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なんでも関係








 俺がベッドの上で女の子座りをして待っていると寝室のドアが開いた。


 俺によく似た男が歩み寄り、俺の頭を優しく撫で始める。


 気持ちいい。


『もう行くよ』


 そう言って離れていく彼。


「待って」


 こんな広い場所に一人なんて寂しいよ。


「いや、行かなきゃならねえ」


「寂しいよ……」


 俺の言葉を無視して彼は部屋から出ていく。




『寂しいって言ってるじゃんか!』




 こんな広い世界で寒いよ、凍っちゃうよ。


 よく見たら部屋には氷が走っていて、ベッドの生地がビシビシに固まっている。


 寒さで鳥肌が収まらない。白い息が口から出る。


「助けて、なんでもするから」


 温めて、死んじゃいそうだよ。


 足が凍る、大きな胸が凍る、首が凍る。


「帰って来て、かえってきッ……」


 口が凍りかける。彼が来ることはもう無かった。





 目覚めた俺は首で頭を起こして部屋を何度も見回す。


 何か酷い夢を見た気がして、とても苦しい気分だ。


 サラは普通に俺の胸で寝ている。俺だけの夢を何か見ていたようだ。


 天井を見ながら、珍しく寝言を発さないサラを撫でた。


 窓から見える世界はもう明るい。サラが起きるまでこのままで居よう。


 ピンク色の天井を眺めているとサラの体が微かに動いた。


 モゾモゾと上がる眠そうな顔。


 鼻息が届き合う距離で目が合った。


『リュウキくん……』


 俺の頬に手を添え、ただでさえ近い顔がゆっくり近づいてくる。


 うっとりした表情で俺の口を何度も塞ぎ、その過程で口の周りが水気を帯びる。


「……」


 サラがキスをやめて見つめてくる。


「好きな人にはキスしていいと聞いたのに」


「それもそうだな」


「では、もう一度」


「一日に二回しかしたらいけないって聞くぞ?」


 触れかけたサラの唇が離れていく。


「それは……」


「隙あり」


 油断して離れていくサラに一瞬だけキスをする。


「あぁっ! 二回目が!」


「どんまい」


「うぅ……」


 そんな悲しそうな顔されると困るんだけど!


「えっ?」


「キスはスキですよ……? 大切にするべき時間が」


 サラのキスに対する情熱は桁違いで数分キスについて語ってくれた。



 童貞の俺よりピュアなんだろうなって思った。


「……全部想像ですが」


「別にキスじゃなくても表現方法はあるんじゃないか?」


「ッ!」


 俺の言葉に気づいたサラがフッと起き上がる。


「お風呂入る」


 ベッドから下りるとそう言い残して部屋から消えていった。


 もしかして悪いこと言った?


 やっちまったな〜って思いながら待っていると制服姿のサラが戻ってきた。


 やけに髪の艶が増していて、窓から差し込む陽の光を強く返していた。


「リュウキくんも行ってきて」


「魔力ないんだよな」


「ではこちらへ」


 誘われるがままについて行くとピンク色のタイルで覆われた空間に入った。


 さっきまでサラが入っていたのもあって非常に湿気が強い。


「制服は畳むから」


 脱いだ制服をサラに渡すと。


 何度か折って小さくすると横に置いた。


 俺のモノが見られないように両手で隠す。


「湯船欲しい?」


「欲しい」


 サラが手を向けるとそこに土の浴槽が組み上げる。


「お湯は?」


「欲しい」


「なら、して欲しいことがあります」


 そう言って俺の下半身を指差す。




『その手を退けてください』




「はあっ?」


「好きな人の秘密って気になるんです」


「秘密は秘密だ!」


「では、お風呂は終わりです」


「や、待て、分かった!」


 お風呂は入りてえ! 最近入れなかったし!


「ほら、勝手にみろ」


 見られて何かある訳ではない、満足してくれるならもう犠牲にしてやる。


「ほほぉ……!」


 目をキラキラさせて眺めると湯船にお湯を張った。


「で、いつまで見るつもりなんだ」


「男はこんなものをぶら下げてるんですか、初めて見ました」


「初めて?」


「ええ、そうです」


 その歳で? 俺くらいの身長で?


 何歳なのか聞いてみたいが、異性にそれは失礼か。


「もう入っていい?」


「満足したのでどうぞ」



 湯船に足を入れてゆっくり浸かる。


 湯がザバザバと溢れてしまうのがもったいないといつも思う。


「……」


 横を見るとサラが見ていて、目が合いそうになると逸らされた。


「いつまで見てるんだ」


「死にかけないように」


 浸かりながら軽く体を擦って熱を浸透させる。


 ゆっくり楽しんだ俺は湯船から這い上がった。


「満足しましたか」


「ああ、ありがとう」


 お礼を言ってサラに近づくと、手から涼しい風を出しながら迎えてくれた。


 俺の手を持って腕に風を通す。水滴がすんなり消えていく。


「一撃で済ませれるんじゃないか?」


 スカーは必殺技って感じでブワッとしてくれていた。


「すぐに終わる方法は存在します」


「ならそうした方が」


 俺の上半身に風を向けるサラが恥ずかしそうに俯く。


「その、触れるじゃないですか」


「……」


「こうやって、こうやって」



 ピト、ピト。俺の胸に柔らかくて細い手が何度も触れる。



「リュウキくんに触れていたい」


 俺まで恥ずかしくなる。なんだ、この気持ちは。


「次は背中」


 後ろを向くとさっきとおなじく無意味な手が触れる。


 風を当てられてしばらくすると。


「はい、終わり」


 そう言って先に風呂場から出ると制服を持って待ち構える。


「かもんかもん」


 受け取ってズボンを履いた。最後のジャケットはサラが手伝ってくれた。


「ボタンは止めます」


 俺の前に立つとパチパチとジャケットの金色のボタンを嵌めてくれる。


「そんなにしなくてもいいぞ」


「したいだけなので」


 そう言ってボタンを止め終え、俺の手を引いて玄関のドアノブを回す。



「ど、どこに行くつもりだ?」


「テストを受けに行こうかと」


 サラはドアを開けると俺の手を強く握り直した。




『自慢したくてたまりません』




 手を引いてずんずん進んでいくサラ。



「行ってらっしゃい、サラ様」









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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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