トルマリン
俺は、刀を握ってその場を後にしないといけない。
本当はサラを担いで行きたいのに。
男は言っていた。
『ローザを傷つけた存在に死体の清めは許されないだろう』
申し訳程度にスカーが火を放った。
「……」
学園まで戻った俺は教室に行く気になれず。
「俺は、部屋に戻る」
「スカーも!」
「行っとけって」
スカーがベッタリくっついて離れない。
「落ち込んでるリュウキを慰めなきゃ行けないからー」
振り離す気力もない。
「一緒に居てあげなきゃ、何するかわからないもーん」
部屋に戻って、いつものベッドに向かう。
カロンはもう行っているみたいで、どこにもいない。
「一緒に寝てあげるっ!」
仰向けに寝ると重なるようにスカーが乗ってきた。
「どうして欲しい?」
抱き枕のようにスカーを抱いて息を吐く。
「……冷たいからそんなに落ち着かない」
スカーはめちゃくちゃ冷たくて、冷え性としては度が過ぎてる。
「冷たくてごめん」
「悪くはない」
スカーの熱っぽい咳が肌を掠めた。
「そっちは暖かいか?」
「リュウキのおかげで幸せ」
ならいいか。
「俺はちょっとさむくなってきた」
「……離れるね」
抜け出そうとするスカーをギュッと抱きしめる。
「行かないでくれよ」
「役に、立ててないから」
一緒に居てくれるだけで充分だ。
「居なかったら精神が崩壊してもおかしくない」
「リュウキも思ってる! こんなに面倒なスカーに優しくしても、対価がこれっぽっちなんだって!」
「じゃあおっぱいでチャラにしよう」
胸に手を添えて、心音を聞く為に耳を当てる。
「スカーは拒否できないもん……」
トクトクって音が聞こえてくる。
スカーの音はかわいいって感じる、本人がかわいいからか?
「ちょっとだけ、寝かせてくれ」
落ち着くからか。
『いいよ』
そのまま寝ることにした。
『あなたと冒険したいです』
「いいよ」
見覚えのある姿に懐かしみを覚え。
そんな感覚に足元をすくわれながら、そいつの手を引いて春夏秋冬を歩いた。
「綺麗な鳥が鳴いてますよ!」
「そうだな」
トルマリンを食べたような赤い鳥が鳴くと風が吹く。
「なんとなく、落ち着きませんか」
「たしかに落ち着く」
深呼吸をする度に気分が変わる。
「それは良かったです」
今は幸福。
「次は夏を見に行きたいな」
「今度、行きませんか? 右手の涙と一緒に」
サラリと光が途絶えて体が起きる。
スカーが目の前に居た。
「あ、あれ……」
右手で頬に触れると水が流れていて、震える喉で深呼吸に頼った。
悲しく、なった。
「よしよし」
スカーが目を見て撫でてくれる。
「悪い、ジャケットが濡れる」
「大丈夫だよ」
「このまま忘れれないかもしれない」
助けを求めて目を見ると、俺の肩を掴んで倒してきた。
「寝て忘れろってことか?」
「……スカーが、忘れさせてあげるから」
ズリズリと下がったスカーは、俺のベルトに手を添えた。
『泣かないで』
そう言ってカチャカチャと外すと一気に下げられる。
「は、はあ?」
スカートをたくしあげたスカーが近づいてくる。
「いや、いいから、そんなん要らない」
手を降って拒否してもスカーは止まってくれない。
「だって可哀想だもん」
「俺の為に体を売るお前の方が可哀想だ」
「それは違う!」
ピシャリと否定され、俺の下半身がスカートの中に収まっていった。
『スカーは、リュウキとしたくてたまらないもん……!』
俺はスカーに勝てなくなっていた。
「はやく、りゅうきとひとつになりたいよ」
男として、スカーとしてみたいと思ってしまった。