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モルゲンレーテ







 俺の視界に映っているのは丸い氷の板。


 スカーはそれをセグウェイだと言う。


 そもそもセグウェイってのは小さな一輪車を横に並べたような代物なのだが……これに車輪はないし、ただの板。


 それ以上でもそれ以下の円周率もない。


『これが?』


「乗ったら分かるって」


 周りの人が見てるのに。


 廊下の真ん中で乗ってみると案の定ザワつく。


「なにあれ!」


「ちょっと残念な人だよ……魔力もないらしいよ」


 せめて聞こえないようにやってくれ! 丸聞こえなんだよ!


「で、これからどうすんだ」


「こうして、こう!」



 スカーが俺の腰に手を添えて、歩き始める。



 後ろから押されて氷の板と一緒にツルツル進んでいく。


 氷が程よく滑っているのか! これなら早い!


 これは認めざるを得ない、実質セグウェイだと!


「あの子賢いね……」


「て、天才だ」


 周りの人はスカーのことをヒソヒソ褒める。


 俺の好感度は下がり、スカーの好感度が上がった。


 ツルツル滑って教室に入る。氷から降りて座れる席を探してみる。


 ガロードの隣が空いてるのでそこに座ることにした。


『ようっ』


「よ」


「調子悪そうだな?」


「悪いよ」


 息を吐きながら机になだれ込む。



『代わってくれるか?』



 不意に聞こえるスカーの声。


「お、お前は……」


 どうやらガロードと会話しているらしい。


「体調が良くないから、隣に居てやらないといけないんだ」


「はっ、そういうことか。別にいいぜ」


 隣の席がカタンと動く。


「ありがとう」


 チラッと見るとガロードはもう座ってなくて。


 スカーが座りながら俺の背中に手を伸ばしていた。


「大丈夫か?」


「もういい」


「良くない、苦しそうだから」




 ピシャリと教室のドアが開くとアステル先生が入ってきた。


『三十秒の遅れ……ふう、余裕で間に合いましたね』


「先生、間に合ってないです」


 すかさず入る生徒のツッコミ。



「うるさいですね? 泥人形にしてやろうか!」



 こわ! 先生こわ!


「す、すみません!」


 鋭い剣幕で睨まれた生徒が何もなかったように謝る。


 時間には甘いが他人には厳しいらしい。


「はい、というわけなんですが、悲しいお知らせと嬉しいお知らせがあります」


「悲しいお知らせから。つい最近、図書館で魔法を唱えた人が居ました、なんとか修復しましたが貴重資料もあるので図書館で戦うのはやめてください」


 やっぱり先生の耳にも届いてたんだな。


「次に嬉しいお知らせです。犯人はこのアカデミー内で上位クラスに属していたのですが、本棚の損失なども含めて下位クラスのここに属することになりました」




『はいりなさい』アステル先生がそう言うと廊下から黒髪の女の子が入ってくる。




 カツ、カツ。静かな空間に靴の音だけが響く。



 アステル先生の隣に立つと小さくお辞儀する。



『モルゲンレーテ・サラと言います』



 それを聞いた生徒がザワつく。


 えっ? ザワつく要素あった?


「机はまだないのでアステルの隣に居てくださいね」


「いえ、上位クラスなので椅子がクリエイトできます」


「それは楽でいいです」


 そう言って俺の隣まで歩いてくると土の椅子を作った。


 睨みを利かせて座ると。


 金髪ちゃんみたいに、ふんわりと良い匂いが。



『よろしくね? 劣等生くん?』


 元上位に言われたくねぇ!


 なんて言えないけど。


「今回のテストは公式戦のような勝ち抜きなんですが、最後まで勝てた人は上位クラスのサラさんと触れ合う機会を与えます」


「戦うかは自由です、上達の糧にしてください」


 アステル先生がいつものように扉を作る。


 慣れたみんなは先生が何も言わなくても席を立って移動する。


「いつも下位はこんな感じなの?」


「そうだ」


「普通は魔法の話を復習するはずなのに……」


 それだけアステル先生はサボっている。


「劣等生くん、もう行こっか?」



『劣等生じゃねえよ!』



 カロンと先生しか居ない教室でバチバチするスカーとサラ。


「では、お名前を」


「……呼ぶな、教えたくもない」


 スカーが俺を大切そうに抱えて、席から立つまで補助してくれる。


「そうですか」


「リュウキだよ」


「言うなっ!」


 ペシって頭を叩かれた。痛くはない。


 ゆっくり歩いているとアステル先生がじっと見ていることに気づく。


「……調子が良くなさそうですね」


 小さく頷いて答える。


「では、お薬を処方してあげましょう」


 そう言って歩み寄ると小さな瓶を俺に差し出す。


 中は赤い液体で満たされている。


「体調が良くなるアイテムです」


 本当か?


「助かる」


 疑いながらも薬を受け取ってドアをくぐる。




 その先はいかにも決闘しますよって感じの場所だった。


 大きな白い台が戦いの場らしく、その辺の生徒が囲むように座って時を待つ。


『こほん、名前を呼ばれた人は台に乗ってください』


『マトロープさん』


 小柄な女の子がせっせと移動を始める。



『ガロードさん』


 呼ばれた男がめちゃくちゃダルそうに立つ。




『……乗りましたか? それでは勝負を始めます』



『ご武運を』









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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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