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チューーー








『ん……』


 スカーの鼻息が当たった所が微かに湿る。


 押し問答を繰り返して俺から口を離した。


「……」


 口をへの字に曲げたスカーがじっと見てくる。


「…………」


 クルリと背を向けたスカーの長い髪が不機嫌そうに揺れる。


「変なことしたか?」



「してない」


 声色が低い。



 スカーの機嫌は声によく出るから、なんとなく分かる。


「怒ってるのか?」


 頷く形で肯定される。


「キスは嫌だった?」


 スカーの気持ちが読めない。


「そうじゃ、ない」


「何がダメ? 教えてくれ、下手だったら直すから」


 背を向けたスカーの肩がフリフリ揺れる。


「言っても嫌いにならない?」


「ならねえよ」


 一呼吸置いてスカーの声が響く。


『短かった』


「短小の話は関係ないだろ?」


「チューが短いの!」


 振り返ったスカーの手が伸びて、俺の肩をがっちり掴む。


「み、みじかい?」



「さっきのドキドキしたのに……すぐ終わった……」


 息がかかる間合いまで近づいたスカーが。


 キッと睨みを効かせてくる。



「俺が、悪いのか」


「わるい!」


「すまな――」


 開けた口が柔らかい唇に塞がれる。


 侵入してきた舌が何度も口の中を触れて回る。


 違う唾液に侵されていく感覚がした。


「……」




 どれほど塞がれたのか分からない。


 数えたくもないほど、長い時間。


 俺を突き飛ばすようにスカーの口が離れた。


『これくらいはチューしてたいよ……』


 顔を赤くして目を逸らす。


「次から気をつける」


「練習しよ?」


 スカーはチッチと舌を鳴らして口の中を見せてくる。


「後でな」


「むー」


「今はこれで我慢してくれ」


 人差し指で唇を塞ぎ、スカーを黙らせる。


 その指を自分の唇にも当てた。


「……むぅ」


 こういうのは弱いみたいで、簡単に納得してくれた。


 ドアを開けると久々の男が。



「いつからそこに?」


『さっき来たところだ、横から見れば女の子とか言ってたか?』


「さっきじゃないぞ」


「まあいい、そんなことは」


 男は腕を組んで話を続ける。


「もう一度、夜が明ければクラス対抗戦がある」


「アステル先生から聞いてないんだけど」


「当たり前だ、あの人は相当のごくどうだと聞いている」


「ごくどう?」


「怠け者という意味だ」


 へえ、そんな意味なんだ。


「……邪魔をしたな、失礼する」


 カツカツとその場を後にする男。



 スカーがじっと俺を見ている。



「なんだよ?」


『リュウキが誰かと喋ってると不快』


「はあ?」


 廊下を歩きながらスカーの話を聞いてみる。


「女として考えたら、リュウキと話してる女の子が敵に見える」


「……」


「男として考えても、男の子と楽しそうに話してるリュウキに腹立つ」


 八方塞がりじゃないか。


「誰とも話さないってできない?」


「できるわけねえじゃん、こんにちは〜」


 俺がわざとらしく人に挨拶する。


「こんにちはー」


 返事をしてくれた人とすれ違う。


「リュウキひどい……」


「冗談だから、な?」


「冗談でも嫌」


 人差し指同士をツンツンさせるスカーの目に寂しさが宿る。



「悪かったって」


 そんな遊びができないように片手を握る。


「その握り方も嫌」


 手が払うように解かれる。


 帰ってきたスカーの冷たい指が、俺の指の間を縫うように絡む。


 魔法もないのに手が冷えていく。


『これが、いい……』


 ギュッと離してくれない。そんな気がした。



 学園を出て、めちゃくちゃ目立つあの人を探す。


「なにする?」


「後で分かるよ」


 前にカロンのプレゼントを作った人にスカーへ、プレゼントを提案してもらうんだ。


 俺的には魔法がもっと使えるように杖を作ってあげたいな。


 でも先生が使うような大きいのは無理だろうな。


「……ん」


 少しだけ見つめると気づいたスカーがニコニコ笑う。



 出会った場所に行くと、前にも増して派手な人が。


『指輪作るよー! なんでも作れるよー! 僕の装備が証拠さ!』


 キラキラッと輝く指輪、虹色に光る衣服。


 金色のブーツが歩く度にピカピカ。


「おお! 君は!」


 俺に気づいた少年が音を鳴らして走ってくる。


 そんな変人に近づかれた俺達は注目の的だ。


「前のはどうだった? 喜んでくれた?」


「ああ、喜んでくれたよ」


「今回はなんの用事で?」


「今回も作ってもらおうと」


「おお、賢いね! そんな君のガールフレンドにこれを」


 少年は服の裾から仕舞えるとは到底思えない大きめの赤い薔薇(ばら)を一本取りだし、スカーに差し出す。


「どうぞ、僕の特性品さ」


 恐る恐るスカーが受け取る。


「魔力を込めてみて」



 魔力がバラに届いたのか、赤い粒子が花の中でキラキラ光る。



 揺らすと溢れた粒子が落ちたり、風に乗って舞う。



 キラキラと高貴な香りが広がった。



「……ありがとう」


 スカーは嬉しそうに呟いた。


「注目は集めてるんだけど、誰も買いに来てくれなくてね」


 少年が近くの作業机に座ってアイテムを広げる。


「少しでも買ってくれる人は居るから満足だけどね!」


 向かい合う為の席は一つしかない、スカーに座らせるか。


「おっと、椅子をクリエイトしようか?」


「いや、いいよ」


 バラを大切そうに見つめるスカーの肩に触れる。


「座っていいよ」


「……うん」


 大人しいスカーはすんなり座ってくれた。


「別に、罠なんてないさ」


「罠だったら仲良くできそうなのに」



 時々見つめてくるスカーの髪に触れる。



 愛でるように手で髪をとかす。



「何を作って欲しい?」


「杖とかって作れないか?」


「ああ、全てが読めてきた」



 そう言って少年はアイテムを箱に仕舞うと。


 太い木を何本か取り出した。









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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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