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先生はサボりたい







『うう……』


 スカーが大粒の涙を流しながら俺を見る。


「な、なに泣いてんだよ」


 サラの手を解いてスカーに駆け寄った。


「だって」


 頬を伝う涙に手を伸ばすと、その前にスカーは俺の胸に顔を埋めてしまう。


「なんであいつといんの……」


 服から篭った声が聞こえる。


「そりゃあ成り行きでな、会えたし泣くこともねえだろ?」


 さっきまで顔を埋めていたスカーが俺を見上げる。


「泣いたらダメなの?」


「泣く必要ってあるか?」


『……ッ』


 間に入ってきたサラが俺達を引き剥がした。


「リュウキくんこっち」


 見せつけるようにサラの腕が俺の手に巻き付く。


「私の彼氏なので」


「か、かれ……!」


 そのまま俺は窓側の席に引っ張られて何も言えなかった。


 スカーの見つめる目がやけに寂しさを帯びていた。



「めちゃくちゃスッキリ」


 俺は歯切れ悪いけど。


 サラが隣に座るとアステル先生が入ってくる。


「戦闘以外のクリエイトを話します、サボりたいので」


「サボらないでください」


 零れた本音を生徒が指摘する。


「うるさいです! これでも夜が明けるまでしか寝てないんです!」


「寝てますよね!?」


「あなたには読解力の訓練が必要でしょうか」


 アステル先生の紋章が光り輝く。


「あ、いえ……理解しました」


「よろしい」


 観念した生徒を置いて話を始める。



「クリエイトは戦闘だけでなく、趣味にも応用されます」


 アステル先生が手を上に向けると土の塊が現れる。


 次第に小さくなっていき、手のひらサイズの指輪になった。


「こんな小物だったり」


 元に戻った土が男性の銅像に変わる。


「大きなものまで」


 変化自在の土を消すと手を下ろした。


「机に色んなものを土で作ってみてください、魔力トレーニングです」


 それっぽいことを言ったアステル先生は風を纏って空中で寝転がる。


「さすがです、アステル先生」


「なんで感心できるんだ?」


 サラはなぜか尊敬の眼差しを先生に向けている。


 おサボり先生なのに。


「空中で静止するというのは非常に魔法コントロールが必要なの」


 確かに、そこには一枚の畳があるかのように寝ている。


 思ったより凄いことをしているらしい。


「へえ」


 魔力がない俺はみんなが作る物を見る事にした。


 カロンは机に小物を沢山並べ、スカーは制服を着た男の像を胴体から作っていた。


 サラも手をかざすと、スルスルと組み上げていく。


 それは黒ずんだ棒状で赤い線が見える。最後にもしゃもしゃしている山を根元につけた。


 既視感マックスなんだけど!


「何作ってんだ!」


 みんなに見られる前に、完成してしまう前に!


 回収しなければ!


「あぁっ! やめなさい!」


 奪い取った俺は机の下に置き、サラと攻防する。


「卑猥なもん作るな!」


「どれが!」


 真剣な口調でサラは聞いてきた。


 えっ? ちんちんって卑猥じゃないのか?


「いや、これだろ……」


「知らなかった」


 そう言うと、かわいいうさぎさんを作り始めた。



『ぴょこぴょこ! ぴょこぉ……』


 うさぎさんに対してサラが何か言ってる。前の席の人が何事かと振り返っていた。


「なんだそれ」


「耳をぴょこぴょこして欲しいのです」


 そういえば、作ったものは動かすこともできるって先生が言ってたな。


「動きなさい……」


 ぴょこ。


 耳が一度だけ揺れ動いた。


「やったな!」


「……センスないなあ」


 サラはウサギをヨシヨシと中指の腹で撫でる。


 俺も撫でさせてもらった。触ってみると結構かわいい。


「リュウキくんは作って欲しいものとかありますか」


「ないよ」


「リクエスト欲しいです」


 特にないけど、強いて言うなら男心をくすぐるあれがいい!


「カッコいい剣なら見たい」


「なるほど」


 スッと手が机の上を薙ぐと横に寝た剣が姿を現す。


 茶色に汚れた剣は、片手でギリギリ持てそうな大振りの剣。


「どうぞ」


 両手で武器を抱き上げると、かつての栄光を受けた伝説の剣を手に入れた気分だ。



 錆びているのは光を浴び過ぎて疲れたんだろうな!



「カッコいい」


「あげる」


「いいのか!」


「ええ」


 有難く貰います。


「でも刃が潰れてるぞ」


 土製だからか刃をなぞっても指は切れない。剣と言うよりも鈍器だ。


「何回か魔法は使える、クリエイトは魔力の塊だから」


「いいなそれ」


「使い切ったら剣が消えちゃうけどね」


 使う度に崩れていく剣か……!


「かっけえ!」


「そうでしょう」


『ウォーミングは終わりです』


 眺めているとアステル先生が地に足を着けた。




『テストを行います、クラス代表の選出です』




「クラス代表?」


「しばらく後にクラス対抗のマッチがあるのですが、五人をこの中から選出しなければなりません」


 他の生徒がそれを聞いてざわめく。


「本来なら一対一で生き残った人を組ませるのですが面倒です、五人のチーム作って殺し合いにします」


 なんて適当な先生なんだ……。


「それでは今から組んでください、以上」


 そう言って先生は空中に身を投げてフワフワ浮く。


 生徒が席を立って動き始め、案の定サラの周りに人集(ひとだか)りができてしまった。


「上位のサラさんお願いします!」


「お強いと聞きました! 必ず勝ちましょう!」


 群がる人がサラを勧誘する。本気で挑むみんなの心意気が伝わる。


「あ、あ……」


 当の本人は大人数に慣れていないのか、上手く声を出せずに周囲を黙って何度も見る。


 目で困惑を俺に訴えていた。


「いや、俺と組むって言ってるよ」


 サラの気持ちを代弁すると。


「無能には話しかけてねえよ」


「だまれ、カス! ……サラさんどうです?」


 酷い言われようでなかったことになってしまった。



「俺と組むってば」


「まだ居たのか虫けら」


「そうよ虫けら」


 ついに虫けら呼ばわりされてしまった。


 椅子に座ってるだけなのに!


「あーあ、あの……」


 サラが必死に言葉を繋ぐ。


「どうしましたサラさん!」


「リュウキくんと組む、組ませて頂くので……」


 それを聞いた生徒にどよめきが走る。



 こいつらから見れば、元上位クラスの口から出てはならない名前。



「虫けらと組む!?」




『わ、私の好きな人を、虫呼ばわり、しないで……』




 サラは今にも泣きそうな声で周囲に訴えていた。








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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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