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聞こえた言葉







 かわいいスカーを抱っこして門の外に出る。


 久々に出た感想は特にない。


 鉄が擦れる音と魔法の音が聞こえてくる。



『サラよ! なぜ刃を向けるのです!』



「…………!」


 キンキンと剣がぶつかる。


 姿を消したサラが瞬く間にローザの背後で刀を叩きつける。


「仲間や、他の国にも剣を振るったのはなぜ?」


 振り返って受け流すローザ。


 倒れた女騎士が周囲で紅く染まっている。


「なぜだと聞いている!!」


 サラを吹き飛ばし、空いた手を突き出す。


『ファントムコール』



 高速で発射された魔法をサラは簡単に避ける。



「答えないならば」


「……」


「慈悲はない!」


 ローザの持つ剣が光を帯びる。


「モルゲンレーテの恥晒しめ!」


 武器同士が火花を散らしてぶつかる。


 キンキンキン。


 バックステップをサラが踏んだ。


「逃がすか!」


 剣を振り上げてローザが踏み込み、追撃で振り下ろす。


 ザンっと地面を叩いた剣。


 暗黒のオーラを割いた剣。


『ッ!』


 サラが背後で暗躍する。



 ローザは振り返りながら剣を横に振るう。


 消えたサラのオーラが裂ける。


「また!」


 終わった斬撃の中にサラがまた現れ。


 振られた一刀がローザを斜めに切り裂いた。


「っ……」


 膝をついたローザに刀を振り上げる。



『やめろ!!』




 俺が声を掛けると刀を持つ手がピクリと止まる。


「……」


 カチャリと刀を収めた直後、ローザが倒れた。


 俺が、前に出るしかなくなった。


 ローザが倒してくれたら良かったのに。


 スカーを下ろして歩く。


「俺はずっと、お前を倒してやろうと思っていた」


 近づく度に殺意で身の毛がよだつ。


「殺したいとは思ってなかった」


 姿を消したサラが俺の前に現れる。


 振られた拳を受け止め、反撃のパンチを繰り出す。


 空気を裂きながら外れる。


 グチャグチャの喧嘩。


 知性の欠けらもない俺のパンチがサラの腹に命中する。


「……!」



 衝撃にブレるサラ。



 少し距離を取ると刀を抜いてきた。


 見計らったようにアナライザーマグナムが現れる。


 対等な条件。


「サラ」


 引き抜いて、魔道アームの人差し指を向ける。



『魔力なしで相手にしてやるよ』



「ッ!!」


 サラが不規則に消えながら近づいてくる。


 刀を一度だけ振り下ろして消えていく。


 どこから現れるのか、魔力の糸で手に取るように分かる。


 威嚇するように振った大剣は当たってくれない。


 地面を叩いた大剣の上にサラが現れる。


 乗るなとサラを蹴りで払い除け、大剣を叩きつけて追撃する。


 衝撃で剣がバラバラに砕けた。


 右手を振り上げると砕けた欠片が手に集まり、細身の剣を組み上げる。


 更なる追撃は予想外だったのか、容易に命中した。


 考えさせる暇もなく何度も切りつける。


 たまらず姿を消したサラが不意に現れて刀を振る。


 魔道アームでなんとか受け止め。


「サラ、正気に戻れよ!」


 刀を掴んだまま近づいて声をかける。


「一緒に、居てやるって、約束しただろ?」


 刀を手放したサラが拳を振ってくる。


「その刀は大切なんじゃないのかよ」


「っ……!」



 硬直したサラに刀を投げて返すと。



 大切そうに受け取り、震える手付きで鞘に戻した。



「戻ってくれたのか」


「……」


 違うと言わんばかりの魔法。


 避けながら近づいて声を掛ける。


「一緒に経験した初めてを覚えてないか?」


 あーんってしてあげて。


「酒を一緒に飲んだよな」


 口移しで飲まされて。


「綺麗な月も見た」


 独り言を、すましたサラは何も言わないで魔法を放ってくる。


 動作がモタついた隙に近づく。


 魔力を読みながら、キスしてみた。


「……!」


 プルプルと首を横に振られた。


 このまま行けば、戻って来てくれる!


「サラ、戻ってこい」


 一瞬の隙でまたキスをする。


 また避けるだろうと剣を突き出してサラに威嚇する。


 ハズだった。



 グサリと鈍い音が駆け寄ってきた。



 タッタッとサラが駆け寄ってきた。



「……」


 剣から抜かれるようにサラが後ろに倒れる。


 剣に宿った血がポタポタ。


「サラ!」


 そんな剣を捨てて駆け寄る。


 サラの肩を持って意識を伺う。


 薄い目でサラが俺を見ていた。


「……はい」


 掠れた声は簡単に掻き消されそうで。



 風からサラを守るように顔を近づけた。


「大丈夫じゃ、ないよな」


「くるしいです」


 風前の灯火を消すような水が止めれない。


「私の為に泣かないで」


「無理だ……」



『ずっと一緒に、居てあげますから』


 囁いてくれた優しい言葉。



「最後に、キスしよう?」


 少し引いてサラの唇に近づくと。


 サラの人差し指が俺の口を塞いだ。





『キスは、一日に二回まで』





 そう言い残して、切れた糸のように手がトンッと落ちていく。


「サラ……!」


 俺はサラを抱きしめた。


 ギュッと抱きしめて、それから、それから。


 何しても反応はなくなった。


「……今なら、見てもいいよな」


 起きないと、見ちゃうぞ。


 サラの刀を手に取って。


 …………鞘から、刀を、わざとゆっくり抜いた。


 刀身には。




 エオルア・サラと刻まれていて。





 ずっと一緒にいましょう。





 そんな言葉が刀から聞こえた。









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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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