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天災は偶像







 女の子を担ぎながら廊下を歩く。


 抵抗できない女の子を担げる時が来るとはな!


 死にかけて良かった!


『変な事考えてるな?』


 うげ、スカーは俺の思考を読んでくるから怖い。


「んなわけ」


「悪そうな顔してる」


 顔だけで分かることなのか?



「最悪」


 ボソリと黒髪の子が呟く。



「どうした」


「友達とすれ違った」


「かわいそ」


 俺も凍らせられて金髪ちゃんに見られたら死にたくなる。


『担ぐのやめて』


 担がれてる人が俺に文句を言う。


 肩で背負ったら行けないのか?


 なんとなく黒髪のスカートを覗いてみる。


 ……うわ、ノーパンかよ。


 担ぐのはやめて抱いておこう。



「見たでしょ」


 スカーの口撃。


「見てない見てない」


「喜んでる、雰囲気が喜んでるわ」


「ノーパンとか好きじゃねえし」


「なんでノーパンって知ってんの?」


「……」


 墓穴を掘った俺は、スカーからの深い追求を後で約束させられた。


 しばらく歩いて入口に来た。すぐ側に置いて……。


 この辺でいいか。


 氷像を置いて俺達はその場を去る。


 振り返ってみると入ってくる人が氷の冷気に気づいて黒髪の子を二度見していた。


「ちょ! 本気なの!?」


「はいはい」


「絶対許さないから! 絶対ころーす!!」


「はいはい」




 スカーに連れられながらそそくさと戻る。


 この廊下は部屋への最短ルート。


 戻る途中で俺は何を食べるか聞いてみる。


「分からん、オレ達の部屋に食べ物が運ばれるだけだから」


「食べ物?」


 俺達はそんな上流階級になったのか?


「集団戦でリュウキに勝った時、欲しい物を聞かれたんだ」


「それで食事が運び込まれる優雅な日々を選んだとか?」


「うん、したい事もあるし……」



 不意にスカーがふらつく。



「どうした?」


「調子悪くてな」


「おでこ貸せ」


 右手で触ろうとするとスカーはそれを跳ね除けた。


「いや、いいから。大丈夫」


「そうか」


 まあふらつかれて他人とぶつかっても困るし、手は繋いでおこう。


「手も熱いぞ?」


「氷触ってたからだろ」


「そうか」


 確かに温度差かもな。


 部屋に入ると俺達に気づいたカロンが駆け寄ってくる。


「なんですかこれ!」


 カロンの指が示す方向には木で出来た大きなカゴがある。


 美味しそうな匂いが、はかとなく漂う。


「おいしいやつだよ、しばらく届くよ」


「外に出なくていいとは……ありがとうございます! 出かけるの大っ嫌いなんですよ!」


 俺も武器を外してカゴに歩み寄ってみる。


「じゃあ準備しよー、男は役立たずだからいらないね」


「そうですね」


 ひどい偏見だ。悲しいことに事実なので俺はその辺で準備を眺めることにした。



 スカーが薄い板を三枚取り出す。少し引っ張ると隠れていた部分が展開されて小さなおぼんに変化した。


 カチャン。そんな音を鳴らしながら残りの二枚も展開する。


 俺はこんなギミック知らないぞ!


 そのおぼんにカゴから出した薄い皿とお椀を均等に置く。


 カロンがパンを一本ずつ皿に乗せる。


「へえ、こんな感じなんですか。ハイテクですね」


 カロンが取り出したのはポットのような木製の容器。


 少し手間取っていたが、注ぎ口をスライドさせて開封することができた。


 ポットの腹に手を当てて、お椀に注ぎ口を傾ける。


 木製の容器だというのに湯気が昇って美味しそうな匂いが。


 なんで? そう思ってると。



「やはり魔力で温めるみたいですね」


 そう言ってカロンは俺を見るとドヤ顔をキメた。


 羨ましい。羨ましすぎてめちゃくちゃ泣ける。



「言い過ぎだよ!」


「そうですか?」


「男でも使えそうなアイテムが使えないのは可哀想!」


 それが言い過ぎなんだよ。


「あとはサラダを盛り付けて〜終わり」


 パンと白いスープとサラダ。


 なんか盛り上がりに欠けるな……。


 アルカデリアンが凄すぎたんだな。


 とりあえず席に着いて手を合わせた。



 スカーとカロンは隣同士で仲良く食べてる。


 俺もまずはサラダを食べる為にカゴの中からフォークを漁る。


 あったあった。お箸は期待してなかったけど、スプーンよりはマシだな。


 千切りキャベツっぽいサラダにフォークを刺して、絡めながら引き上げる。


 口に運ぶとシャキシャキ食感が広がる。でもめちゃくちゃしょっぱくて野菜の味が分からない。


 パンを齧ってみるとちょうどいい塩気で悪くない。


「こういうのもいいな」


「肉じゃなくて本当に良かったです」


「肉の味は知っちまったもんな……」



 食べながら、なんとなくスカーを観察してみる。


 パンを半分に割くと手をかざし始めた。


 赤い炎でパンに焦げ目を付けて口をすぼめる。


 ふー、ふー。息を吹いてパンを冷ましながら一口。


 香ばしそうな音を立ててパリパリ噛んでいるのが聞こえる。



 したかった事ってそれか! 賢いな。


「リュウキも欲しい?」


「俺のパンもして欲しいな」


「ううん、あげるよ」


 そう言って食べかけのままくれた。


「半分も貰っていいのか?」


「食べたらわかるよ」


 とりあえず歯型が付いた方から齧ってみる。もう一人の自分との間接キスに抵抗はない。


「にっが」


「だからあげる」


 別に黒焦げでもないのにめちゃくちゃ苦い。なんでだ?


 食えなくはないけど。俺はこれでも我慢できる。


 しょうがない、スカーに俺のパンをやろう。


「俺のも半分やるよ」


「いいの?」


「別に食えるし、勝手にちぎって取っていいよ」



「そういうところ好き」


 そういって半分にちぎると、なぜか俺が齧った部分から持って行った。



 食べてない部分を取っても怒らないんだけどなあ。







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最強美少女ギルドに入った俺の初仕事は貰った剣を100億にすること!(クリア報酬→追放)
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