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無礼講








『あったかーい』


 とろけるような声で呟くスカー。



「俺もスカーには綺麗な服着て欲しいが」


「主人公はリュウキだから、スカーなんてボロ布でいいんだよ!」


「それはないな、俺なんて魔力ないしな」


「スカーにとってリュウキはカッコよくて優しい主人公なの!」


 はっきり言われると照れる。


「そうだな?」


「毒林檎を食べて倒れたら、リュウキのチューで目覚めるよ〜」


 かわいい話だ。


 キスしたら機嫌が良くなるのと一緒か。


「ありえないって顔してる!」


「そうか?」


「分かりやすいから!」



 そう言うスカーも「ありえるもん」って顔してる。


 分かりやすくほっぺたを膨らませて。



「キスしてやるから落ち着け」


「投げやり感はきらい!」


 わがままなやつだ!


「じゃあどうして欲しいんだ」


「……チュー」


「ほらな」


「じょ、じょうだんだもん!」


 じゃあ言ってみろ、どうして欲しいんだ。


「投げやりじゃないから、チューしようよっ」


 冗談なのは投げやり認定の方だったのか!



「いや、ダメだな」


「なんでー?」


「確かに投げやりだったから」


 キスしとけばなんとかなるだろって本当に思ってた。


「じゃあえっちしよ!」


「そういうのもよくない」


「スカーは良いよー」


「歩きながら話そう」


 スカーの手を引いて、外に出る。


『待っていたぞ』


「遅れてすまない」


「ついてこい」


 ついて行きながらスカーと話をする。



「抱っこして」


「そうだったな」


 うつむくとスカーの手が俺の首に巻き付き、引き上げると足も腰に巻き付く。


「ありえないとか思ってごめんな」


「別に、いいよ」


 あまり怒ってなさそうな声で安心した。


「でも俺は、スカーが死にかけたらなんでもするからな」


「本当?」


「毒なんて吸い出してやるから、その時は目覚めてくれ」


「えへへ……楽しみ」


 抱きついてきたスカーが頬ずりしてくる。


「髪で前が見えねえ」


「安心したんだもん……」


 学園から出て更に歩くと城が見える。



「失礼はないように」


 城の門をくぐって中に入る。



 広い場所を進んで階段を上がった先の扉に、二人の騎士が槍を立てて前を見ていた。



「なんだ貴様達」


「ローザを救った者だ」


 男が応えると騎士はその場を退いた。


「通れ」


 俺達は二枚扉を押し開けて中に入った。


 周囲は色んな人がいるが、進んだ先の大きな椅子にローサが腰掛けている。


 スカーを抱っこしたまま歩く。


 スカーの顔を見たくて、イタズラにスカーを引き剥がす。


「……」


 恥ずかしいのか、顔が真っ赤だ。



「英雄のローザ殿に背を向けるとは失礼だぞ!」



 誰かが言った。


「落ち着け、気にしてなどいない」


「ぐ……」


 ローザの言葉で周囲が凍ったように沈黙する。


「よくぞ参られた」


「……」




『英雄の私が叶わなかった存在、反逆者のモルゲンレーテ・サラにトドメを刺したと聞いている』




 震える手を握り拳で誤魔化す。


「その言葉、お褒めに預かってよろしいか?」


「失礼だぞ! 敬意を払わんか!」


 周囲の声は気にしない。


「褒美として上位クラス相当の部屋を一人分用意しておいた」


「要らないから帰る」


「ま、待て!」


 ローザが俺を引き止める。


「何が欲しいか、言ってみろ」


「もう手に入らねえ」


 俺はその場を去って城から出た。



「良かったのか?」


 男が心配そうに聞いてくる。



「反逆者って言われて、我慢できなかった」


 短い悪夢を見た気分だ。


 追い出した人間がモルゲンレーテって呼んで、何も知らずに反逆者だと。


 俺は違和感を頼りにポケットをまさぐった。



 中からローザ人形が出てきた。



「なんであるんだ?」


「忘れ物かなって思ったから、こっそり入れておいたんだよー!」


 見ててイライラする。


 俺からすれば、ローザの方が死んで欲しかった。


 あの時、サラを止めるべきじゃなかった。


 捨てるように人形を手放した。


「もったいないよ?」


「ゴミだろあんなん」


『スカーがお人形さんってこと?』


「……そうだな」


 学園に戻って教室に向かうと、既に授業が始まっていた。


「魔法っていうのはですね」


「アステル先生! 紙をチラチラ見すぎです!」


「朗読してるから当たり前でしょう!」


 安定のサボり授業だった。


 スカーが途中で先生と話してて、その時はなんの話をしているのか分からなかった。


 それから久々に復興した屋台でアルカデリアンを三人で買って、部屋に戻った時。


「ねえねえ」


「どうした?」


「数日くらい、ここから離れてもいいかな……?」



 スカーが絶対に提案しないと思っていた、俺の元から数日離れる宣言。



「えっ?」


 なんて返せばいいんだ……?








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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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