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焦げ目







 俺はスカーに甘い。


 喧嘩したら真っ先に謝ると思う。


「リュウキやさしい!」


 いや、甘すぎて喧嘩もないか。


 ドアを魔道アームで貼っていく。


「大好き!」


 腕から伝わる柔らかい感触を睨みながら、一瞬の隙を突いてスカートをめぐる。


「もう〜」


 そうか、俺が甘いってことは中身が俺なスカーは甘い。


 試しに軽く押し飛ばしてみる。


「イタズラしちゃダメ!」


 近づけれないように、もう一回だけ胸を押して仰け反らせる。


「スカーのこと嫌いなんだ」


 あ、やばい。


「うえーん」


 そう思った時には泣いていた。



「ごめんごめん」


 こうなったら作業を中断してスカーに触れなきゃ行けない。


 顔を隠す手を開くと涙でビチャビチャになっている。


 悪いことをした。


「なんでこんなことするの」


「何したら怒るのかなーって」


「リュウキには何されても怒らないよ……」


 涙を指でピッピと拭ってヨシヨシ撫でる。


「そうだったのか」


「でも、嫌なことされたら悲しいよ」


 目を潤ませてじっと見てくる。


『嫌われてるってことだから……』


 俺はスカーの思いを知った。



 俺だったら怒るのに、スカーは悲しくなるんだ。



「もうしないから、許してくれるか?」


 酷いことをしたのに、頷いて許してくれる。


「優しいな」


 ドアを貼り替えた俺はスカーを抱っこして、右手で抱える。


 左手で最後のドアを持って開かないドアを探すことにした。


「スカーのお尻掴んでるー」


「掴んでないし、落ちないように支えてるんだよ」


 言い合いをしながらドアを変える仕事を終わらせる。


 よし、部屋に戻るか。


 現地解散だと信じて廊下を振り返る。


 忙しなく生徒が行き来してる、他にもすること自体はありそうだな。


 ……見なかったことにしよう。


「ふわわあ」


 スカーも目の前であくびをすると、不安定に首を揺らす。



 後ろに倒れそうになった頭。



 魔道アームで倒れないように受け止め、顎を俺の右肩に乗せさせた。


「んんー」


「危ないぞ」


「きをつけるー」


 部屋のドアは壊されてなかった。


 魔道アームでなんとか鍵をポケットからつまみ出す。


 穴に差し込んで捻った。


 カチャ。


 役目を終えた鍵をゆっくりポケットに戻して。


 ドアノブを掴んで開けた。


 単純な動きが難しく感じる。


 中に入って寝室に。


 スカーにはベッドで寝てもらおう。



「いかないで……」


 薄らと仰向けで目を開けたスカーが手を伸ばしてくる。


「仕方ないな」


 隣に寝転がって、右手をスカーの頭に敷かせる。


「リュウキの腕枕?」


「そうだぞ」


「わーい」


 ゴロゴロ寝返りを打つと俺の方を向いてピタリと止まる。


「もっと来いよ」


 左手をスカーの背中にまわして近づく。


「えへへ」


 俺の胸にくっつくとスヤスヤ寝始めた。


 スカーの髪をとかすように撫でる。


 自然と眠気に目を閉じた。


 黒剣がブオンと唸る。




 目を開くと部屋が暗くなっていた。


 ……ただの夢だ。


 魔道アームで黒剣を防いだ状況が手に取るように浮かぶ。


 死の近くが焦げ付いてて離れない。


「はあ……」


 こんなため息も、サラなら吸ってくれたのかもしれない。


 口元が寂しいと感じてスカーの唇を奪う。


 重ねていると微かに口が開いた。


 起こしたくはない、これ以上はやめよう。


 口呼吸を始めたスカーの吐息が顔に当たる。


「すー、すー」



 落ち着く。



 唇が触れそうなほど近づいて吐息を受け止めると。


 微かに口元が湿り、もっと落ち着いた。


 スカーが居ないとダメだ。


 自然に起きるまでずっと待った。


 光が差し込む明るい時間にスカーは健気に目を覚ます。


「おは」


 声をかけると大きなあくびをする。


 開いた口の中に人差し指を伸ばしてみた。


 パクリと閉じたスカーが異物に目を大きくする。


 なにこれ? って顔だ。


 舌で舐めると把握したのか指を吐き出した。



『ふんっ』



 寝起きは機嫌が悪いらしい、背中を向けられた。


「眠れたか?」


「……凍る夢を見た」


「俺も変な夢を見たんだ」


 スカーを抱いて一緒に起きる。


「寒かっただろ? 一緒に風呂入ろう」


 小さく頷いたスカーを連れて風呂場に入った。


 体を綺麗にして、仲良く湯船に浸かる。


「暖かいな」


 俺にはちょっとぬるいけど。


「うん……」


 スカーには熱いらしい。


 のぼせる前に上がって服を着る。


 スカーはズボンの気分みたいだな。



 俺も着々と服を着て、ジャケットを手に取る。


『ねえねえ』



 未だに上を着てないスカーがじーっと見てくる。


「なんだ?」


「ジャケット交換しようよ」


「ちょっと待て」


 ジャケットを胸に当てて熱を送ってから、スカーに近づく。


「ほら」


「着せて欲しいなあ……」


「裸ジャケットは寒いだろ」


 せめてシャツを着て欲しい。


「おねがい!」


 手を合わせて頼まれたからジャケットを広げるが、心配だな。


 防寒もそうだし、何より乳首が擦れそう。


 このシャツでさえ硬いから痛い時あったのに。


「どうだ?」


 袖を通したスカーのボディを隠すべく、ボタンをポツポツ止める。


「リュウキの温度……」


 ああ、話を聞いてないな。


「痛くなっても知らないからな」


 俺はスカーが着ていたジャケットに身を包む。



 ジャケットの中に硬い棒がある。



 内側のポケットからプレゼントしたお守りが出てきた。



「これ、要るだろ」


「うん!」


 スカーが頷きながら胸のボタンを一つだけ外す。


「ここから刺して」


「さす?」


「面倒だから、谷間に挟もうかなって」


「横着な奴だな」


 お守りを谷間に刺して寝室に戻る。


「カロンちゃん寝てるね」


「起こすか?」


「作業で疲れたと思うから……」




 スカーのお腹がグルグル鳴る。




「お腹空いてないもん」


 呟く頬は赤い。


「じゃあ飯食ってくる、待っててくれ」


「リュウキについていくもーん」


 トコトコ歩み寄ってくると。


『……だっこ』



 それはもう、ついていくとは言わないぞ。










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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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