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フライング









 戦いのゴングが鳴ると金髪ちゃんは炎の空間を作り出した。


 ガロードの戦い方を見て、火で先手を打つべきだと判断したらしい。


 金髪ちゃんはかしこいな!


『……』


 カロンは嫌そうに火から遠ざかる。水を撒いて威力を弱めようとしている。


 その間に金髪ちゃんは爆発魔法のオーラを纏う。



 心理戦してるな〜って思っていると肩をトントン叩かれた。



 振り返るとサラが居て、俺の耳に顔を近づける。


『彼女と仲直りしたら?』


 バレないように耳打ちでアドバイスしてきた。


「なんで?」


「恋人じゃないの?」


「そんなんじゃないけどな」


「馬鹿なのね」


 そう言うとピューっと消えていった。


 サラって変な奴。






 私は今、必死に魔力をチャージ中。


 あの男の子が応援してくれてるから、頑張らないとね!


「小賢しい……」


 やっぱりカロンさんは火が得意じゃないみたいで、私を攻撃しないで地面を整えてる。


 とても好都合。爆発魔法の準備ができる。


 完全に消されないように、炎を注いで、注ぎまくる。


 この炎を絶やしたら相手の思うがまま。


 それに得意な魔法は出しやすくていいし。


「そういう事でしたか?」


「な、何が?」


 とぼける私にカロンさんが睨んでくる。怖いよ。


 この状況を維持するのはもう無理かもしれない、バレてる。


『クリエイト』


 カロンさんはそう言うと強引に風を吹かせる。


 動いた熱風が汗を誘ってくる。


「ムダムダ! 火は風で消えないんだよ!」


 決死の忠告。生半可な風は火のエサとなって燃え盛るだけ。


『ロウソクって消したことないんですか』


 次第に増していく風が地面の火をくすぐる。


「へ?」



「そういうこと、です!!」



 更なる強力な風が巻き起こる。


 本来ならありえない属性関係。


 圧倒的な威力差に火が揉み消えてしまう。


 有利だった私の状況が逆転する。



 足音さえ聞こえない異常な風きり音。


 歩いたら空に投げ捨てられてしまいそうな風圧。



「むむ……!」


 私は溜まった魔力に全てをかける。


 薄らと目を開き、目標に手を向ける。


 抑えていた魔力をフッと手放し、破滅を点火する。




 クリエイト。私が今から作るのは勝利! なんてね。




 カロンさんの中心で広がる白い輝き。


 風を燃やしながら成長すると目で直視できなくなっていく。


 私は土の棒を地面に作って掴む。


 爆発から避難するために棒を伸ばして移動する。


 大きく距離を取って魔法が収まるのを待った。


 その中には焦げたカロンさんが。


「こ、これほどの……」


 膝をついて消えちゃった。


『勝者が決まりました』


 でも、勝ちは勝ちだよね!


 男の子にジャンプしながらピース! 勝利の報告!


 見ててくれてたのかな? 私が見た時にはもう手を振ってた。


『勝ったよ!!』






 やったな! 金髪ちゃん!


 俺も手を振って勝利を祝う。嬉しそうだとこっちも嬉しくなる。


 スタスタ降りてった金髪ちゃんは座って休憩を始めた。


『リュウキ』


 スカーが俺の方を向く。なぜか頬に魔法の水が流れている。


「チューして」


 機嫌悪くされたら困るし、してやるか。


「いいよ」


 スカーの尖った口に唇を押し付ける。


 瞼を下ろしたスカーの瞳から大粒の魔法が頬を走る。


 それは口角まで走って俺の唇で弾ける。


 キスを終えて唇を舐めると妙にしょっぱかった。


「落ち着いてきた」


「頑張れよ」


 あんまりしない事だが、スカーの頭を優しく撫でてあげる。


「……きもちいいよぅ」


 俺の手の動きに合わせてスカーの体がゆさゆさ揺れる。


『スカーさん』


 呼ばれてしまうと、さっきまでとろけてた顔がシャキッとする。



「勝ってくる!」


「おう」


 金髪ちゃんとスカーの一騎打ちか、どうなるんだろう。




『またフライングしてる』




 スカーが舞台に上がるや否、サラが俺の隣に座ってきた。


「……って金髪ちゃんの名前聞き損ねたんだけど」


「はい?」


「あの子の名前知らないんだよ」


「ドンマイ」


 名前聞きたいけど女の子に自分から話しかけるのは苦手だ。


 とりあえず勝負を見守ろう。





 カーン。今までの価値を決める音が鳴り響いた。


 スカーは敷いていた魔力に効果を付け加える。


『凍れ』


 メーナスの時のように金髪ちゃんの足が凍りつく。


「ひっ……」


 驚きながらも作り出した剣で氷と足を切り離す。


 なんとか浸食を止めた。


 金髪ちゃんはオーラを纏って耐える為の条件を揃える。


『クリエイト』


 複数の土の壁を作り、魔法から隠れれる場所を作る。


 それはスカーの爆発魔法で吹き飛ぶ。動きを制限させる魔法が降り注がれる。


 戦法はもうバレてしまっている。


 金髪ちゃんは風の力を借りて魔法の隙間を縫っていく。


 ヒュンヒュンと飛んでくる遠距離魔法を華麗に避ける。



 一発の細い氷が服の袖を裂く。



 オーラが強い光を持ち始める。


「私の勝ち!」


 金髪ちゃんは右手を目標に向け、爆発魔法を放つ。


 世界が染まる前にスカーが地面に手を添える。


『クリエイト』


 白い世界にスカーが取り込まれてしまう。


 爆風から金髪ちゃんは素早く土の棒で距離を取った。


 何秒も続く光が収まった時、傷一つない丸い氷のオブジェクトが姿を現す。


 さっきまでなかった存在。


 バキバキと氷が崩れるとその中からスカーが現れる。


「な、なんで生きてんの……!」


「さあ?」


 金髪ちゃんが怯んだ隙に冷気を纏う手が向けられる。


『オレの勝ち』


 その瞬間、両足がパキパキと凍りついていく。


「く、くう……!」




『一瞬の油断が命取り』




 氷は金髪ちゃんを飲み込む。驚きを見せて固まっていく。


 完全に染まった姿は彫刻も同然だった。


『最終的な勝者が決まりました』


 金髪ちゃんが消えていくとサラが舞台に足を踏み入れる。


『それでは二人の時間をお過ごしください』


 声が消えると空間が一気にピリつく。


「ふふ、フライングしてますね?」


「リュウキはオレのだから」


「では私も本気を出しましょう」



 サラは左目の瞼を下げる。青い光が視界に映り込んだ。



 糸のように張り巡らされた魔力の世界はスカーの殺意を表す。



 分かりきってしまった状況にニヤリと笑う。


「な、なんだよ!」


 見えるのは魔力。分かるのはその後の行方。


 計算すればするだけ、勝敗が見えてきてしまいそうだ。





『この目から……死相が出てますよ?』





 そう言って閉じた左目を指差すと。




 サラは不敵に笑った。











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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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