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綺麗な印







 引き金に人差し指を添えてライフルを構える。


『どれが欲しいんだ?』


「あれが欲しい」


 スカーが示したのはハートのクッション。


 そんなんが欲しいのか!


 クッションにしっかり合わせて、人差し指でグッとトリガーを引く。


 小さな銃声と飛び出た弾丸に銃が仰け反る。



 風の魔法で不自由なく突き進んだ弾丸は正確にハートを射抜いた。



「おお、やるね。撃ちきったらあげるよ」


 それから淡々と的を射抜いた。


 クマっぽいぬいぐるみ、ピンク色のマフラー、可愛らしい小物入れ。


 どれも編み物でハルトゥス王国の得意分野が分かった気がした。


 ライフルの弾を抜き、最後の一発を装填する。


『次はリュウキが欲しいの当てようよ』


「じゃあ、黒いロボットの編み物」


 片目を閉じて目標に合わせる。


 スカーの青い糸が漂う。外部から別の糸が目標に纏う。


 引き金を引くと高速で飛び出た弾丸は当たり前のように目標を逸れていく。


「ざ、残念だったね、お二人さん! でも四個は凄いよ」


 俺は知っている。おじさんの魔法で逸れたことを。


「惜しかったな、スカー」


 別に言うつもりはない。


 証拠は出せないし、めちゃくちゃ欲しいわけじゃないからだ。



「……はい、また今度も来てくれや」


 おじさんはテーブルの下から撃ち抜いた商品と同じ物を取り出すと袋に纏めてくれた。


「わーい」


 嬉しそうに受け取るスカー。


 ルンルン気分でゆらゆら歩いていくので、俺も付き添うように後ろを追う。


「持ってやろうか?」


「これくらい持つよ」


「重いだろ?」


「と、取れなかったんだもん……」


 スカーは申し訳なさそうに撃ち抜けなかった事を謝る。


「気にしてない」


「自分のばっか取って最後はずしちゃったんだよ?」


 スカーの目が俺を恐れるように見ている。


「り、リュウキが怒ってるの分かるもん……」


「じゃあ取ったやつ全部貸してくれ」


 大切そうに持っている袋を俺は奪った。


「許してくれるなら全部あげる……」


 寂しがっている小さな手を握って目を合わせる。


 もっと笑って欲しいな、怒ってないし。


 撫でたら笑ってくれるかな?


 過ぎていく人が居る中で、スカーをよしよし撫でる。


 綺麗な髪を指でとかした。嬉しそうにニヤニヤしてくれた。




『次は、どこに行こうか?』


 スカーの興味を優先して回る。


 どうせ好きな物は同じ。選んでくれた方が俺も楽しい。


 途中でガラガラの屋台を見た。


 掲げられた文字によると自分だけの武器を作れるとか。


 誰も居ないけど他の国からの出張らしい。


「したいか?」


「高いよ」


 値段は……五十枚。高すぎ!


「でもしたいならできるくらいあるぞ」


 それを見越していたのか、王様は思ったよりお金をくれていた。


 この為じゃないとは思う。


「そのお金で、リュウキともっと遊びたいな」


 スカーは俺の腕で頬ずり。


 ムニムニと動く顔は表情豊かで愛らしい。


「それもそうだな」




 楽しんだ俺達は賑わう空間から抜け出して学園に戻ってきた。


 部屋に入って袋をスカーの手に戻す。


「えっ……?」


「貸してもらっただけだからな」


 本当に受け取っていいのか。


 スカーはなぜかそんな顔をしている。


 相当、射的の事を引きずっているらしい。


「やっぱダメ、許さねえわ」


 意地悪をしてみたくなった。


「ご、ごめん……行かないで」


 涙を貯めて俺の手を引く姿に俺は後悔した。


「冗談だから」



『リュウキなんか嫌いっ』



 プイッとそっぽを向くスカー。


 チラチラと様子を伺ってきている。


「嫌いなんだもーん……」


 チラチラ。


 分かりやす!


「そうか」


 背を向けると簡単に化けの皮が剥がれる。


「行かないでー」


 柔らかい感触と共にスカーが抱きついてきた。


「ねえねえ、チューしたい」


 リクエストに応えて向き合う。


 スッと重ねて、もう一回だけ長く重ねてあげた。



『印、付けていい?』


 俺の首元に潜り込んだスカーが妙なことを聞く。


「別に」


「痛かったらごめんね」


 首にザラザラとした舌が触れ、チロチロと舐められる。


 それから唇が当てられた。


 針に一瞬だけ刺されるような痛みがする。


「……」


 チュッと口を離したスカーが首筋に優しく触れる。



「えへへ」


 悦に浸るような笑みを浮かべながら、何度も同じ所を撫でる。



「綺麗な、印……」


「顔が赤いぞ? 大丈夫か?」


「リュウキの方が心配だよ、こんなマークをみんなに見られたら……」


 隠さなきゃ。そう言ってまた舐め始める。


 ぺちゃぺちゃと吸い出すように何度も唇が触れていた。


「満足したか?」


「うん……」


 舐め終えたスカーがスッと距離を取る。


「き、気持ち悪くてごめん、歯止めが利かなくて」


「そんな謝ることか?」


「キスマースまで、今日はつけちゃったんだ」


「隠せるだろ」


「……ごめん 」


 スカーはずっと謝りつづけていた。



 俺じゃなくて、しばらく残り続けるマークに。



「しばらく会わない方がいいかも」


「そんな寂しいこと言うなよ」


「もし過ちを犯したら、殴り飛ばして」


「分かった」


 それから日が落ちるまで魔法で遊んだ。


 スカーのクリエイト魔法で将棋の駒とかオセロを作った。


 途中でカロンが帰ってきて、割と楽しく遊べた気がする。



 不意にコンコンとドアを叩く音がした。



「リュウキー行ってきてー」


「えーしょうがねえな」


 カロンに将棋を教えていたスカーは俺を顎で指示する。


「どちら様ですか」




 カチャリとドアを開けると。


『リュウキくん、お迎えに来たよ』




 そこには、サラが居た。









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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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