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アランデル

「アランデル……?」


「ええ、魔力って基本的に使い切った方が健康に良いんです」


「なぜ?」


「蓄積された魔力が体外に血として過剰に出される、これがアランデル症です」


 聞いたことがない、魔力がある世界では当たり前なのか。


「アステル先生が百キロを超える杖を持つのもこれが理由なんです」


「杖に魔力を沢山送り込めるから?」


「そうです、健康にいい上に魔力を保存できる。上位の魔法使いは早死なんですが、アレは革命でしょう」


 アステル先生って凄いんだな。


 いや、そんなことはどうでもいい!


「な、治るんですか?」


 白衣の人は首を横に振る。


「発症するほどの魔法使いはほとんど……」


「まだ、可能性は」


「あるかもしれないですね、彼女を寝かせてみましょう」


 案内された部屋には二人で寝れそうなベッドがある。


 何も言わないスカーをベッドに寝かせる。


 不安そうな目で俺を見ているが、不安なのは俺もだ。


「けほけほ」


 咳き込むスカーは塞いだ手の隙間から赤い液体を零す。


「布をどうぞ」


 スカーは渡された衣類で血を拭いた。


「……大丈夫か?」


「うん」


 少し経って、いつもの男がやってきた。


「遅いと思っていたが、アランデルか」


「ああ」


「神の嫉妬とも言われる名誉な病なのだが、王は寝込んでしまうだろう」


「俺はへ、平気だぞ」


 本当はキツい。


 でもスカーが一番辛いんだ。


「少し、手紙を王に送っておく。近くに居てやってくれ」


「分かってる」


 その場を男が去るとなんとも言えない空気が広がる。


「なあ、スカー」


「どうしたの」


「久々にイチャイチャしないか?」


「……したい!」


 スカーの横に寝て、バカみたいに過ごす時間が俺は好きなんだ。


「スカー、舌出して」


「こーお?」


 舌先を何度か舐める。


「なんかかわいいな」


 舌を出して呑気に待つ姿がたまらなくかわいい。


 俺が言ったら頬が赤くなるのもかわいい。


 それでも舌が出たままで……。


「よしよし」


「んー!」


 全てが愛しくてたまらない。


 俺はスカーを抱きしめて過ごした。


 抱いたまま血を吐かせてしまって、俺の顔にべっとりかかる。


「ご、ごめんなさい……」


 嫌な気はしなかった。


「いいよ、スカーが舐めてくれたら」


「がんばる」


 スカーの舌が俺の顔を撫でる。


 熱っぽい温度が心地いい。


「もういい、血の味は嫌いだろ?」


「でも……」


「スカーに舐められたかったんだよ」


 残りの血を布で拭くとスカーが俺の上に乗る。


「おねがいしてもいい?」


「どうした?」


「リュウキの上でずっと寝たいよ」


 一緒に寝るのは最高だな!


 スカーはスタイルがいいから抱き心地も悪くないし、重くもない。


「良いけど、お礼とかできない?」


「おっぱいしかないよ……」


 不安そうに目を泳がせてる。


「冗談だ」


「触って、欲しいな」


 おっぱいを眼前に寄せると誘惑するように揺れる。


「よこしまな気持ちとかないからな!」


「うそつきー」


「ほ、本当だぞ!」


 しかし、誘惑に負けた右手でそれを掴んだ。


「ふむふむ、ちょっと感心してるだけだから」


「素直じゃないから没収する!」


「素晴らしい揉み心地だからもうちょっと触らせて」


「じゃあいーよー」


 力尽きるように俺の胸にスカーが倒れ込んでくる。


「ずっと揉んでていいよ」


「それは贅沢だな」


「スカーはリュウキのモノだから!」


 こんなにデカい子供は俺のモノだったのかー。


「いや、要らないよ」


「もう触っちゃダメ!」


 スカーの怒りに触れてしまったのか、揉んでいた手が払われてしまう。


「なんでだよ」


「たまには自分で考えて!」


 キッて睨まれると怖い。


 そんなに悪いこと言った?


「分からないなあ」


「……ふんっ」


 不満そうに俺の体で寝転がる。


「怒らないでくれよー」


「じゃあ、コップ」


 指示されてベッドから降りる。


 近くのコップを取ってスカーに渡す。


「お水飲むけど、飲み終えるまで立ってて!」


 そう言って指で水を注ぐとごくごく飲む。


「ぷはー」


 ……会社の上司にありそうな嫌がらせだ!


「飲みたい?」


 ちょっと飲みたい、でもな、負けた気がするな〜。


 俺も対抗してその場で体制を崩した雰囲気を演出する。


 そして偶然にも、スカーの太ももに顔を埋める。


「リュウキのえっちー」


 俺は決して動かない。


「……えっちだよ?」


 まだ動かない。


「……起きてー」


 忍法、死んだフリ!


 飲み物どころではなくなったスカーが俺の体を揺する。


「おーきーてー」


 心配そうな声が聞こえてくる。


「変な冗談はダメだよー」


「……」


「あれ、あれぇ……」


 だんだんと情けない声に変わってしまう。


「一人は嫌だよお」


 起きてみると唇を噛んだスカーが目に涙を貯めていた。


「死んでないぞ」


 少し遅かったのか、スカーが泣き出してしまった。


「落ち着けって」


「だって、だって……」


 鼻を啜って俺の体に抱きつくとまるで離れない。


「一人で死ぬのは嫌なんだもん……」


 ポロポロ涙が溢れる。


「そう、だよな」


 まだ死ぬとは限らない。


 有り得るか分からない嘘は吐けなかった。

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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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