ち着いてきたスカーが話をしてくれた。


 学んだ魔法のコツを、魔力がない俺に言ってくるんだ。


「自慢か?」


「スカーの魔力で、唱えて欲しくて」


「……分かった」


 教えられた魔法は覚えておこう。


 また咳き込んだスカーの血を貰って、活力にしていく。


「大丈夫か?」


「話、しよ」


「どんな話だ?」


「一緒に過ごしたお話がしたいよー」


 あの時、どんな気持ちだったのか。


 そんな話をしてみる。


「スカーからチューしたこと覚えてる?」


「ゴリ先生の授業で剣を握った時だな」


「本当はチューしたかったからチューしたんだ」


 故意だったのか!


「俺は……なんだこいつって思ったな」


「スカーはこの頃からリュウキの事が好きだった」


「俺のどこがよかったんだ?」


「火の玉から防いでくれた時と、プランγ(がんま)でお姫様抱っこしてくれた時と……全部!」


 思い返してみると、スカーはこの辺から変わった気がする。


「嬉しいな、それは」


「リュウキはスカーのどこが好き……?」


「むうって怒ってる時の顔が好きだよ」


「……むう」


 唇をすぼめて不機嫌そうになる感じが本当にかわいい。


「だからイタズラしてたぞ」


「ひどい」


「好きな人には意地悪したくなる」


 近づくだけでキスはしないとか。


「……早くチューして!」


「欲しがり屋だな」


「いじわるー」


 その時の反応が俺は好きなんだ。


「それよりもっと話をしよう」


 俺はスカーと永遠に話していたい。


「異世界の前の話する?」


「つまり、学生時代とか?」


「今は女の子だから、別の視点で考えれるよ」


「面白そうだな」


 この辺は、どんな答えが最適だったんだろうなって話して。


 スカーが客観的に「こうした方がいい!」って言い切る。


「本当か?」


「じゃあスカーが受ける役するから、やってみて」


 スカーの手を取って、顔に当てる。


 手のひらの匂いを胸に押し込んだ。


「……いや、キモくね?」


「スカーは、ドキドキ、してる」


 スカーの価値観もねじ曲がっていた。


「それはスカーだしな」


「次は初恋の人と話す時だけど、オロオロするよりは押し倒してダイレクトに言った方が〜」


「スカーがして欲しいことじゃん」


「バレちゃった」


 して欲しいみたいなので、スカーを押し倒してみる。


「べ、ベッドでそんなこと……」


 人差し指でスカーの口の端を拭う。


「や、やだ、指いらない!」


「血を拭っただけだぞ」


「ちぇー」


 吐いた血がわずかに残っていたんだ。


「昔見たドラマみたいに三週連続で襲われてみたいなあ」


「連続ってのは運がなかったよな」


「リュウキ、三回連続で襲ってみて」


「そういう趣味はない」


 何度かねだってきたが、無視する。


「むー!」


 俺の腕を広げてスカーが入り込んでくる。


 俺の足にちょこんと座ったスカーが重そうに腕を抱く。


「……襲われた!」


「かわいいな」


 離れないようにスカーを抱き寄せた。


「たべられるー」


「食べるなんてもったいない」


 首筋の匂いを嗅ぐと、くすぐったそうに肩を上げる。


「嗅いじゃダメだよ……」


「食べるのはいいのか」


「ダメだけど、リュウキを食べようとしたから、スカーに拒否権はないよ」


 俺を食べようとしただと!


「でもスカーって不味そうだな」


「ま、まずくないもん!」


「体は丸くないし、食欲がそそられない」


「う、ううーー!」


 何か文句があるらしく、睨んでくる。


「なんだよ、言ってみろ」


「……」


 何も言えないのか、黙って涙を浮かべる。


「謝らないと泣いちゃうよ……」


「ごめんよ」


「じゃあ、いいよ」


 仲直りした俺達はいつものように屋台で食事を取って夜を明かす。


 何度目かの朝。


 何度も寝なかった日。


 この場所でスカーの目覚めを待つのは慣れてきた。


「けほけほ」


 目を閉じて咳き込むスカーの口を塞いで吐き出される血を吸う。


 同時に目覚めたスカーが驚いたような目をする。


 数分キスして離れる。


「血吐いたから、リュウキに怒られる夢を見た……」


「怒るわけないだろ?」


「ぺっ」


 スカーが手のひらに唾を吐く。


「……舐めて」


「なんでだよ」


「なんとなく、して欲しいから」


 して欲しいならしてあげるか。


 手のひらに乗った唾液を舐めとる。


「えへへ……」


「幸せか?」


「うん」


 スカーは横になるとキスをせがんでくる。


「最後にチューしたいな」


「なあ、別の話をしよう?」


「なんの話?」


「その、あれだ、なんていうか、俺がサラと居た時の話だ」


 スカーが「もう聞いたよ」って呆れたように言う。


「じゃあ、俺の、美味しかった食べ物ランキング、とか」


「一位、アルカデリアン。前にしたよ」


「嫌いな食べ物ランキング」


「リュウキは、リザードの肉とブドウと豆類が嫌いだけど、サヤエンドウだけ食べれるんだよねー」


 中身が俺だから、知ってるのは当たり前か。


「……話、つまらなかったよな」


「ううん、答え合わせをしたからリュウキのお嫁さんになれた気がしたよ」


「そ、そう、か」


 寒くないのに、声の震えを抑えれない。


「早くチューしたいよ」


 したら、終わる気がする。


 終わらせたくないのに。


「……分かった」


「ありがと」


 唇を重ねて、最後の甘い時間を過ごす。


 スカーが前みたいに息を止めてる。


 終わったら、言ってやろう。『童貞みたいだな』って。


 顔を離す。


 スカーは目を閉じたままだった。


「起きろよ」


 開かない目。


 止まった呼吸。


「童貞みたいだな……俺が」


 その場から崩れ落ちることしかできなかった。

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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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