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アナライザーマグナム









 スカーが広げた魔力は相手をひたすら苦しめる。


 熱が焦りを呼び、不安がミスを呼ぶ。


 クリエイトされた土に女の子がズッコケた。


『いてて』


 燃え盛る不死鳥のようなフェニックスが女の子をクチバシで挟む。


 そのまま飛び去ると周囲をグルグル回る。


『た、たすけてぇっ』


 男が消えたハーレムメンバーは鳥を魔法で追撃する。


「離しなさい!」


「今助けてあげる!」



 鳥に夢中の女をガロードがサラの風魔法と共に駆ける。



 音も出さずに急接近すると背後から土の剣を突き立てた。



「うっ……」


 首を突かれた相手は膝をついてスッと消える。


「こっち援護して! やばい!」


 それから相手の壊滅は速かった。


 サラの翻弄が相手の動揺を誘い、リュウキとガロードの連携が決まる。


「や、やだ……」


 力尽きた女子は消えていき、炎の鳥が捕まえていた子を飲み込んだ。


 最後に残ったのはカロン。



『最悪です』



 風の魔法が使えない地獄で通用する魔法は少ない。


 風が得意なカロンは不利な状況で。


 劣勢を覆す手段はもうなかった。


「降伏しろ!」


「しません!」


「アナライザーマグナムで死にたいのか!」


 それを聞いたカロンの目が大きくなる。


「勝負から降ります、そんなダサいモノで死にたくないので」


 カロンはすんなり応じてヒュッと消えてしまった。



『そ、そんなこと言うな〜!』



 少し遅れてスカーの魔法が何もない空間を破壊した。


 全員を倒したことになったリュウキ達の勝利が決まる。


 これで次のチームと戦うことができる。


 三チームのどれが戦うかは、事前にアステル先生の独断で決められていた。


 そこは総当たり戦にするべきだが、アステル先生は楽を選んだ。


「うぅ……」


 スカーはリュウキの背中に悔し涙を擦り付ける。


「センス、ないのかな」


 アナライザーマグナムに相当の自信があったらしい。


「……よしよし」


 リュウキは考えることをやめて頭を優しく撫でる。


 つむじを小指でなぞると嬉しそうに頬を緩ませた。



『次の空間に転送します』


 手先が粒子に変わり始める。


 空へ舞っていく光の粒は幻想的で。


「あーん」


 スカーはその粒子を食べようとリュウキの手に口を大きく開ける。


「バカなことしてるな」


『食べたくてたまらないもん』


 スカーは「りゅ、粒子の事だよ!」と補足する。




 転送されたリュウキは世界が切り替わったように錯覚する。


 コロシアムのような広い空間にリュウキ達は来ていた。


 黒い空の代わりに周囲のランタンが地面を輝かせる。


 向こうには六人のメンバーが見える。


『準備時間は三十秒』


 いつも通り、サラには魔法を予測してもらう。


 高威力な爆発魔法で二人くらい持っていく事をサブプランとしてリュウキは考えた。


「ガロード、金髪ちゃんを頼めるか?」


「してやるよ」


 スカーはリュウキをチラチラ見る。



 その姿は指示が欲しいというよりも話しかけて欲しそうで。



「どうした?」


 リュウキは声を掛ける。


「なにしたらいいのかな〜って」


「一人に狙いを付けてここから倒してくれねえか?」 


「分かった!」


 サラの看破によると攻撃は来ないらしい。


 開始してから攻撃を仕掛けてくる可能性は否定できない。


 何故なら、サラの能力を知らない人間自体は少ない。


 パーティという事はその情報がシェアされているはずだ。


「サラが魔法を防いでくれるか?」


「頑張ってみる」


「俺は前線に立って引きつけるから」


『それでは、ご武運を祈ります』



 開始と同時にスカーの魔法が奥で炸裂する。


 圧倒的な爆発が一人を付け狙う。


『う、うわあああ!!』


 敵からの魔法はサラが無効化してくれた。


 金髪ちゃんも安心してオーラを貯め始める。


「ガロード、やっぱり俺達は仲良く前で戦おうか」


「賛成」


 二人は走り出した。


 地面に立つアナライザーマグナムをリュウキは手に取る。


 スカーの魔法で一人が使い物にならなくなり、ようやく対等な戦いに変わる。


 ガロードを狙う魔法が思うような進行をさせてくれない。


「しゃらくせえ……」


「俺に任せろ」


 リュウキが魔法に剣を向けるとヒビが開き、本体が姿を現す。


「ダサいヤツすんのか」


「ダサくても感謝しろ」


 満たされた青い光が放射状に放たれる。



 水平に薙ぐと広範囲のオーラに侵された魔法がその場で止まる。




『アナライザーマグナム』




 特に意味もなくリュウキは左手を掲げて握り拳を作る。



 その瞬間、周囲に漂う青い粒子は一際大きな光を放つ。



 左から右へ。連鎖的な爆発が巻き起こる。



 全てがリセットされたように魔法が消えてなくなっていた。



「感謝するか?」


「ダサくなければな」


 リュウキが走り始めると剣の姿に戻り始める。





 相手チームは一瞬何が起きたのか分からなかった。


 解き放った魔法がその場で固まると。


 一瞬で光に飲み込まれる。


 気がついたら何もかも消えた状態。


「どういうことだ……」


 男はポツリと呟く。


「おい! 剣士共の食い止めはどうした!」


 ぼーっとしていた防衛役の男は必死にクリエイトを再開する。


 その間にグングン二人は近づき、途中で別れていく。


 リュウキが防衛役の土の壁を超える。


 巨大な剣を軽々と振り下ろしながら距離を詰める。


 地面が衝撃で唸り、男は風の魔法で大きく離れる。


 引き撃ちの水魔法を両手で放つ。



 リュウキはそうなることを知っていたように体を少し逸らして避ける。



 最低限の動きで簡単に接近されてしまう。


「な、なんだと!?」


 リュウキの背後に別のメンバーが火炎を撃ち出して不意打ちを狙う。


 魔力の糸に気づいたリュウキは振り向きながら魔法を切り裂いた。



 炎の粉が周囲に舞い散る。白い蒸気を吹いて消える。



 そのまま前を向いて剣を向けた。


 右足で力任せに地面を蹴り出し、瞬く間に貫く。


「剣士ごときにぃ……!!」


 血を吹いた男が苦し紛れに言う。


 剣を抜かれた男は糸を切った操り人形のように力尽きた。






 ガロードの前に二人の女が立ち塞がる。


「一人で勝てるとでも?」


 虹色のオーラが周囲で舞う。


『私が居るけどね』


 瞬間移動してきたサラの手に黄色の光が宿る。


 その手が横に振られると光の刃が姿を現した。



 駆け抜けた刃は突風を巻き起こす。


 散っていた視線をサラが掻き集める。




『魔法だけで相手にしてあげる』




 ガロードは「どっかで聞いたな」と呟いた。








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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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