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伝説の幕開け








『こんなのよりこっちの方が……』


 周りの声が俺に突き刺さる。


「……」


 サラがイスを鳴らして俺との距離を更に詰める。


「こいつに触ったら穢れますよ!?」


 俺の手をギュッと握ってくれた。


「……えっ!」


「穢れても、いい」


「負けますよ……?」



 負ける。その言葉を聞いたサラの目がキッと鋭くなる。



『負けません! 簡単に言わないでください!!』


 初めてサラが言葉を荒らげた。


 言葉に押された野良は簡単に退散していく。


 上位クラスを怒らせてしまうのは良くないと判断したのか。


 俺はもう怒ってるけどな!


「好きな人を貶してくる人とは組みたくないのです」


「最初から言えばいいのに」


「多くの人に見られると喋れなくなります」


 でも、言ってくれた時にみんなの顔が焦ってて気持ちが良かった。


「ありがとう、サラ」


「言葉を荒らげてしまったことに礼を言われても」



 途中でガロードが話しかけてきた。


「なあ、空いてるか?」


「むしろ組んでねえの?」


「ガチなやつばっかで魔力測定二千からでよ、俺様はお手上げでな」


「いいぜ、ここは魔力ゼロから加入できる」


「魔力ゼロのリーダーが言う事は違うな」


 皮肉を言われてしまった……入れてやったのに!


 席を立って周りを見て新たな仲間を探す。


 金髪ちゃんがスッと現れた。


「……」


 入りたそうにこちらを見ている。気がする。


「空いてる?」


「歓迎するぞ」


「ガロードも……?」


 まだ仲良くしてないのか。


「歓迎してやるよ、金髪」


 本人は気にしてないらしいが。



 サラに気づいた金髪ちゃんは礼儀正しくぺこりと頭を下げる。


 フワリと揺れた金色の髪から良い匂いがした。


「えっと……金髪です!」


「金髪さんよろしくお願いしますね」


 異次元の自己紹介にサラは気づいていない。


「えっ? 金髪? 名前が?」


 せっかく名前を聞けると思ったのに!


「みんなに金髪って言われるんだもん……」


 ごめんよ、金髪ちゃん。




 それからもう一人の勧誘を試みたが、誰も来てくれなかった。


「お前、来ないか?」


 ガロードが男の人を誘っている。


「メンバーなどを聞いても?」


「サラ、金髪、俺様」


「おお、上位クラスの方が!?」


「そんで、あの男だ」


 そう言って俺を指差す。


「ああ……パスさせて頂こう」


 男の人は丁寧にその場を去った。


「くそっダメだったか、何が原因だ?」


「いや、俺だろ」


 ガロードがわざとらしく考えるフリをする。


 分かりきってる事を。


「あいつらはお前の強さに気づいてねえんだよ、馬鹿すぎる」


「魔力ねえし……」


「なくてもカバーすりゃあいい」


 スカーはとっくに誰かと組んでるのか、教室の端っこで男女数人で話している。


 カロンも別のパーティーを組んでいて、青い髪の男をじっと見てる。




 メンバーがだんだん決まってきて、二人の男が余った。


 そういえばサラが居るから五人で割り切れなくなってるんだろうな。


 確か、ここは元々三十人だから。


「先生、余った人はどうするんですか?」


「適当なチームにくっ付けて、そのチームが勝った時は殺し合いをしてもらいます」


 それを聞いた男達は睨み合う。


「あのパーティーには入りたくない」


「それはこっちもだ! 代表に立ちてえのに負け組なんて行けるかよ!」


 せめて聞こえないようにやってくれないか?


 おい、今俺を指さしたぞ!



 決まらない言い合いを見兼ねたスカーが二人の所に向かう。


「……」


 何やら小さい声で話しかけている。


 しばらくすると、二人はスカーが居た所に向かって頭を下げていた。


 なにしてんだ?


 そしてスカーはこっちに向かってくる。


『仲間に入れてください』


 今にも消え入りそうな声だった。


「俺様はいいが」


「私もいいよー」


「……リーダーに従います」


 委ねられた決断。迷うことは何もない。


「本当にいいのか?」


「あぁ?」



『俺が勝利を歓迎してもいいのかって聞いてるんだ』



「さっさとしろ」


 許可を得た俺はスカーに歩み寄り、手を差し伸べる。


「歓迎する」


 握ったスカーは手繰り寄せるように俺の腕に巻きついた。


「うん」


 チームが決まったことに気づいたアステル先生が手を叩く。


「では、クラス対抗戦を想定した空間に行きましょうか」


 そう言ってドアの先に消えると他の生徒もぞろぞろ向かう。


 俺達も行くか!


 ……忘れるところだった。


 机に置いていた伝説の剣を拾い、背中に付ける。制服とくっついた伝説の剣は軽い。



 この軽さは俺の伝説を表す。



「なにそれ!」


 金髪ちゃんが不思議そうに見てくる。


「サラが伝説の剣としてくれたんだよ!」


 背中に付いた剣を見せつけると「かっこいいね!」と言ってくれた。


『そういうのすきなんだ』


 スカーが何か呟いてる。



 みんなが行った後で俺達もドアに入った。


 魔法空間は広い一本道を形成。


 藁で作られたような申し訳程度の遮蔽物が周囲に散っている。


 少し先の方に別のパーティーが現れた。


 後ろに逃げる道は互いにもうない、あくまで決戦の場らしい。


「リュウキにこれあげる!」


 スカーが氷の剣を地面に召喚する。


 き立てられたソレは剣と言うよりも大剣に近いサイズ。


「真ん中にヒビが入ってるぞ」


「魔法に反応して変形するんだよ〜」


「へえ」


「リュウキはそういうの好きだもんな!」


 引き抜いてみると思ったより大きく、俺の身長を容易く超える。


 重さはないが、肩に乗せてかっこよく持ってみる。



『それでは準備時間を三十秒だけ与えます』



 本気で勝つ為に作戦は俺が練ることになった。


 魔力がないから、戦闘と指示だけ考えれる俺が一番良いに決まってる。


「サラ、魔力の糸をあいつらの所まで。開始と同時に撹乱を」


「分かりました」


 スカーには土と氷の剣を何本か作ってもらう。


 数本はガロードに渡して、残りはその辺に投げ捨てておく。


「金髪ちゃんは爆発魔法の準備をしてくれ!」


「うん!」


 あとはサラに相手の魔力を看破してもらうだけだ。


 俺の目にも映ってるが、サラにまだ見えると言いたくない。


「聞いてください、開始と同時に周囲から何かが飛んできます」


 確かに青い糸が俺たちの周りを囲っている。


 速攻で潰しに来るプランを向こうは立ててるのか。


 こういう奴ほど背後を取れたら勝てるかもしれないな。


「スカーさん、壁のクリエイトをお願いします」


「……」


「頼むよ、スカー」


「分かったよぅ」


 俺の声を聞くと不服そうに答える。




『それでは戦いを始めてください』




 その瞬間、周囲から武器の形状をした魔法が姿を現す。


 サラは張っていた自身の魔力を潜り、瞬きをする頃には敵の背後で虹色のオーラを輝かせた。


 咄嗟に組み上がった氷の壁が魔法をガキンガキンと弾く。


「う、後ろに女が!」


「なんだと!」



 魔法の音が消え、向こうが騒がしくなる。



 氷の壁を溶かした頃にサラが一瞬だけ戻ってきた。


『かもん』



 その言葉は俺達の火蓋を切るには充分だった。













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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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